今日投稿すれば261日連続!すごすぎ!とのこと
『おはようございます。今日も良い一日を』とのこと。ありがとう。
今日は読書感想文を書く。取り上げるのは対談本『クマと闘ったヒト』(中島らも、ミスター・ヒト、MF文庫ダ・ヴィンチ)だ。
タイトルになっているクマと闘ったヒトが、ミスター・ヒトである。本書に書かれた彼の紹介を引用する。
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本名・安達勝治。1942年、大阪府生まれ。大相撲を経て、67年に日本プロレス入門。トリッキーなプロレスで人気を集める。カルガリーに主戦場を移し、世界を股にかけて活躍。馳浩、獣神サンダー・ライガー、橋本真也らを育て、選手たちからの信頼も厚い。引退後は大阪でお好み焼き店を経営。享年67。
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かくの如き伝説のプロレスラー&名トレーナーにインタビューを敢行したのが、中島らも。以下に彼の紹介文を引用する。
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1952年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学放送学科卒。コピーライターを経て小説家デビュー。作家活動のほかに、劇団「リリパットアーミー」主宰、俳優、ミュージシャンなど意欲的に活動。著書に『お父さんのバックドロップ』『今夜、すべてのバーで』『ガダラの豚』『僕にはわからない』など多数。享年52。
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この両者がタッグを組んで、というか、紙の上でプロレスをやって見せているのが本書である。
裏表紙に内容紹介が、なぜか二つあるから、両方を載せておく。
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プロレス界のタブーを斬り裂く
アントニオ猪木、ジャイアント馬場、上田馬之助、キラー・カーン、A・ザ・ジャイアント……プロレス史に燦然と輝くスターたちの素顔とは? 昭和プロレス界の歴史を歩み、馳浩や橋本真也らを育てた伝説のプロレスラー、ミスター・ヒトが中島らもと出会い、プロレス界の裏側をしゃべり倒す。大槻ケンヂと夢枕獏も参戦! 文庫版特別インタビューも巻末に収録。解説/吉田豪&杉江松恋
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二つ目。
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プロレス黄金時代を築き上げたレスラーたちの、
輝かしい伝説からスリリングなゴシップまで、
作家の中島らもが聞き役となって、
数多くの名レスラーを育て上げた名コーチであり
元レスラーのミスター・ヒトが、
プロレス界の内幕を徹底的に暴露する!
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二つ目は惹句のようなものかもしれない。表紙に印刷された内容の紹介は以上だが、ミスター・ヒトの肉声を綴った文もあったので、更にそれを引用する。
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プロレスはエンターテインメントでもあるからね、
馬場さんみたいに本当にやったら
大して強くない人でも、
人気があるから猪木さんの上をやっていたとか、
本当はどっちが偉いかなんて、
そんなのわからないですよ。(ミスター・ヒト)
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本書は概ね、こういった口調でミスター・ヒトが語り尽くし、それに対しインタビュアーの中島らもが突っ込んで話を更に大きく膨らませる、またはもっと深いところに斬り込んでいく、というストロングスタイルで綴られている。優れた二人漫才のように面白い。いや、例えるなら、プロレス本なのだからタッグが適切か。だが、本書を読むとタッグよりも互いにリング上で戦っていると書く方が相応しく思えてくる。
二人は紙の上でプロレスをやって見せているのだ。
本書の中でミスター・ヒトは何度も力説している。
↓ 272ページより一部引用
プロレスっていうのは受けてナンボだから、それをいかにやるかちゅうことなのよ。
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まず中島らもが本日のテーマを伝え、それに関して尋ねる。そのすべてが直球の質問なので、大抵の人間は答えに窮するわけだが……ミスター・ヒトは、その質問を分厚い胸板でバチっと受け止め、とんでもない裏事情を暴露して返すのだ。中島らもは、大うけする。そして、またさらにストレートな問いかけを放つ。するとミスター・ヒトは、これまた爆弾発言で返すのだ。話芸の形で二人が見せる力と技の応酬に、私はプロレスを感じた。
ミスター・ヒトの言葉を、また引用する。
↓ 183ページより一部引用
プロレス受けてなんぼの世界でしょう。技が来たときに返し技、反対に行くと両方ともけがをするんですよ。だから暗黙の了解ですよ。
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阿吽の呼吸が重要なのだ。この対談にも、それは当てはまっている。対談する相手を尊重し、お互いを信頼し合うことで、普通なら聞けない話を聞き出すことができるというものだろう。
プロレスも、そういうものなのだ。
またもミスター・ヒトの言葉を引用する。
↓ 237ページより一部引用
だからプロレスって馳選手が言ってるように、「信頼のスポーツ」なんですよ。相手を信頼しなきゃ、受けられないし、相手を信頼しなきゃ、自分のもできないじゃないですか。それなんですよ。
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そんな「信頼のスポーツ」の裏側は騙し合いと裏切りの連続なのだ! というのも本書を読めば分かる。それは知っていた私も、知らなかったことがあった。ニューヨークのレスラーはおかまが多い(p81)とか超獣ブルーザー・ブロディはバイセクシャルだった(p207)等、他にもnoteには書きにくいネタの宝庫なのが本書である。
最後に、かっこいいと感じたミスター・ヒトの言葉を引用する。
↓ 335ページより一部引用
ああいうゴテゴテした世界で頭を下げて生きていくのがイヤだから、現役時代はフリーのまんま通したんだよ。だから、どこにも大きいこと言えるの。本当のこと言ってるだけの話ですよ。