痒みの極みの狭間で~感染と隔離がもたらすもの~
疥癬(かいせん)に感染したことはありますか?
疥癬とは
ある種のダニが
皮膚に寄生し増えることで
痒くなる感染病
その痒さに夜中でも目が覚めるほど
とにかく痒いのがその特徴
手や足には特に
指と指の間
水かきあたりから延長線上に
点々と発赤が続き
そこにダニが棲みついていて
感染者に接触することで感染します
ダニは皮膚の中のみならず
シーツや布団や床に居ることも多いので
それらに接触したことで感染することも
よって感染者の居室のシーツ交換は
毎日行われることになる
痒みというのは痛みよりも強い存在
痛みはある程度我慢できるけれど
痒みは掻いたときに快感を感じるもの
ゆえに快感を欲することで
掻かずにはいられなくなり
我慢することが難しい
感染したら
軟膏を塗布することで
痒みをある程度おさえ
ダニが皮膚から出ていくまで
入浴は毎日欠かさず
カラダをしっかり洗うことで
ダニを落とす
これをダニがいなくなるまで続ける他なく
痒さとの長い戦いが繰り広げられる
もちろん
シーツ交換や入浴介助は
これ以上感染者を増やさないためにも
また感染者の早期回復のためにも
感染対策用の長袖のビニールエプロンと手袋
キャップとマスク着用が
真夏であっても徹底される
そう、
ビニールエプロンとマスク着用のままの入浴介助は
地獄のような暑さで
職員がまるでシャワーを浴びたのか?と思うくらい
ビニールエプロンの中は
びっしょり汗だくになる
メガネの縁をしたたる自分の汗で
目がしみることも
もう1つ
感染した職員には
体内に入り込んだダニを殺すために
いわゆる農薬のような強力な飲み薬も処方される
年齢的に
食事の食材もこだわっていたので
そんな劇薬を服用するのはできれば避けたく
でも、福祉の現場では
1.持ち込まない
2.持ち出さない
3.拡げない
感染の3つの基本が厳守となる
しぶしぶ飲むこととなった
「掻きこわす」という言葉があるように
爪で体表を掻く動きは
まさしくこのためにあるのか!と思うほど
ダニを体外に出すための本能的な行為
感染者(感染元)と言われたSさん84歳は
骨と皮だけとも言えるほどの
細身で小さい女性
他の病気で服薬中だった薬の副作用も相まって
感染しやすい状態だった
あまりの痒さに我慢できないSさんは
腕の皮膚を掻き壊し
血だらけになっていることもしばしば
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