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第3回『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』 童貞アーティスト山口明(童貞歴:61年9ヵ月)の『LIFE IS ART‼ 映画でアート思考をアップデート』

取材・構成◎ギンティ小林

© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved


オレってLTG?


山口:前回の『スパークス・ブラザーズ』(2021年)は話が芸術的に脱線しちゃって長くなっちゃったね。

――最初のアップで3回(第0回~第2回)に分けてアップしましたからね。

山口:でもさ、この芸術的に脱線しちゃったのは俺がLGBTQならぬLTGだからなんだよ!

――LTG? はじめて聞く言葉ですけど。

山口:ロング・トーク・ジジイの略!

――……。僕は20年以上前からグッチーさんの事を知ってますけど、ジジイになる前からロング・トーク童貞でしたよ。

山口:(カジュアルに無視して)言っとくけどギンティくんも年齢的にはLTGだから! あんたと夜中に電話で話し出すと毎回、気がついたら3時間ぐらい経ってるもんな。このコーナー、LTG同士でやってるから長くなるんだよ~!

――じゃ、今回のトークはコンパクトにしましょうか?

山口:いやいや! 前回も言ったように、無駄な事がアートに繋がっていくんで! 今回も素敵な無駄話も入れつつお送りしますよ!

61年間童貞を貫くロング・トーク・ジジイ


グッチーさんが、がわかりやすく解説!  フェルナンド・ボテロの半生

山口:というわけで! 今回の作品はドキュメンタリー映画『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』(2018年)。

フェルナンド・ボテロは、人物だけじゃなく動物や植物、そして生活道具にいたるあらゆるモチーフを徹底して重量感あふれる豊満な姿で描く作風で知られている芸術家なんだよ。存命する芸術家の中で最も知名度が高いと言われてるんだよね。映画は、ボテロ本人や彼の家族、そしてキュレーターなどのアート業界の人たちの証言によって、彼の軌跡を浮かびあがらせる。映画に登場するボテロは撮影当時80代後半だったけど元気だよな。90歳の現在もアトリエで作品を絶賛制作中らしいし。

――いま、Bunkamura ザ・ミュージアムでも『ボテロ展 ふくよかな魔法』が7月3日まで開催されていますね。


映画でインタビューを受けるフェルナンド・ボテロ。© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved

山口:ピカソは91歳まで生きたんだよ。だからボテロさん、この調子だとピカソを超えそうなんだよね。ちなみにボテロさんは南米のピカソって呼ばれてるんだよ。その事から分かるようにこの人、1932年にコロンビアのメデジンで生まれたのよ。それで、10代の頃は闘牛士を養成する学校に通っていたの。でも、闘牛士の訓練よりも闘牛の絵を描くことに夢中になって、描いた絵を闘牛場の売店で売ってもらうようになるんだよ。そこからイラストレーターをしながら、画家への夢を追い続けるわけ。

――メデジンの新聞などでイラストを描いていたんですよね。


ボテロが1949年に描いた《泣く女》

山口:そして1952年、ボテロさんは20歳の時に留学資金が貯まったので、絵の勉強をするためヨーロッパに行くんだよね。そこでイタリアのルネサンスの巨匠ピエロ・デラ・フランチェスカの絵画に感銘を受けて、ルネサンス期の画家たちのような作風の絵画を描くんだよ。

ピエロ・デラ・フランチェスカ《ウルビーノ公爵夫妻の肖像》

でも、当時の美術界のトレンドは、抽象表現やポップアート。だから、ボテロさんの作品はまったく評価されない。

――まだ、ボテリズムと呼ばれる、モチーフを豊満に描くスタイルを確立していないんですね。

いかにして自分のスタイルを確立させるか?


山口:この映画を観る前は、ボテロさんの絵を見て、太ってる人が好きで、抑えきれない性癖みたいなものを表現してるのかと思ったら違うんだよな。映画には妻も出てくるけどスレンダーだし、本人も痩せてるしね。ボテロさんは、ある事がキッカケで豊満に描く手法を発見して大ブレイクすることになるんだよな。

シュッとしていた若き日のボテロ。© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved

――今回のトークは、ちゃんと勉強なりますね。

山口:(ムッとした表情で)いつもだよ。ブレイクしたキッカケだけど、ボテロさんがある日、マンドリンの絵を描いていた時に丸々と大きな形で描いたんだよ。そして最後に開口部を小さく描いてみたら、マンドリンが大きく膨れて見えることに気がついんたんだよな。

フェルナンド・ボテロ作《マンドリンのある静物》

この事をキッカケにすべてのモチーフを豊満に描くというスタイルを確立させたんだよね。

――ボテリズムの誕生ですね。

フェルナンド・ボテロ《モナリザ》

山口:ボテロさんは、それまで描いていたルネサンス時代のクラシカルな作風に「豊満」という文脈を加えた事によって、現代アートとして成立させた。これって、無職の60歳を過ぎたジジイに「童貞」という文脈を加えた事によって、自分自身を現代アートとして成立させた俺と同じなんだよね!

――同じなんだよね、って力強く言われても……。この連載を今回初めて読まれた方は、グッチーさんがいきなり常軌を逸した発言をしたので不安になっていると思います。そんな方はお時間がありましたら、この連載の第0回を読んでみてください。グッチーさんが現代アーティストとしての方向性について語っていますから。

山口:(無視して)何かをプラスすることによって価値を上げるのは現代アートのみならず、ビジネスにおいてもある事なんだよね。例えば、無地のTシャツって、ファストファッションの店だと1000円ぐらいじゃない。同じようなTシャツにハイブランドという文脈をプラスすることによって高額になるじゃん。

――なるほど! タイトル通りアート思考をアップデートする話をしましたね。

これが、無職の60歳過ぎジジイ+童貞=現代アート


山口:(得意気に)そんなわけで、ルネサンス風な絵画に豊満さをプラスすることによって現代アートとして評価されたボテロさんは、1963年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)に作品が展示された事で、人気アーティストとしてブレイクして今に至るわけなんですよ。

MoMAに展示されたボテロの作品《12歳のモナ・リザ》


偶然の発見を引き寄せろ


山口:ボテロさんの豊満に描くというコンセプトは発明だけど、これは偶然に発見したものだよね。こういう発見って、机に向かって考えを巡らしても浮かぶものじゃなくて、何かの拍子に突然降りてくるもんだよな。

――アーティストに限らず、すべての仕事に言えることですよね。

山口:俺もこの連載のためのトークって、散歩してる時や電車に揺られてる時に浮かんで話がまとまるんだよ。俺、仕事辞めたじゃん。

――デザイナーを辞めて現代アーティストになったんですよね。主な活動内容は「日々、童貞の保持記録を更新し続ける」ですが。

散歩中に見つけた花を愛でる童貞。我々もこんな余裕を持って生きていきたい

山口:だから家でボーっとしてる時間が多いじゃん。俺は、パソコンと携帯を持っていないからネットを見ないんで、頭が無の状態になってる時が多いんだよ。そういう時にも、このトークの内容が浮かぶね。

――無職になった事によって、偶然にも瞑想の達人が辿り着く境地にいるんですね。

山口:やっぱね、頭の中を空っぽにしておくのも大事だよ! 今は皆、ネットの情報を入れすぎてるじゃない。コップの中が水でいっぱいだと、新しいものが入らないよな。俺のコップは常に空だから、いっぱい入ってくるし、何にでも対応できるわけよ!

――ブルース・リーの教えみたいな事を言いますね。

山口:ニュートンは木から落ちるリンゴを見て万有引力を発見したじゃん。これも偶然、発見した事だし、机に向かって考えて浮かぶものじゃないよな。

――たしかに。

山口:そんなニュートンって84歳で死ぬまで童貞だったって知ってた? そんでさ(とニュートンがどんな童貞だったかを力説しはじめる)

――もうたくさんです! 話を戻しましょう!

ボテロと麻薬カルテル

フェルナンド・ボテロ《コロンビアの虐殺》

――フェルナンド・ボテロが「ボテリズム」と呼ばれる、モチーフを豊満に描く手法を発見した事や、ニュートンが木から落ちるリンゴを見て、万有引力を発見した事は偶然だった、という話でしたよね。そこから「ニュートンが童貞だった」という話題に引っ張られて豪快に脱線したんですよ!

山口:またLTGになっちゃったね(笑)。じゃ、戻すよ。ボテロやニュートンみたいに新しい手法や法則を発見した人って、他の人たちとは違う物の見方ができたからだと思うんだよ。今ってクレームや炎上が多いじゃない? これは、自分から見えてる世界だけが正しいと思い込んでる人が多いからだと思うよ。

――確かにそうですね。

山口:思い込みを手放すと、世界が違って見えるから、もっと色んな方向から世の中を見る事が、必要なんじゃないかな。そのためにアートがあるんだよ。「人によって見えてる世界は違う」という事を気づかせてくれるのがアートだから!

――急にイイ事言い出しましたね。

山口:だから、今回の映画、ギンティくんは俺とは違う見え方がしたと思うんですけど、どっかピンとくるとかありましたか?

――急に僕にふるんですね。えっと……僕的には、ボテロが貧しかった頃の子育てエピソードが強烈でしたよ。

山口:そこか(笑)。

――子どもたちのために作ったスープの中にリアルなガラス製の目玉を入れて「今夜は目玉のスープだよ!」って出すんですよね。そんな『悪魔のいけにえ』(1974年)や『食人族』(1983年)に出てくるような料理を出されたらトラウマになりますよ! 

山口:あの話は異常だったな(笑)。

奇しくも、この日のグッチーさんは『悪魔のいけにえ』のTシャツでした

――他に印象に残ったのは、ボテロの作品って多幸感に満ちたものばかり、というイメージがあったんですが、映画を観たら、実はコロンビアのダークサイドを描いた作品をたくさん発表しているんですよね。彼の出身地で、現在も一年のうち数か月は暮らしているコロンビアのメデジンって、かつては麻薬王パブロ・エスコバルが率いてたメデジン・カルテルと呼ばれる組織が拠点にしていた治安の悪い場所なんですよね。

山口:パブロ・エスコバルって『エスコバル 楽園の掟』(2014年)でベニチオ・デル・トロが演じたよな。

他にもドラマ『ナルコス』(2015~17年)とかたくさんの映像作品で描かれている有名な麻薬王だよね。映画では、メデジンは爆弾テロや市民が虐殺された事件が多い地域って言ってたな。

――そういうコロンビアのダークサイドをモチーフにした作品をたくさん描いているんですよね。爆弾テロで手足がバラバラになった家族や、1993年に逃亡中のパブロ・エスコバルが警察に射殺された瞬間とか。そういう残酷なモチーフを豊満に描くことによってインパクトが強烈な作品になっているんですよね。

フェルナンド・ボテロ《La Masacre' de la obra 'Testimonios de la Barbarie》
フェルナンド・ボテロ《パブロ・エスコバルの死》


山口:俺も幸せそうな絵ばかり描いている人ってイメージがあったから驚いたよ。ボテロさんの作品も爆弾テロの犠牲になっているんだよね。

――その話も強烈でした。メデジンの中心地にあるサン・アントニオ広場に、平和の象徴としてふくよかなハトの銅像を進呈したんですよね。そうしたら1995年にその広場でコンサートをやった時、爆破テロが起きてしまって……。

山口:しかも、爆弾はハトの銅像に仕掛けられたんだよな。

――その結果、23人が亡くなって約200人が負傷して……。当然、ハトの銅像もボロボロになるんですが、ボテロは市に直訴して、銅像を撤去せずに残して、その横に新たなハトの銅像を設置したんですよね。その事によって、より平和のモニュメントとして意味が強くなった。

山口:ボテロさんは「芸術は物事を変えることはできない。でも人々の記憶に証を残せる」って言ってるんだよね。

ボテロがサン・アントニオ広場に進呈したハトの銅像。手前の像に爆弾が仕掛けられた

――他にも、2004年にイラク戦争で米軍に捕まったイラク兵がアブグレイブ刑務所で残虐な拷問をされていた虐待事件の絵もたくさん描いてますよね。全裸にされた捕虜を犬に襲わせる絵では、捕虜だけじゃなく犬も豊満なタッチで描くことによって、より米兵の行為がグロテスクである事が強調されて、メッセージ性が高まってましたね。

フェルナンド・ボテロ《アブグレイブ#52》
フェルナンド・ボテロ《アブグレイブ#43》

山口:あれはジョー・コールマンの絵みたいだったな。

――ハードコア・パンクバンドやデスメタルのジャケットになっても不思議ではない絵でしたよね。

ジョー・コールマンの画集『Original Sin』

山口:なるほどね~、ギンティくんはそういうところに注目したのね。豊満な幸せそうな絵だけじゃないんだよな。意外に熱いものがある人なんだよ。

日常を違う方向から見ろ!


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山口:ボテロさんは30歳手前で芸術家として成功したけど、実はかなり壮絶な人生なんだよ。幼い頃に父親を失ったために貧しい環境で育ち、アーティストとして成功してからもコロンビア出身ということで差別をされ、愛する息子を交通事故で亡くし、その時に助けようとして利き手である右手の一部を失ってしまい、結婚を三度経験して、世界を転々として、って波乱万丈なんだよ。そんなボテロさんの人生は、まさにライフ・イズ・アート!

――今回のキメ台詞は唐突でしたね。

山口:(ちょっぴり気まずそうな顔をしながらも無視して)まあ、人生って良い事もあれば悪い事もあるわけで、今ツラい思いしてる人もボテロさんみたいに人とは違う物の見方を発見することによって人生が好転することもあるはずですよ! だから、日常をいつもと違う方向から見てみたらどうでしょうか? もう一度言うけど、そのためにアートがあるから! 人によって見えてる世界は違う事を気づかせてくれるのがアートだから! そんなわけで皆さんの人生もライフ・イズ・アートに! 

――今のはキマったんじゃないですか?

山口:(ブランコを楽しむ幼児並に嬉しそうに)じゃ、ここからはボーナストラックという事で、さっき途中で終わったニュートンが童貞だった話の続きをさせてよ!

読者の皆さん、物の見方を変えてみて、この童貞を愛し続ける事ができる心の広い人間になりましょうね!

――マジですか……。ここからは童貞の戯言が続くと思うので、無理と思った方は帰ってくださっても大丈夫ですから! 
山口:じゃ、ここでお別れする方は最後に沢田研二の「ストリッパー」の俺の弾き語りバージョンを聴きながらお別れしましょう~!


ボーナストラック① 童貞を貫いた偉人たち

山口:さっきニュートンは84歳で死ぬまで童貞だったって言ったよな。

――……ええ。

山口:そんなニュートンが生きていた時代って、まだ科学と魔術の境界が不明瞭だったんだよ。ニュートンは「近代科学の礎を築いた」と言われているけど、実は錬金術の研究に没頭していたの。だから「最後の魔術師」とも呼ばれているのよ。よく都市伝説でさ、「30歳まで童貞だと魔法使いになれる」って言うじゃない。この話って錬金術をやってたニュートンが生涯童貞だった事が由来らしいんだよね。

――科学雑誌のタイトルにもなっている御方なのに。

山口:宮沢賢治も37歳で亡くなるまで童貞だった、という説があるじゃない。この人はニュートンを見習って魔法使いになろうとして、童貞を貫いたらしいよ。宮沢賢治が書いた作品は神秘的なものが多いじゃない。

――気合の入った特撮を使うかアニメじゃないと、映像化できない作品が多いですよね。

山口:そんな宮沢賢治が尊敬していたニュートンって、生涯に一度も射精したことがなかったらしいよ! すごくない?

――凡人には至難の業ですよね……。宮沢賢治も夜、ムラムラした時に朝まで外を歩き回って性欲を抑えた、という逸話がありますよね。

山口:ニュートンはノンバイナリーだったって説もあるんだよね。ちなみに俺は童貞ですけど、サム・ペキンパーやジョン・ウーの映画のクライマックスみたいな無駄に乱れ撃ち状態ですよ! でも1人で、だけどね! 

――どーでもいい事をカムアウトしましたね。


ボーナストラック② 童貞は神秘体験を引き寄せる?


――ついでだから僕も話しますけど、「童貞が魔法使いになれる」といえば、61年間童貞を貫いているグッチーさんもオカルトチックな逸話が多いですよね?

山口:たくさんあるね~(笑)。

――よく言われるのが、グッチーさんと縁が切れたり揉めたりした人が……。

山口:(ニンマリとして)必ず不幸になるんだよな(笑)。

この童貞と縁が切れた者は不幸になる、と言われている……

――嬉しそうに言わないでくださいよ! でも、そうなった方が本当に多いんですよね……。

山口:最近の話だと去年、俺と縁が切れた●●が今、大変な目に遭ってるらしいな。やっぱ、童貞は神秘体験を引き寄せますよ!

――ここはツッコまなきゃいけないんですけど、僕自身も体験した事がありますからね……。グッチーさんが雑談中に話題に出した有名人が、その時に亡くなっていた、という事も1回や2回じゃありませんもんね。

山口:そうそう!

――3年前、グッチーさんが喫茶店で若い友人とお茶していた時、某文化人の事を話題にしたら、その若者が知らなかったんですよね。

山口:で、そいつが携帯で検索した瞬間、真っ青な顔になって「山口さん、その人、さっき亡くなったってネットのニュースになってますよ!」って驚いてたのよ。

――似たケースを僕も体験してますよ。2年前、グッチーさんと飯を食っていた時、ある女性歌手の話題で盛りあがっていたんですよね。「あの曲が良かったな~」って。

山口:そしたら、その時にその歌手が亡くなっていた事を翌日のニュースで知ったんだよな。

――タイミングが凄すぎてゾッとしましたよ……。

ボーナストラック③ 死神童貞

――グッチーさんのオカルト話は、もっと凄いエピソードがありますよね。これはグッチーさんの自伝『ワイルドチェリーライフ 山口明: 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる』にも書いてありますけど、デザイナー時代に大手出版社に出入りをしていた時、仲が良い編集者と雑談で盛りあがっていたら、他の編集部の人から怒られたんですよね。

山口:そうなんだよ! 某Sって大手出版社に出入りしていた時にね。それ以来、俺がSに行くたびにその人から怒られたんだよ。で、久しぶりにSに行ったら、その人がいないのよ。知り合いの編集者に「あの人、いないけど。生きてんの?」って聞いたら、編集者が慌てて「山口さん、そんな事言っちゃダメダメ!」って。聞いたら「実は先週、亡くなったんですよ……」って。

――……。

山口:同じ時期にTという大手出版社でも、俺に当たりのキツい編集者がいたんだよ。その人もSの編集者の後に亡くなったんだよね。

――魔法使いというより死神ですよ……。だから、この連載を読んでくださっている読者の方も読まなくなったら不幸になるかもしれませんね。

山口:(キッパリと)なるな! でもね、このコーナーを読み続けると幸福が訪れると思うよ(笑)。ゆくゆくは、このコーナーを有料にしたいんだよね。読者の皆さん、課金したら幸福になりますよ! 俺と縁が切れた人は不幸になるけど、おつきあいがある方は幸福になります! 俺は生きるパワースポットと呼ばれてますからね。皆さん、童貞は大事にしないとダメですよ!

読者の皆さん、グッチーさんに寂しい想いをさせないでくださいね!

――この連載、怪しいオンラインサロンみたいだな、とは思ってましたけど、遂にカルト教団の教祖みたいな事を言い出しましたね。

山口:(平然とした顔で)そう言われると思い当たる事があるよ! 

――どういう事ですか?

ボーナストラック④ 童貞神

山口:この間、美輪明宏さんがテレビ番組に出演して、俺が住んでいる千葉県松戸市の事を話題にしてたのよ。何年か前、松戸のホールで美輪さんのコンサートがあったんだって。

グッチーさんの地元・松戸で開催された「美輪明宏 ロマンティック音楽会~生きる~」

そしたらコンサート当日、東京が大雪になったのよ。関係者は「これは松戸のコンサートは中止だろ……」って思ったんだけど、美輪さんは駄目元でホールに向かったんだって。そしたら、松戸に近づくにつれてどんどん雪がなくなっていくの。で、松戸市内に入ったら、雪がまったく降ってなかったのよ。しかもコンサートは超満員。その事をテレビで話していた美輪さんは「松戸には神がいるのよ」って言ったんだよ! 今の話聞いて、どう思う?

――要するに、「そうです。私が松戸の神です」って言いたいんですか……?

山口:どー考えてもそうだろ! 俺が住んでいるからだと思うよ!

――死神じゃなくて童貞神様だったんですね。この連載、前回までは「童貞の戯言」をお伝えするコーナーだと思っていましたが、実は「神の声」をお伝えするコーナーだったんですか?

山口:そうだよ! それに以前、「オーラが見える」って人と会った時、「俺のオーラはどうなのよ?」って聞いたら「美輪明宏さんと同じようなオーラです」って言われた事があるよ(笑)。

――じゃ、美輪明宏さんも神様と同じオーラって事ですか?

山口:そうなるよな。まあ、俺は神でもあるし、ゴッドハンドでもあるから。

――どういうことですか?

山口:ヌキ上手っていうの(笑)。

――ただのセンズリおじさんじゃないですか……。

山口:まだ実際に女性との行為をやっていないだけで、実は熟練という説もあるのよ(笑)。

――……さすがに、もう終わりにしませんか? 

山口:じゃ、今回はこの辺で! 

『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved

『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』

監督:ドン・ミラー
出演:フェルナンド・ボテロ(本人)、フェルナンド・ボテロ・セア(長男)、リーナ・ボテロ・セア(長女)、ホアン・カルロス・ボテロ・セア(次男)、 ルディ・キアッピーニ博士(キューレーター)ほか
製作年:2018年
Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
公式サイト:https://botero-movie.com/


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