今日投稿すれば201日連続!継続は力なり!とのこと
読書感想文を書く。
取り上げるのは『君の膵臓をたべたい』(住野よる、双葉社)だ。
ジャンルは難病ヒロインもの(私個人の主観的な文類です)。男性一人称の文体に救われた。語り手の口調が良い。基本的に明るいのだ。そんな彼の目を通した形で難病ヒロインが描かれているので、読み手に与える強い衝撃を緩和するフィルターが掛けられたようになり、彼女の悲劇を直視するよりダメージが軽減された。語り手の男子高校生には、感謝の言葉もない。私は彼に救われた。ヒロイン山内桜良の選択が、彼で良かった。
不満もなくはない。
↓
「あああああああ(中略)ああ! うああ!(中略)ぐっ、ああああ(中略)――ああああああっ!(中略)ひっ、うっ(中略)ああああ(後略)」
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これは255~256ページからの引用だ。本当は三行にわたって泣き喚いているが、長いので抜粋した。元は『小説家になろう』への投稿作品だと知って納得。いや、これは人の好みによるかな。これぐらいの方が、より強く涙腺を刺激される人が多いのだろう。私は逆に笑った。「なげーよ」と泣き笑いしたのだ。まあ、語り手当人が『僕は、壊れた。いや、本当はとっくに壊れていた』(255ページからの引用)と自覚したうえで書いているのだから、他人がとやかく言う筋合いではないな。第二の号泣議員を目指してくれ。
山内桜良が語り手との約束を守り共病文庫に彼の名を記さなかったことにも感謝したい。優れた演出だと感心した。桜は咲くべき時を待ってる。至言である。
爽やかなエンディングも好みだ。同時に疑問もある。実は私は本作品を、アニメ映画の主題歌その他を担当したsumikaというバンド経由で知ったのだが、関連動画に墓参りのシーンが出て来て、その中に桜の花びらがひとひら舞うショットがあったものだから、てっきり春に墓参に行ったのだと思っていたら炎天下の夏だった。言われてみれば語り手は夏服を着ていた。夏に桜。ピンク色の花びら。男の背後に舞い落ちる。振り向いて自分を見なさいと言わんばかりに。あざとい(笑い)。実は、君は、そんな女だったのか。良い演出だと思う。好きだ……失礼、これはアニメ映画の感想だった。
小説を読んだので、次は実写かアニメ映画を見ようと考えているのだが、迷いがある。どちらを見ようか、と悩んでいるわけではない。見ようか見るまいか、苦悩しているのだ。映像作品だと私は直接ヒロイン桜良を見ることになる。語り手の目を通して見るのではなく、自分の目で直に見るのだ。私の涙腺が、それに耐えきれるとは思えない。太陽を直接見てはいけないように、私の目を保護してくれるものが必要だ。私には私を守ってくれる語り手が必要なのだ。虚弱体質なヒーローである彼にお願いしたい。異様に元気な難病ヒロインの猛攻から私を守ってくれ。私の震える魂を抱き締めてくれ。
本書を読んだ時期が悪かった気もする。桜が咲き乱れ、散る頃なのだ。春以外なら、もう少しダメージが少なくて済んだかもしれない。満開の桜に心を乱され、散って地に落ちた花びらに感傷を禁じ得ないのが現状だ。道路の上の花びらを踏むたびに、心が痛む――女の子には花の名前を付けない方がいいかも、と少しだけ思った。男なら良いのかというと、それも悩ましい。それはともかく語り手の名前が一郎だったら、というネタが本編にあればとは思う(なくても困らないが)。
読んでいて一番とは言わないが上から五番目くらいに哀れを感じたのは、桜良から「…………最低」と言われたタカヒロだ。ドンマイとしか言いようがない。諦めて次へ行こう。何はともあれ、お前が通り魔でなくて良かった(おいおい)。
これぐらい書けば映像化作品へ心穏やかに向き合えるかな、と思ったが、まだ何かが足りない。私の涙腺や柔な心を防御する鎧が必要だ。分厚い装甲で自分を守らねばならない。それは何かというとクールな視線だ。この物語を笑いに変えるくらいのひねくれた感性が求められているのだ。そういった場合に手っ取り早いのは二次創作である。メロウでアホウでエロい二次創作なら完璧だ。こういうのなら要求を満たす。
↓(155~156ページから淫用じゃない引用)
僕は、目の前の彼女の肩を掴んでそのままベッドに押し倒した。
彼女の上半身をベッドに押し付け、倒れた彼女の肩から手を放し、両腕を掴んで動けなくする。僕は、何も考えていなかった。
彼女は我が身の状況に気がついて少しだけじたばたと動いたけど、やがて諦めて自分の顔に影を作っている僕の顔を見た。相変わらず僕は、自分がどんな顔をしているのか分からなかった。
「【キモいクラスメート】くん?」
彼女の戸惑い。
「どうしたの、放してよ、痛いよ」
黙って僕は彼女の目だけを見た。
「さっきのは冗談だよ? ねえ、いつもの遊びだよ」
どうなれば、満足だったのだろうか。自分で自分が分からない。あるいは、僕はもう。
僕が何も喋らないでいると、表情豊かな彼女の顔が、人と付き合う人生で身につけた顔が、いつかみたいにくるくると変わった。
彼女は笑った。
「えへへっ、私のジョークに乗ってくれるの? 君にしてはサービスいいね! さ、そろそろ放して」
彼女は困った。
「え、ねえ、どうしたの? 【最低】くんらしくないよ。君は、こういう悪ふざけはしない人でしょ? ね、放して」
彼女は怒った。
「いい加減にしてよ! 女の子にこんなことしていいと思ってるの? 早く放して!」
僕は、おそらく一番の無感動をたたえた目で、彼女を真っ直ぐ見据え続けた。彼女も、僕の視線から逃げようとしない。僕らのベッドの上での見つめ合いは、この上もなく、ロマンチックだった。
やがて彼女も、何も言わなくなった。激しい雨の音だけが、窓を隔てて僕を責めるみたいだった。彼女の吐息や瞬きの音は僕を、どうしているのか分からなかった。
じっと彼女を見ていた。彼女も僕をじっと見ていた。
だから分かった。
無言で、表情の動かなくなった彼女の目に、涙が浮かんだ。
僕は言った。
「泣いてるだけか~~~~!? 叫んでもいいぞォ――――ッ!! 俺はそっちのが興奮する――――ッ!! 本番といこうや――――」
彼女は言った。
「おい、この【童貞野郎】よく聞け。私これまでに三人の彼氏とヤッてヤッてヤリまくった以外にも、恋人でも、好きな人でもない男の子と、いけないことをしまくってきたんだけど、お前みたいな【友人のいないキモいぼっちのチェリーボーイ】とやるのは死んでもイヤ」
無限の嫌悪と蔑みに満ち満ちた、誰かを傷つけるためだけの顔を正視できず、僕は床に荷物を置いたまま彼女の部屋から逃げた。階段を駆け下り玄関を走り抜けローファーをスリッパ履きのまま激しい雨の降る外へ出る。荷物だけでなく傘も玄関に忘れてきた。取りに戻ろうか? でも、戻れない。そんな思いが彼女に届いたらしい。ドサッ! と音がして、僕の目の前に僕の荷物が落ちてきた。二階の窓から彼女が放り投げたようだ。蓋が開いて中の物が飛び出し土砂降りの雨に打たれた。それらを僕は拾い上げて帰宅した。
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手間が掛かった割に面白くなくて落胆。しかし変な二次創作を書くことで精神面が鍛えられたと思う。映像作品の視聴に備えたメンタルトレーニングは、これで完了した。さあ、本番といこうや――――!!(←それ違う作品)
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