北村早樹子のたのしい喫茶店 第21回「有楽町 はまの屋パーラー」
文◎北村早樹子
わたしは一応、歌をうたったりする活動をしているのだが、1年に1回くらい、ひどい風邪を引き、おっさんのようなガスガスの声しか出なくなってしまうことがある。近所の内科や、耳鼻咽喉科で出されるお薬を飲んでも全然駄目。そんじょそこらの抗生剤ぐらいでは治らない。もうどうしょうもない。しかし、3日後にはライブがある。さて、どうする?! 絶対絶命のピンチ。そういうときに行く、駆け込み寺的な病院がある。
T診療所。有楽町にある、わたしも先輩俳優から教えてもらって行き出した病院なのだけど、ここは声を仕事にしている人たち御用達の、知る人ぞ知る名医がいる。わたしも、どう足掻いても声が出なくなったとき、お世話になっている。
喉の炎症というのは、ステロイドを処方すればだいたい応急処置は出来るらしい。しかし、わたしは持病で普段からステロイドをばきばきにキメているため、免疫が出来てしまっていて効かない。お薬手帳を見せると、だいたい「これ以上の量のステロイドを飲ませるわけにはいきません」と言われて見放される。しかし、T診療所の先生は、「なんとかしましょう!」と腕を振り、魔法の点滴をぶっこんでくれ、数時間後にはそこそこ治り、3日後にはほぼ全快している。すごい! ありがとうございます! しかし、あの魔法の点滴の中身はなんなのだろうか。怖いからあまり考えないようにしている。
魔法の点滴を受けた帰りに、ビルの中で迷子になり、階段を探してぐるぐる回っているときに見つけたのが、このはまの屋パーラー。(当時T診療所は有楽町ビルの同じフロアにありましたが、現在は移転して別のビルにあります)パーラーという言葉を見つけると、わたしは入らずにはいられません。
ガラス窓には元気よく「はまの屋」と書かれ、緑と白のしましまの垂れ幕の絵が描かれている。中に入ると赤い床に赤い皮張りのソファーが並んでいて、ビルの一室ながらしっかり純喫茶感を醸し出している。テーブルにはルーレット星占いのオモチャまである。喫茶店のこういうちいさな遊び心がわたしはいっとう好き。
はまの屋パーラーの一押しは、なんといってもサンドゥイッチ(はまの屋パーラーではメニューにサンドイッチではなくサンドゥイッチと表記してあるので、そう発音しましょう)。具は、玉子、野菜、ハム、チーズ、ツナ、フルーツから二種類選んで作っていただけるのだが、わたしのお気に入りは玉子とフルーツの黄金コンビ。注文が入ってから厚焼き玉子を焼いてくれる、ほっかほかの玉子サンドゥイッチは絶品。ちなみに、パンをトーストしてもらうことも可能。玉子やハムやチーズなどはトーストしても間違いなくおいしい。
そして、もうひとつのオススメはフルーツサンドゥイッチ。生クリームに、季節のフルーツが挟まれたフルーツサンドゥイッチは甘さひかえめなので甘いのが得意じゃない方でもぺろりと食べられちゃう。喫茶店のフルーツサンドって、メニューの中でもわりと高額なことが多いイメージなのですが、ここはまの屋パーラーはたっぷりお皿に乗っていて800円という安さ!(コーヒーは300円でつけられます)。ちなみに、モーニングは更にお安い! コーヒーとセットで600円!
そしてはまの屋パーラーの隠れた人気メニューは、はまの屋特製クリームソーダ! クリームソーダというと、だいたいはグリーンで、バリエーションでいえばあとブルーくらいのものが想像されますが、はまの屋パーラーのクリームソーダはなんと透明! 透明で、下の方がほんのりピンクがかった、夕暮れ色のグラデーションになっていてとても美しい。ストローを刺してずずっと飲んでみたら、まあ驚き! その正体はピーチソーダなのだ。グリーンやブルーのように鮮やかな色合いではないですが、色もお味もとても上品で、優雅な気分になれること請け合い。サンドゥイッチのお供には、コーヒーもいいけど、ときにはゴージャスにクリームソーダをつけてみて贅沢で最高だ。
わたしの声帯を治してくれるのは、きっと魔法の点滴だけではない。はまの屋パーラーのサンドゥイッチとクリームソーダも欠かせない。点滴のあと、こちらにお邪魔すると、あっという間に喉の痛みは飛んでいく。わたしにとってはまの屋パーラーは、痛いの痛いの飛んでいけ~作用のある、かけがえのない喫茶店です。
今回のお店「はまの屋パーラー 有楽町店」
■住所:東京都千代田区有楽町1―12―1 新有楽町ビルB1階
■電話:03―3212―7447
■営業時間:10時~18時
■定休日:祝・年末年始
北村早樹子
1985年大阪府生まれ。
高校生の頃より歌をつくって歌いはじめ、2006年にファーストアルバム『聴心器』をリリース。
以降、『おもかげ』『明るみ』『ガール・ウォーズ』『わたしのライオン』の5枚のオリジナルアルバムと、2015年にはヒット曲なんて一曲もないくせに『グレイテスト・ヒッツ』なるベストアルバムを堂々とリリース。
白石晃士監督『殺人ワークショップ』や木村文洋監督『へばの』『息衝く』など映画の主題歌を作ったり、杉作J太郎監督の10年がかりの映画『チョコレートデリンジャー』の劇伴音楽をつとめたりもする。
また課外活動として、雑誌にエッセイや小説などを寄稿する執筆活動をしたり、劇団SWANNYや劇団サンプルのお芝居に役者として参加したりもする。
うっかり何かの間違いでフジテレビ系『アウト×デラックス』に出演したり、現在はキンチョー社のトイレの消臭剤クリーンフローのテレビCMにちょこっと出演したりしている。
2017年3月、超特殊装丁の小説『裸の村』(円盤/リクロ舎)を飯田華子さんと共著で刊行。
2019年11月公開の平山秀幸監督の映画『閉鎖病棟―それぞれの朝―』(笑福亭鶴瓶主演)に出演。
2019年より、女優・タレントとしてはレトル http://letre.co.jp/ に所属。
■北村早樹子日記
北村さんのストレンジな日常を知ることができるブログ日記。当然、北村さんが訪れた喫茶店の事も書いてありますよ。
■北村早樹子最新情報
①北村さんが音楽を担当したコント好演が開催!
10月22日(土)
シビレクラブ第1回単独コント公演
『ひょうたんからユリイカ』
場所:新宿ハイジアV1
時間:19時から
出演:シビレクラブ(住倉カオス/村上ロック)、BBゴロー、衣織、田中俊行、街裏ぴんく
音楽:北村早樹子
作:高田公太
演出:シビレクラブ
②10月25日(火)「東京30人弾き語り2022」出演!
1本のギターを30人で回し弾きするヨコチンレーベル企画の名物イベント「東京30人弾き語り」に北村さんが出演します。
③11月14日(火)北村早樹子ワンマン開催!
11月14日(月)
北村早樹子ワンマン第8回
場所:阿佐ヶ谷よるのひるね
時間:19時半開場19時45分開演
チャージ2000円+1D
ご予約の方はkatumelon@yahoo.co.jpまで、お名前、枚数、連絡先を明記の上、送信してください。
(完全予約制)