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『鈍色幻視行』恩田陸 著 読了

これは恩田陸版『海に住む少女』なのかなと思った。
読み終えるまで二週間以上、長い長い時間をかけて読み終えた。最後の一行はほんとに長い航海を終えたあとのように、読後の余韻をもっと味わいたいのに、あっという間に現実に引き戻されていく感じが物語とシンクロしていたと思う。
飯合梓という作家について、彼女の小説について、その映像化にまつわる事件について、様々に思い入れのある人が語り合う。海の上だけで成り立つ幻のように、語る人の数だけ、その人だけの真実が浮かび上がってくる。

「映画や小説は作り話で、そんなものに時間を使うのは無駄だ」という言葉に反論する場面があるが、私にとってはその部分を読んだだけで胸がすくような、長年の靄が晴れるような感覚が味わえて…読んだ甲斐があった。

これから作中作の方を読む予定でいるが、なんとなく『夜果つるところ』を読んでから『鈍色幻視行』に取り組めてたら自分なりの解釈を持って、登場人物たちによる感想戦に挑めたのではないか、という気がした。

どちらを先に読むべきか…こればかりはわからないなあ。

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