今日投稿すれば511日連続!びっくり!とのこと。2025(令和7)年02月22日(土)ジョゼ・ジョバンニ『オー!』感想。
『読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?』とのこと。どうもありがとう。
511日連続。
今日は読書感想文を書く。ジョゼ・ジョバンニ『オー!』(岡村孝一訳)でハヤカワ・ポケット・ミステリの一冊だ。作者のジョゼ・ジョバンニは元ギャング。実体験を活かした暗黒小説でヒットを飛ばす。映像分野でも活躍し映画『冒険者たち』(監督ロベール・アンリコ、アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラが主演)原作者と言えばご存知の方がいるかもしれない。
本作品も若いギャングを主人公にした犯罪だ。主人公フランソワ・オランこと通称「オー」は元レーサーで、その腕を買われギャングの運転手をしている。いわゆる下っ端だが、それで終わるつもりはない。のし上がるのだと決めている。物語は、この男の半生を描く。
こういうチンピラが嫌いな人間はいると思う。私がそうだ。身近にいたらやってられない。間違って「オー!」と言ってしまえば、その呼び方を嫌うオーに撃ち殺されるからだ。だが、実際にいるわけではなく、本の中にいる分には別に構わない。むしろオッケーだ(オッケーはオーと誤解され射殺の恐れがあるか)。付き合うのなら面白いかも。ネクタイと玩具のサーキットが大好き。子供っぽい部分はある。そう、亭主にはしたくないが、愛人には向いているかな。
この男と新聞記者スパルタカスの友情が良い。犯罪者とブン屋だから一線は引かれている。べたつかないところが好ましい。だが、ある一件で両者の関係は緊迫する。そして衝撃のラストへなだれ込む。最終盤の展開は早い。一気読みだ。
ヒロインのベネディッドが見せる仕事ぶりが微笑ましい。古風な贈り物。とても役立つ。私だったらスプーンも付けるかな。穴を掘るための。
実はシュバルツ兄弟が好き。狂暴で血も涙もない極悪非道の犯罪者なのだが、これくらいの悪役でないと、最後の戦いが盛り上がらない。任侠映画を思い出す。あるいは忠臣蔵か。鶴田浩二や高倉健を大石内蔵助にして吉良邸に討ち入る映画を誰も企画しなかったのだろうか、と今ふと思った。
この作品はジャン=ポール・ベルモンドの主演で映画化されている。原作に惚れこんだ彼の希望だったようだ。確かに、オーはイメージに合う。作中の運転シーンは、もしかすると本人がスタント無しで演じているかも。未見なので視聴し、この目で確かめたい。
それにしても、この幕切れ。良い。
追記。書き忘れていたことがある。砂糖焼が良い。脇役だが、味がある。さすが美食の国フランスの小説と感心させられるくらい、最高級の味わいを醸し出している。これと同じ思いを同じくフランスの作家ジャン・ジュネ『泥棒日記』を読んだときに感じた。ジョバンニもジュネも刑務所暮らしを経験している。それが物を言った。社会の底辺を這いずる者たちの描写は、インテリには書けないという気さえしてくる。私の先入観かもしれないが。