相場を読めないポンコツ投資家のハナシ(ほぼ実話)
多くの優れた投資家がブログやYouTubeで相場を読んで自分の投資方針を披露している。
投資の世界に足を踏み入れた君もそんな世界を垣間見て、自分なりに投資の勉強をスル。
何冊かの本を読み、有名なYouTubeを観て、時にはセミナーでチャートや経済指標の見方を学ぶ。投資雑誌でオススメの銘柄をピックアップしたりもするだろう。
そして満を持して証券会社の口座を開いて自分が目を付けた銘柄を購入スル。これで君のもいっぱしの投資家気分だ。
30年近く前にも同じように投資家デビューしたオトコがいた。
まだインターネットもネット証券もない。もちろんオルカンなどの低コストのインデックスファンドなんて影もカタチもない。「FIRE」なんて言葉もなかった。
投資は安い時に買って高い時に売るもので、売ったり買ったりして儲けるという考え方が主流の時代だ(今でもそう思っている投資家は少なくない)
そのオトコは学校で勉強すれば成績は上がる、会社でも頑張れば成績が上がる、そして給与もアガルと教えられてきた。
だから投資も努力して勉強すれば「勝てる」と思っていた。ネットはないので本を読んで勉強した。ROA、ROE、PERにPBR、フリーキャッシュフロー、ファイナンス理論などなどだ。。
投資の神様ウォーレン・バフェット氏は「分散投資は、投資を知っている人にはあまり意味がない。」「よく知っている数銘柄に投資すれば十分」と言っている。
オトコは十分に勉強した。だから自分が選んだ銘柄はきっと誰も気がついていないだけで、これから上昇するハズだ。分散投資は必要ナイ。
数ある企業の中から相場より割安な銘柄を選び、今後の相場を予測し思いを込めて資金を投入した。
その銘柄はオトコの予想通り上昇した。
証券会社の営業マンからは「あの銘柄が上昇するとは思いませんでした」と言われて気分を良くした。俺はプロでも分からない銘柄を見抜く才能がアル。
ちなみにその銘柄は営業マンから利益確定のウリを勧められてアッサリ売却した。その後株価が倍以上になったことは随分後で知った。
それからオトコは「相場を読み」「自分だけが選んだ」秘密の銘柄を買い続けた。
それはバブル以前は絶対に破綻することはないと言われていた銀行株だったり、国営企業と言われた航空株だったりした。安定配当欲しさに東日本大震災の前に電力株も買った。
また今のように中露と米国の対立がなく世界経済が順調だった21世紀初頭には、海外株式に投資するためにETFを購入した。当時市場デビューしたばかりのREITにも投資した。
オトコは相場を読めるハズだった。自分の選んだ銘柄は上昇するハズだ。購入したアトに株価が下がってもそれは一時的な要因なので追加で購入した(コレをナンピン買いという)
バブル崩壊後の不良債権処理の過程で破綻したり吸収される銀行が続出した。フラッグシップで日本の翼と言われた航空会社は破綻した。電力会社の株価は震災の影響で半値以下に沈んだ。
世界株連動ETFはリーマンショックでやはり半値以下になった。REITに至っては1/3になってしまった。
それでもオトコは残った銘柄を辛抱強く持ち続けた。しかし株価は良くてヨコバイのまま月日だけが過ぎていった。
オトコはヤケになり全ての銘柄を売却して相場から撤退した。
それを待っていたかのように相場はグングン上昇をはじめた。アベノミクス相場のはじまりだった。
オトコはそこでようやく気がついた。
自分が相場など読めないダサくてポンコツなシロウト投資家であることを。ダニング=クルーガー効果に陥っていただけだったのだ。
市場は金融機関や機関投資家がメインプレーヤーで、彼らは超一流の大学を出て専門知識を持ち、ハイスペックなコンピューターで高速取引をスル。
個人投資家が知りえないようなインサイダーぎりぎりの情報のやりとりを仲間内で共有したりする。
そして自分たちが利益を得る引き換えにその分の損をカモ(個人投資家)に引き受けてもらうための商品を開発し宣伝し販売する。
そんな世界で三流大学出の平凡な会社の平凡なサラリーマンが相場を読んで勝つなどとなぜ思いあがっていたのダロウ。
オトコは相場を読むことをヤメた。
秘密の銘柄を探すこともヤメた。
市況や企業業績は最低限目を通すが予測はしない。
そしてインデックスファンドや誰でも知っている超優良企業に分散投資するようになった。
著名な経済学者やエコノミスト、世界三大投資家の一人が市場の暴落を予告しようと、アクティブファンドの代表者がインデックス投資を小バカにして煽ろうとも、なんちゃって経済ジャーナリストが投資なんてオヤメナサイと叫んでも淡々と買い続けた。
円高にナッテも円安にナッテも買い続けた。ビットコインが流行ってもスルーし、震災が起きてもどこかで戦争が始まっても、政権が変わっても、パンデミックが猛威をふるっても買い続けた。
いつの間にかオトコは定年間近の身になっていた。
そして気づくとオトコの資産は投資を始めた頃に憧れた金額を越えていた。
オトコはここでまた気がついた。
相場が読めなくても、読まなくても資産形成ができることに。なぜ多くの個人投資家が資産形成できないのかも。
今でも投資のセカイでは相場を先読みして価格が上昇する銘柄(通貨)を予測し当てるのが優れた投資家であるような風潮がある。
そしてこのような優れた投資家こそがみんなが憧れる「億り人」になり「FIRE」を達成することができると思わせているフシがある。
一方でインターネットのおかげで賢い投資行動をする若い投資家が増えた。
しかし金融機関は相変わらず、いや前にも増して巧妙に、賢くなった投資家をカモにしようとあの手この手で勧誘と宣伝の手を緩めない。先読みして売ったり買ったりさせようと目論む。
オトコは回り道をしたが、現役時代の終わりまでに投資の最適解に辿り着いた(と思ってイル)
オトコ自身はまだ投資の旅の途中だが、年齢を考えて息子達次世代が同じ間違いをせず資産形成できるよう投資の遺言書を残すことに決めた。
ダサくてポンコツな投資家のオハナシ(終)
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