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67なんちゃって図像学(4),(5),(6) 末摘花の巻⑤ 鉢合わせの後 管弦の遊
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・ 左大臣邸への束の間の笛の協演
二人とも今宵の約束をしている人がいたのですが、二人でじゃれ合っているのが楽し過ぎて離れ難くなってしまいました。
十六夜の月が風情たっぷりに雲隠れして朧月夜になっています。
一つ車に乗って、道中は、笛を吹き合わせる楽興の時となりました。
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🌷🌷🌷『笛を合わせながら 』の場の目印の札を並べてみた ▼
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・ 左大臣邸での奏楽のひととき
左大臣邸に着きました。
前駆に声も立てさせずこっそり邸に入り、源氏は、人の来ない渡廊で直衣に着替えます。
何食わぬ顔で今宮中から帰ったように、二人で笛など吹き合わせながら座敷に入ります。
頭中将もいるので、葵上の御簾の外側に着座して合奏を続けます。
左大臣が聞きつけて、高麗笛を持って来ました。左大臣も笛の名手で、興趣深く吹きます。
琴を運ばせて、葵上の側に仕える琴の心得のある女房に弾かせます。
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🌷🌷🌷『左大臣邸での合奏 』の場の目印の札を並べてみた ▼
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・ 中務の君の憂愁
葵上の女房の中務の君は、琵琶に堪能です。
頭中将が思いを掛けて来るのを拒絶していたのですが、ごくたまに来る源氏の誘いは断れずに、関係が続いています。
自然に皆の知るところとなり、三条大宮なども不快にお思いなので、
中務の君は気が重く居場所もない気がして、鬱々と端の方に寄りかかるようにしながら琵琶を弾じています。
そうかと言って源氏に会えない所に離れて行ってしまうのも心細くて思い乱れています。
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・ 故常陸親王の姫を想う
たまさか訪れる婿君の召人となってしまった中務の君の憂愁になど、二人の若君は全く無頓着です。
先程荒れ邸で聴いた七絃琴の音色を思い出しながら、荒れ果てた邸の様子も一風変わって面白いもののように思えています。
頭中将は、『素晴らしく可憐な人が荒れ邸にひっそりと暮らしているようなのの発見者になったら、ひどくいじらしく思えて虜になって、人の口に立つようになってしまうかもしれないなあ』『そうなっては自分も困るだろうなあ』『まあそんなことはあるまいが』などとまで思いをめぐらします。
そして、源氏の思い入れぶりを知っているので、『この人に限ってこのままで終わらせることはあるまい』と妬ましくも案じられてきます。
・ 故常陸親王の姫君とのその後
その後二人はそれぞれ故常陸親王の姫君に文を遣ったようですが、どちらにもお返事はありません。
頭中将は、気になって苛立って、『ひどいじゃないか』『あんな風情の荒れ屋に住んでいる人は、ものの哀れを知り、ちょっとした木や草や空の風情につけても心映えの忍ばれるような文をよこしてこそじゃないか』
『軽薄なのがよろしくないと言ったって、ここまで頑なではおもしろくもない』『よろしくない』と、源氏よりもだいぶやきもきしています。
いつもの隠し立てのできない性格で源氏に言います。
「どこやらへのお文のお返事は来ていますか?」「私は試しに送ってみたのですが、音沙汰もありません」
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🌷🌷🌷『返信のないのをかこつ頭中将 』の場の目印の札を並べてみた ▼
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(📌 頭中将が源氏に愚痴を言う場面です。
『その後 こなたかなたより 文などやりたまふべし』から
『瘧病みにわづらひたまひ 人知れぬもの思ひの紛れも 御心のいとまなきやうにて 春夏過ぎぬ』までの間なので、
左大臣邸での合奏とは別の日で、一月十七日から北山に発つ三月晦日までのどこかなのでしょう。
源氏と頭中将の二人の宿直の場面なら、雨夜の品定めと同じ構図ですが、雨夜の品定めは梅雨時なので、似たような場面でも庭に梅や桜などの花木が華やかに咲いているのが区別点かと思います)
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源氏は、『やはり恋文を遣ったのか』と可笑しくなって、
「さあ、どうだったかな」「特に見たいとも思わない人の文だからなのか、見たかどうか」
と焦らすような言い方をします。
頭中将は、お返事があったのに濁されたと疑って、『こちらの方にばかりお返事があるのか』と悔しさを滲ませてしまいます。
・ 負けたくないだけの源氏
源氏は、それほど深い思いがあったわけでもない人ですから、音沙汰もない冷淡さに興醒めしかかっていました。
でも、頭中将が熱心に言い寄っているのを聞くと、
『女はまめに言い寄る方に靡くのだろうが』『それであちらに靡いた挙句に、先に粉をかけた私のことを振ってやったなどと得意気な顔をされてはおもしろくない』
と思い直します。
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どうしてもあの姫をものにしなければならないと思い立って、大輔の命婦に真剣に相談します。
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「事情もわからないままこう冷淡な御様子なのが辛いのだよ」「好色者とお疑いなのではないのかな」「私は不誠実な火遊びをするような男ではないのだ」「心を許してくれなくて不本意なことになっても、皆こちらの落ち度ということになってしまうから困るのだがね」
「おっとりした人で係累の面倒がなくて気楽な人なら私は愛おしいと思うのだよ」
と言います。
命婦は、「さあ、そんな楽しい御休憩先になりますかしら」「ただもう内気でいらして引き籠っていらっしゃるのは世間に珍しいほどの御様子なのですもの」と知っている通りのことを言います。
「洗練されて才気走ったような人ではないのだろうが、子供っぽくておっとりしている人こそ可愛いのだよ」と、会う度に源氏は言います。
・ 八月二十日過ぎまでの空白
それから瘧病に悩んだり、人知れぬ恋に懊悩したりで、心にゆとりがないまま春夏が過ぎました。
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📌 源氏と頭中将が吹く笛は『笛』とだけ書かれています。
左大臣の持参した高麗笛は、同じ雅楽器の中で、龍笛より一回り小さい高い可憐な音のする笛だそうです。
『若菜上』で、源氏の四十賀の管弦の御遊に、源氏は例によって琴(きん)の琴、太政大臣になっている頭中将は和琴を弾きますが、その後、引出物と言うのか、源氏は頭中将に、『すぐれたる和琴一つ、好みたまふ高麗笛添へて』 贈ります。
父左大臣同様、家の芸的に頭中将の好みの横笛も龍笛ではなく高麗笛だったでしょうか。
懐中に携帯して屋外で吹く風流の為には、よりサイズの小さな高麗笛の方が適しているような気もしますが。どうなのでしょうか。
眞斗通つぐ美
📌 まとめ
・ 車内で笛の合奏
https://x.com/Tokonatsu54/status/1711288117192540628?s=20
・ 左大臣邸での合奏
https://x.com/Tokonatsu54/status/1711289328268365846?s=20
・ 返信のないのをかこつ頭中将
https://x.com/Tokonatsu54/status/1711290844077339051?s=20