第0回 童貞界のカリスマ、山口明とは? 童貞アーティスト山口明(童貞歴:61年8ヵ月)の『LIFE IS ART‼ 映画でアート思考をアップデート』
取材・構成◎ギンティ小林
62歳、童貞です?
――この度、K&Bパブリッシャーズのnoteで山口明さんが、気になるアート映画や音楽映画を紹介する連載がはじまりました。まずは山口明さんの事を知らない方もいると思うので自己紹介を。
山口:62歳、童貞です! よろしく~!
――え! それで終わりですか? ちゃんと説明しないと、読者がついてこないですよ……。それにグッチーさんは1960年7月10日生まれだから、まだ61歳ですよね?
山口:サバ読んだのよ。61歳より62歳の童貞の方が価値が高いじゃん。ワインと一緒(笑)。熟成されるんだよ!
――全然違うと思いますけど。グッチーさんはもともと漫画の単行本などの装丁デザインをした売れっ子デザイナーですよね。
山口:(照れながら)もう過去の話ですけどね~。
――どんな作品のデザインをやられたんですか?
山口:まあ、巨匠から新人までいろいろやりましたよ。『エリートヤンキー三郎』『ナニワ友アレ』『ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』『バンビ〜ノ!』『日掛け金融地獄伝 こまねずみ常次朗』『THE3名様』『東京都北区赤羽』『ガンジョリ』とか。そういう作品のロゴやカバーのデザインをしたんですよ。
――せっかくなので、グッチーさんがわりと真面目にデザイナーとしての仕事ぶりを語っている動画を載せておきますね。ちょいちょいクレイジーな発言をしていますが……ま、興味のある方は御覧になってください。
コンビニ向け廉価版コミックスのデザイン・フォーマットを作った童貞
――グッチーさんは、コンビニで販売している廉価版コミックスのデザインを初めてされた方なんですよね。
山口:(さらに照れながら)その話はいいよ~! たまたまだから!
――ちゃんと答えてくれなさそうなので、グッチーさんの自伝『ワイルドチェリーライフ 山口明: 童貞力で一億総クリエイター時代を生きる』から引用しますね。廉価版コミックス誕生の話が載っているので。
山口:(シャイな幼児のようにはにかみながら)いいよお。
――コンビニでの廉価版コミックスの販売が企画された時、前例がなかったので「どんな装丁にするか」となって、「その漫画自体を知らない層が買う。つまり、レンタルビデオ屋でビデオを借りる事に似てるのでは?」と考えたグッチーさんは「売り場が狭いから面出しはない。それなら背表紙にわかりやすいキャッチコピーみたいなものを入れよう」とプランニングしたそうですね。
山口:(顔を真っ赤にして)まあ、そうかな。
――作品の内容を知らなくても手に取ったお客さんが雰囲気が掴めるように情報量を多くしようとして「裏表紙には漫画の1ページを入れて、内容がわかるように」したと本に書いてありました。
山口:そうなんだけど、当時は会社内でけっこう嫌がられたんだよね。「出版文化を冒涜するのか!」とか「ダセえデザインだ!」って。
――でも、今ではグッチーさんが作ったデザインのフォーマットがコンビニの廉価版コミックスのフォーマットになってますよ。
プロ童貞です!
山口:俺、デザイナーとして独立したのは35歳で遅かったんだよ。まあ、すべてにおいて奥手だから(笑)。
――でしょうね。
山口:だから、いまだにパソコンも携帯も持ってないんだよ。
――グッチーさんに連絡するのは常に家の電話ですもんね。
山口:実家ね。生まれてから今日まで両親としか暮らしたことがないから。そんでデザイナーなのにパソコンも携帯も持たないから、50歳ぐらいから仕事がどんどん減ってきだんだよ。ちょうどその頃に、両親の具合が悪くなってきて……。
――介護生活がはじまったわけですね。
山口:介護はキツかったし、仕事も減ったんで56歳ぐらいの時にデザイナーを辞めちゃったんだよ。介護は本当に大変だよぉ。まだの人もいずれ訪れますからね~!
――そういう意味では今後、ハードな介護を経験したグッチーさんが体験談を語ってもらうスピンオフ企画『童貞介護』も掲載したいですね。
山口:イイねえ~! そんでデザイナー時代からカリスマ童貞って呼ばれてたじゃん。
――出版業界では都市伝説みたいな存在になってました。
山口:そしたらデザイナーを辞める前ぐらいから、童貞の仕事が入るようになったのよ。で、プロ童貞と名乗ることにしたの。
――プロ童貞?
山口:よく童貞のふりをしてるビジネス童貞がいるけど、俺は違うよ! 俺の童貞は本物! 極真童貞だから!
――極真空手はフルコンタクトですが、グッチーさんは女性とはノーコンタクトですよ。あと、童貞の仕事って何ですか?
山口:童貞として雑誌やTVの取材を受けるようになったんだよ。『映画秘宝』では今回のようなアート映画を語る連載をやらせてもらったし。『アウト×デラックス』からもオファーが来て、打ち合わせをしたら「アウトすぎる」って断られたよ(笑)。
――あれだけアグレッシブだった番組にもボーダーラインがあったんですね……。でも、Amazonプライム・ビデオやNetflixで配信中の『「ほんトカナ!?」ケンドーコバヤシの絶対に観ないほうがいいテレビ!』(2020~21年・第6話)やAmazonプライム・ビデオで配信中の『モテるの法則』(2019年・シーズン11の第1回)には出演されてますので、興味のある方は是非!
山口:地上波じゃないからね。MXテレビの『5時に夢中!』には出演できたんだけど、オンエア観たら「童貞」ってワードがNGらしくて「生息子・山口明」に変えられてたな(笑)。
プロ童貞から現代アーティストに転身
山口:俺、今は現代アーティストを名乗ってるんすよ。
――具体的にはどのような活動を?
山口:最初は絵でも描こうと思ったのよ。でも、「ちょっと待てよ、作品を制作するのって古いじゃん」って思ってさ。
――どいうことですか?
山口:古臭いじゃん、いまだに油絵とか描くのって。
――問題発言ですよ。
山口:でも、それは現代アートじゃないよ。俺は、もっと斬新というか抽象的な表現に向かうのがイイんじゃないか、と思って。そもそも現代アーティストを名乗るようになったのは、漫画家の石原まこちん先生に言われたある事がキッカケなんだけど。
――石原まこちん先生といえば、グッチーさん原案の『にぎっとレゲエ寿司』という漫画を描かれてますね。
山口:ある時、まこちん先生から「羨ましいな! 山口さんは自分自身が作品だからな。何もしなくてもイイじゃないすか!」って言われて「ああ、そうなんだな!」って思ったわけ(笑)。それで自分自身が作品って事にしたんだよ。
――真に受けすぎですよ。
山口:(無視して)だから日々、童貞であることを更新し続けていくことが俺の表現! そういう風に考えると毎日生きてる事が作品なのよ。
――じゃ、今もどんどん作品が仕上がっている、という事なんですね。
山口:そうだね! ま、ずっと童貞だったらどこに辿り着くのか、という壮大な人体実験を自分の身体を使ってやっていると思ってくれたらイイですよ。童貞界の野口英世ですよ!
――野口英世というよりモルモットおじさんですよ……。この連載を読んでくださる方たちは、人体実験の目撃者でもあるんですね。
山口:そうですよ~! 俺が死ぬまでが表現なんで! もしかしたら死んだ後も表現しちゃうかもしれないけどね(笑)。
――そしたら怪奇現象じゃないですか……。ま、人体実験という事なので、このコーナーのタイトルには毎回、山口さんの童貞保持記録の年月も記しておきますね。
アート思考をアップデートする
山口:だから皆さんは、街を歩いている俺を見たら、それも表現と思ってほしいですね。
――なんでもアートになっちゃうじゃないですか。
山口:(迷いのない表情で)アートって、そういうもんだよ! アートって何で大事かというと、何でこの連載をするのか、という話でもあるんだけど、アートの中でも現代アートって理解できないものが多いじゃないすか。アートって正解がないから。
――急に真面目な話になりましたね。
山口:人間って生きていくうえで、正解がわからない物事に遭遇する事があるじゃん。そういう時にどうしたらイイのか考えるヒントになるのがアートじゃないのかな。だから、これから大事になると思う。
――そこまで、ちゃんと考えていたんですね。
山口:それに今ってある意味、近代化が終わっちゃった感じっていうの。みんな衣食住に満足して、欲望がなくなっているじゃない。大衆のニーズに応えるのがビジネスだけど、それだとこれからはビジネスにならない。ビジネスは、大衆の欲望を超えたものを考えないといけない。それは何か?
――何でしょうか……。
山口:アートなんですよ! たぶんね(笑)。生きてくためだけじゃなく、ビジネスでもアート思考は大事なのよ。で、俺の連載を読めばアート思考がアップデートされてくのよ。
――なんかオンラインサロンの会員相手に話しているみたいですね。
山口:そう! この連載を読んでくれる人がいるんであれば、今後は集まって呑み会とかやりたいですね~! ZOOMでも良いですよ!
――なに信者を集めようとしてるんですか! ちなみにグッチーさんはお酒も煙草もやりませんから。それなのに呑みの席では誰よりも酔ってます。
山口:そうそう! 常に自分に酔ってるから(笑)。
――「自分に酔ってる」といえば、グッチーさんは10年以上前、「俺のマイブームは常に自分ですよ!」って言ってましたね。
山口:(1ミリも迷いのない顔で)今もそうだよ。
――その発言を聞いて思い出しましたけど、グッチーさんは19歳頃に「もしかしたら付き合うのでは?」というぐらい仲が良かった女性が現れたんですよね。どんな方でしたっけ?
山口:顔が俺とそっくりだったんだよ。兄妹に間違われるくらい。
――そのくらい自分が好きなんですね……。
山口:今も自分の顔そっくりの女性が現れたら、すぐに付き合っちゃいますよ。
――相手にしたらドン引きですよ……。自分と同じ顔をした革ジャン着たおっさんがガッついてくるんですから。
山口:(サラっと無視して)で、このコーナー、以前に『映画秘宝』でやってた俺がアート映画や音楽映画を語る連載のリニューアル版みたいなもんなんですよ!
――『映画秘宝』の連載も僕が担当してましたけど好評でしたよ。読者から単行本化を希望する声もありましたから。
山口:(嬉しそうな顔で)ほんとお? 読んでた人なんていたのかな~! まあ次回から記念すべき第1回目なんで、気持ちも新たにリューアルしていきますよ! しかし、下半身のほうはリューアルせずに童貞のままいきますんで安心してください、皆さん!
――最後に下ネタをブッ込んできましたね……。
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