ウルトラQ 第6話「育てよ!カメ」感想 〜大人が失ったもの〜
このGWから円谷特撮の原点ともいえるウルトラQを今更ながら見ています。やっぱ円谷プロはSFがマジで上手いなともう感心させられっぱなしなのですが、どうせなら印象的な回は感想を残しとこうと思いまして。
第6話「育てよ!カメ」
脚本:山田正弘
監督:中川晴之助
第5話が王道怪獣のペギラ登場回だったところから急転直下のコミカル回。ただ決してコメディ(喜劇)ではないところが円谷特撮らしいです。
今回の話の主人公は太郎少年。学校でも授業そっちのけでカメを育ててばかり。太郎にはカメを99cmまで育てて竜宮城に連れて行ってもらうという夢がありましたが、周りの生徒たちはそれを笑います。挙げ句の果てには担任の先生から影で虚言癖呼ばわりされます。
そんなある日、太郎は大切にしていたカメを学校の近くに現れた銀行強盗に連れ去られます。太郎は銀行強盗に食らいつき、一緒に逃避行することに。
このシーンがかなり面白い。
銀行強盗に反抗的だった太郎でしたが、銀行強盗が持っていた機関銃を見るや否や興奮。機関銃を振り回して「1発ぐらい撃ってもいいよね」と言う太郎に銀行強盗の方がビビる展開に。男の子の憧れが出てしまったんですかね。
さてさて太郎少年が機関銃をぶっ放したことで検問を突破できずに警官に追われることになった銀行強盗とカメを取り返したい太郎。なんとか追っ手を逃れて地下へ逃げ込んだ銀行強盗と太郎。しばらくそこで潜んでいるとなんと太郎のカメがデカくなり始めた!銀行強盗はデカいカメにビビってしまい、警察に通報に行きます(もちろん彼らも逮捕されました。何がしたかったんやお前ら…)
ついに99cmに到達したカメ!
太郎はカメに乗って竜宮城(というかそう名付けられた虚無の空間)に辿り着いた太郎。そこには少女の姿をした乙姫が。
想像と全然違う竜宮にガックリの太郎。乙姫に揶揄われて怒った太郎は手に持っていたカメの餌を「原爆だぞ!」と言い放って投げ捨てた。(現代ならまず間違いなく炎上してるでしょうね。昭和だからギリ許されてた表現)
するとドカーーーン!
太郎は爆発に巻き込まれ大変なことに。結局乙姫が繰り出すロケットや龍やらにカメも撃墜され懲り懲りの太郎。乙姫にもう嘘は付かないと誓って、玉手箱をもらって帰ることに。
太郎が目を覚ますとそこは職員室だった。太郎は親に「もう2度と嘘は申しません」と宣言。それを聞いて一安心の両親だったが、「竜宮城に行ってきた」という太郎に、また嘘を付いたと激怒。玉手箱を見せてもただの箱だと言い返される。
ふてくされた太郎はもらった玉手箱を開ける…と太郎は爺さんに。太郎の頭に響くのは大人たちの笑い声。
結局気がつくと元に戻っていた太郎。
しばらくして。
学校ではいつものように授業が行われていた。
教科書を机に立てている生徒たちの様子を見て満足げな担任。ところがみんなの机の上にはカメがいて。
そして太郎は…浮かない顔をして外を眺めている。
終
終わり方に痺れました。
ただのコミカル回かと思いきや。
最後、クラスのみんなはカメを持っています。
きっと太郎から話を聞いたんでしょう。
みんな竜宮城行きたさにカメを育てている。
多分みんな本気で。
この子どもだけが子どもの言うことを信じていることを最後みんながカメを持っていることで表現するのが上手いなぁと思う。馬鹿らしいといえば馬鹿らしいけど、太郎の言うことを一切相手にしなかった大人たちとは全く違う。
こうやって大人は色々失っていくのだと思う。
もちろんそれは成長ではあるし、現実を知るというのもとても大事なこと。だけどあの時持っていた創造性は今の私にはない。
もっと自由に、もっと大胆になんでも考えてたあの頃の思考には戻れない。
得たものも多いけれど、失ったものもきっと多い。
まぁそれも踏まえて前に進むしかないんでしょう。
つい最近、子どもたちとインプロをしたときもそんなことを思いました。彼らのエネルギー、爆発力、創造性は私たちをはるかに超えている。