ぬくもりに触れる-海士ときどき、西ノ島にて②
2日目
「6:30に爆音で放送が流れるで!!!」と友だちが言っていたので、ちょっと緊張しながら(最近は浅い睡眠に悩まされていたのだ)早めに床に着いたのだが、それに起こされることはなく、快適に目覚めた。
宿の朝ごはんを食べる。味噌汁がおいしい。味噌汁は少し味が濃い味が好み(どうでもいい)。
待ち合わせ場所に向かうため、停めていた自転車に向かう。サドル部分が朝露で濡れていた。昨日の夜冷えたしな、にしても今日も暑すぎるだろ、と独りごちながら自転車に乗る。待ち合わせ場所の売店をふらふら回り、飲み物を調達していると友だちがやってきた。
「今日はどこ行こか?」
「天川の水が気になってる。でも途中行ってみたい道があるからそこ行ってもいい?」
「ええで そしたら昼頃に港に間に合うな」
…一日早く入っただけなのに、ちょっぴり自分も島の人のような感覚になった。笑
丘を越え、海を横に見ながら自転車を走らせる。しばらくすると海とお別れし、田んぼを抜け、山道になった。なかなかの山道だったが、突然景色が開け、広い海が見えた。
自転車を止める。ストッパーが良くないのか、坂道で手元からスルッと抜けそうになる自転車を支えながら、シャッターを切る。もう昨日の二の舞にはなるまい。
海士での過ごし方や、今までの話など、気さくな話をしながら自転車を進めていると、昨日通過した神社までやってきた。お参りしよう、という話になって、長い参道に足を踏み入れる。この旅行が何かを掴むきっかけになりますように、とお祈りする。
天川に向かう前に、ということで、亀田商店に向かう。お店の人に会うといいで、とのことでついていく。ブレーキの調子が良くなく、少し緊張しながら下り坂を進んでいく。
お店に入る。小腹が空いたからということでりんごパンを手に取り、レジに向かう。そこには元気なお姉さん2人がいて、友だちと話している。
「あなたこの人の友だち?この人、本土から来た人に見えないよ、ここの人に見える。「あなたとこの人本当に友だち?雰囲気が違うからさ。」
鋭い先制パンチを喰らった。でも「あなたにもおせっかいを焼きたいのよ」という気持ちがよく見えた。自分はそれがものすごく暖かく感じた。
「人生大変なことが多いけど、楽しんで乗り越えるものよ」
「月曜日までいるんでしょ?また来なさいな」
…、写真忘れた。
教えてもらった天川へのルートを進める。その前に、と隠岐神社に寄る。本道に行く途中、相撲の土俵が見えた。そういえば相撲は神事だったよな、と遠い記憶を引っ張り出してくる。
またしてもお参りをして、くじを引く。久々にいい結果が出た。「奢らず精進し…」そこはいつもどおりだったけれど。もういっぱい頑張ってるんだから「ま、ひとやすみひとやすみ。ぼちぼち行こや。」くらい言ってくれたっていいのに。
神社を後にして天川に向かう。途中はとんでもない山道で、またしても自転車が音をあげそうだ。自分の脚と相談しながら休み休み向かうと、目的地が見えてきた。
ペットボトルに残る水を飲み干し、水を汲んで一口。まろやかな味の水が、水を欲している体に染み渡っていく。おいしい水だった。もう一本ペットボトルを持ってくるべきだったと思いながら、またくるだろうからと考えを切り替える。
フェリーが着く港まで戻る。海が見たくなったので、海沿いの道を選ぶ。
…それもつかの間、海がきれいだったので、立ち止まってみたくなった。
おしゃべりをやめると海の音しかしない不思議な感覚。海士はどこでもそうだ。山道も自転車を止めると木の枝葉がざわめく音しかしないし、田んぼも水が流れる音しかしない。いつも何か音が鳴っている都会では味わえないこの感じ。安心して身を委ねられるこの感じ。
港に向かう道は、前日「これはどこに繋がっているんだろう?」と思っていた道だった。こことここがこう繋がって、こういうルートでここに行けるのか!という楽しみはいつだって旅を面白くしてくれる。さながら、パズルが解けたように。
港に向かい、新たに友だち2人と合流する。いつものレストランでお昼を食べ、荷物を落として行き先を話し合う。賑やかさが戻ってきた。
行き先は西ノ島の国賀海岸。港から40分くらい。途中急坂となっている記述は一旦目を伏せた。フェリーに乗り(自転車も載せられる!)、10分ほどで着く。
港を降り、自転車を走らせるといきなり急勾配の坂が。マジかよ…と思ったのもつかの間、さっき合流した2人は電動アシストのない自転車で「ダイエット!」という言葉を唱えながら登っていく。自分たちは「すげぇ…」という言葉以外継げなかった。
※道中いくつかあったものの、伝説のローカル番組よろしくダイジェストにしております。
そして国賀海岸到着。景色はただ絶景だった。
飛行機ではよく海面が止まって見えるなぁと感じることがあるけれど、陸地から見る海が止まって見えることは初めてだった。そしてまたここでも、ダイナミックな岩の削られ方に美しさを感じ、言葉を失うのだった。
ほどなくして、フェリーの時間を気にした一行は急いで船に向かい、島に戻る。
フェリーからento(港近くにあるおしゃれなホテル)が見えた瞬間、友達の一人が叫びながら手を振った。entoの人たちも手を振ってくれて、みんなで温かく彼を見守った。
島についてからはおいしいお刺身に唐揚げにと、夕ご飯に舌鼓を打った。自分が今悩んでいることを話す場にするつもりだったけれど、その日はそんなことがどうでもよかったのか、あんまり突っ込んだ話はしなかった。
宿に戻ったら、2日間酷使した足がもう限界を告げていた。それもそうだよなと思いつつも、あと2日あるんよね頑張ってと足を宥めすかし、その日も早めに床に着いた。
その三に続く→
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