熱狂的なファン顧客を生み出すユーザー会のススメ
「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに、医療プラットフォームを提供しているUbie株式会社のSean(ショーン)です。
この記事は、病院向け事業で全国初のオフラインユーザー会を実施した取り組みの振り返りとなっています。
これからエリア戦略を強化したい方や、はじめてのユーザー会を立ち上げようとされている方などに、少しでも参考にしていただければ幸いです!
お伝えしたいこと
限られたリソースの中で事業価値を最大化するために、1 invest N returnの思考が重要!圧倒的ファン顧客を作り出し、地域コミュニティを創出し、顧客ロイヤルティを雪だるま式に増やす方法
営業の1番の価値は現場接点にあり。非連続の未来を実装するには、1日1日、1回1回の顧客ロイヤリティの積み上げでしか成せず、地道な顧客との関係構築がカスタマーサクセス(以下、CS)における最高のバリューであること
想定している読者
特にリソースの限られるスタートアップ等で、CS部門の立ち上げ期を担当している
顧客ロイヤリティを積み上げ、顧客アセットを最大限有効に活用して事業を成長させたい
エリア戦略に責任をもちマーケットの拡大を考えている
はじめてのユーザー会を企画しようと考えている
ユーザー会検討の背景
私がCS部門にジョインした当時は、コロナ禍でのDXニーズの高まりもあり全国の医療機関導入数が急激に伸びていたなか、人員数も潤沢ではなかったため、「最小のリソースで最大のリターンを得る」という思考がより一層重要になっている状況でした。
事業の状況
(背景1)DX化や働き方改革にむけて急激に導入数が増加しているなか、ハイタッチモデルの確立と、ロイヤリティの事業価値転換の仕組化が、同時に重要性を増していた。
(背景2)CS組織立ち上げ前はBizメンバーがオンボーディング担当も兼務しており導入期のオンボーディング・活用期の定着支援が行き届いていなかった。
更新期の再オンボーディングや解約防止の活動が中心で、(緊急度高)
本来重要な中長期観点での仕込みが必要な根本的なロイヤリティ構築のための活動が後回しになってしまっていた。(緊急度低×中長期の重要度高)
取り組むべき課題
目の前の解約リスクの高い案件の再オンボーディング(緊急度高)による解約を防止しつつ、
担当エリアのマーケット拡大にむけて、顧客ロイヤリティ深耕のためのアクションを行うこと(緊急度低×中長期の重要度高)
これらを同時に実行しなければならないことが課題でした。
つまり、限られてたリソースの中で、顧客が自走してプロダクトを活用し、かつエリア内の顧客が顧客を呼ぶような仕組みが必要でした。
しかも、病院のタスクシフトを支援するAI問診は、医師・看護師・事務スタッフなど多職種にまたがってご利用いただいてる各職種の活用度・満足度のバランスを取る必要があり、導入の難易度を高めていました。
なぜオフラインでのユーザー会だったのか?
これらの課題を解決するために、自分なりにどのような思考プロセスでオフラインのユーザー会の企画に至ったのか、改めて整理してみました。
コミュニティ施策を検討する際には、プロダクトやマーケットの特性や、得たいリターンに応じて最適な施策が異なるので、いきなり施策に飛びつくのではなく「どんな形が最適か?」を考えるプロセスが重要に思います。
※もちろんまだまだ発展途上の施策ですので、「こんなユーザー会やコミュニティ企画がおすすめ!」といったご意見をお持ちの方がいらっしゃれば、是非ご連絡いただけると大変嬉しく思います。
①Vertical × Enterprise 向けビジネスに適したコミュニティ施策はどんなものか?
AI問診のプロダクトを提供している病院の特徴について、主なポイントを2点記載します。
(ポイント1)Ubieの提供しているAI問診は、医療業界向けに業界特化型のソリューションを提供するVertical(バーティカル)SaaS
両者の特徴や適した施策はここでは割愛しますが、業界を問わず汎用的なソリューションを横展開していくHorizontal(ホリゾンタル)型と違い、独自の慣行や複雑な業務に最適化している
(ポイント2)病院向け事業は一般的なビジネスにおけるEnterpriseの特徴に近い
外来のタスクシフトを実現するAI問診は、医師・看護師・事務スタッフなど多職種が連携しあって活用している
そのため運用は施設毎の人員体制や役割分担によりSMBと比較すると複雑化しており、かつ医師・看護師・事務職など複数職種にまたがりそれぞの関心範囲や必要な専門知識が異なる
独自の慣行や複雑な業務に最適化しており、多職種が異なる関心範囲や専門知識を有している属性の顧客に対して、オンライン形式よりもまずはオフライン形式で情報共有や交流の場を提供することが最適だと考えました。
②1 Invest N Returnを実現できる施策か?
少し考えただけでも、オフラインユーザー会は最小のアクションで複数のリターンが見込める施策として有望でした。
顧客が顧客を呼ぶ:リード獲得
成功事例をもとに運用改善を自発的に促進:活用促進、チャーン防止
サポート体制や導入実績のPR、Ubie社員との交流:ロイヤリティ向上
病院間のコミュニケーションが生まれ横のつながりの強化:地域医療の活性化
③医療業界の特性にFitしているか?
実は、地域医療にとって他医療機関との横のつながりは大変貴重です。そういう意味でもオフラインでのユーザー会は地域医療において医療機関だけでなく患者にもメリットがあることだと思いました。
(詳細は割愛しますが)地域医療は「医療圏」という単位で成り立っており、病院(そのなかでも急性期や慢性期といった機能の違い)・クリニック・介護施設など、様々な機能をもつ医療機関が連携しあって発症~療養までの医療を支えている。
周辺医療機関の関係者と顔なじみの関係性を築いておくことで、例えば患者様の転院時(別の病院へ移ること)の相談がしやすくなるなど、地域内でのコミュニティ形成を進めることは医療機関だけでなく地域患者さんにとっても価値が大きい。
加えて、以下のような特徴もあることを認識していました。
職種毎の業務の専門性や、施設毎に複数職種間の業務役割分担の違いがあり、直接の対話を通じないと理解が難しいテーマが多い。そのため、他院の運用事例を自院に適用していくためには、他院との直接的なコミュニケーションや見学等のリアルな交流ができることが理想的だった
(例)医師における診療科毎・鑑別疾患毎の問診アプローチの違い、看護師と事務職の外来フロー上の業務役割分担の違い、事務職における外来での患者属性にあわせた問診案内フローの違い など
業界として学会や勉強会などの機会が多く、自発的に取り組んだことを発表する慣習や、COIにも触れながら本当に良いと思ったものを発信してくれる土壌があった
④顧客の声しか勝たん
CS個人が語るよりも、顧客自身に語ってもらった方が信頼度が高く、顧客にも響くことは間違いないとおもっていました。(CSの生みの親であるセールスフォース社がユーザー会を始めたキッカケも、「マークベニオフ氏が話すよりも、顧客が直接話したほうが説得力・信頼感があるから」という主旨だったと聞いたことがあります。)
他にも、普段の顧客コミュニケーションのなかで、以下のような声やニーズを拾っていたことも後押しになりました。
医療業界は他病院の運用を意外にも知らないことが多く、普段お客さんをまわっていても「他院がどう運用しているか知りたい」という声が圧倒的に多かった
コロナ禍で物理イベントの制限緩和が進んでいたタイミングで、対面でのコミュニケーション熱が高まっていた
今後も、自身のプロダクトの特性、ターゲット顧客の特徴、なによりも顧客の要望やニーズを踏まえて、最適な手法を編み出していきたいなと思っています。
繰り返しになりますが、コミュニティ施策を検討する際には、それぞれの目的や得たいリターンに応じて最適な施策を検討することが重要かと思います。
例えば、医療機関には全国にまたがるグループ法人も存在していますが、「同グループ病院×特定職種」への情報発信や満足度向上のためのコミュニティ形成を目論むのであれば、必ずしもオフラインである必要はなく、むしろオンラインが最適な場合もあるでしょう。
エリア戦略における地域コミュニティのリターン最大化ステップ
とはいっても今回ユーザー会を実施したエリアはごく一部で、重要なのは今後おなじ仕組みをいかに全国に波及させるかということ。
一部のエリアだけの取り組みで終わらせず、他のエリアでも熱狂を生み出していくことが重要です。
これだけだと具体的に何をやったのか&私の苦労(笑)が伝わらないと思いますので、各ステップで工夫したことや苦労したことにも触れたいと思います。
step1 熱狂的ファン顧客を生み出す
いきなりコミュニティをつくっていくことは不可能ですので、n=1の解像度を社内の誰よりも上げることに努めました。これまでのCS活動を通して、医療機関ごとで規模・特徴は異なるものの、抱えていた課題、目指したい姿は共通していると確信していた為です。
特に注力したアクションとして、各エリアにおける他医療機関への発信力・影響力の強い病院(=Key Opinion Leader;以下、KOL)に対し、各セクションのリーダークラスとの接触強化を行い、各セクション毎の課題を抽出し、課題を解決することで病院全体の満足度を上げていきました。結果、Ubieのファンになって頂き、学会でUbieのAI問診導入の成果を発表いただく機会も増え、少しずつですが他の医療機関様をご紹介いただけるようになりました。
Ubieが大事にしている全社バリューに”Giant Leap”というものがあります。エリア戦略を担うCSとして非連続な未来を実現するためには、OneShotの施策で実現できることはなく、顧客接点が一番多いCSだからこそできる「地道で泥臭い顧客との関係構築や運用成功」が一番の近道であると信じていました。
step2 ユーザー会によるコミュニティ形成
ユーザー会当日のアジェンダ
実際のオフラインユーザー会で実施した内容はここでは詳しく語りませんが、医療機関の特性として同じ医療圏内の声を重要視している傾向があるため、事例発表×質疑応答や、パネルディスカッションなど対話を増やすようなコンテンツを用意しました。
ユーザー会開催までの仕込み
KOL病院でサクセスしている顧客の運用事例を多く話し、施設見学を促し病院同士を繋ぐことで、ユーザー会参加にむけた機運を高めました。不思議なもので、CSの私が何度言っても興味を持っていただけなかった・運用改善が進まなかった病院さまでも、同じ医療機関同士で話をしていただくとびっくりするくらい自発的に運用改善を進めてもらうことができ、「もっとほかの病院の話を聞きたい」という声をいただくようになり大変効果的でした。
集客という壁にぶつかりましたが、エリアにおけるキーマンを招致、各医療機関にその方が来るとお伝えすることで連鎖式に参加者が増えていくことを実感しました。
ユーザー会自体はオンラインなどHowもありましたが、病院のエグゼクティブ層(理事長・院長など)はオンラインイベントの参加意向が低いということがわかっていました。
一方、「〇〇病院の〇〇先生が来るなら参加するよ」という声が多く、地域KOL病院の院長先生に開会のご挨拶などをお願いすることでご参加いただき、他医療機関のエグゼクティブ層の参加のきっかけを作りました。(先ほどの「医療業界の特性」にも記載していますが、医療機関は患者の治療を地域内で連携しあっており、普段から医療機関同士のコミュ二ケーションを重要視しているためと思われます)
step3 コンテンツ化して全方位的に活用する
ユーザー会の内容は、資料や動画などコンテンツ化してデリバリー全般の全工程でフル活用することで、成果を最大限に活かしました。
step4 他エリアへの横展開
今年4月に初のユーザー会を沖縄で実施、そのわずか半年後に福岡で開催と順調に他エリアにも拡大し、これから全国展開を見据えています。
一方で、顧客ロイヤリティにはエリア差が存在しますので、エリアごとの状況に合わせてネクストステップを検討していく必要があります。
地域ごとのKOL病院のサクセス状況やヘルススコアの分布を踏まえて、次にユーザー会を開催するターゲットエリアの見極めを行う
ロイヤリティが低いエリアでは、まず地域KOL施設の運用サクセスに注力する(「step1 熱狂的ファン顧客を生み出す」を参照) 等
地域コミュニティ戦略・オフラインユーザー会で得られたもの
定量的なリターン(沖縄・福岡合算)
チャーンレート 約15pt改善
解約防止による売上貢献 ARRの20%に相当
MQL獲得数(クリニック含む) 年換算+320%増加
定性的なリターン(沖縄・福岡合算)
ユーザー会後アンケートでは、「参考になった」「非常に参考になった」の合計が100%と、高い満足度を実現。
最後に
日頃の地道なサクセス活動を通じて構築した顧客ロイヤリティを起点に、オフラインでのユーザー会を通じて沖縄・福岡では顧客基盤を更に盤石なものにできました。
ですが、これから全国の津々浦々まで価値を届けていくには、まだまだ道半ばになります。
私たちUbieはミッション実現に向けて、一緒に市場を創っていく仲間を募集しています。
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