今年6回目の日記ですよ。
夜の7時に待ち合わせした。
気が付くと時間は6時だった。
「トンカツが食べたい…。」
突然の脳からの命令に、その男は迷っていた…。
今から買い物に行って帰って来て料理をしたら、おそらく7時…。
そう、それじゃあ間に合わない…。
「遅刻は社会じゃ通用しねぇ…。」
しかし、
「俺はトンカツが食べたいんだ…。」
男の食欲という欲が、男を冷蔵庫へと向かわせた。
恐る恐る冷蔵庫を開く…。
「奇跡…。」
トンカツ用の豚肉が3枚入っていたのだ。
まるでお気に入りの玩具を見つけたかのような顔をして、男は肉を取り出してまな板の上に並べた。
「デェラッシャアイィィッッッ!!!!!!」
雄叫びと共に、キッチンに衝撃が走る…。
「確かひろちゃんはトンカツを揚げる前に肉をハンマーで叩いてたからな…
俺は素手さ…。」
肉をひっぱたいて、下拵えをする。
そして高温の油に肉を落とした瞬間だった…
ジュッッワワワワアァ~ッッッ!!!!
という凄まじい音と共に、男に飛んできた物があった。
「ッッッチィ…!!!!!!」
男の目の下の当たりに油が当たったのだ。
男は驚愕していた…。
「…あと数cm…
あと数cm、
トンカツの間合いに入っていたら、
目を殺られてたってわけかい…。」
しかし男は目の下以外にも油の攻撃を受けていた…。
男の姿はタンクトップ…。
「油の野郎…攻め放題ってわけかい…。」
そして男と油の闘いは始まった…。
「トンカツを揚げるには箸がトンカツを持てる距離まで近付かなきゃならねぇ…
つまりあと数cm…。」
男は気付いていない…
後ろにトンカツとの間合いを広げることが出来る菜箸があることを…。
「しかしこれ以上近付いたら…ただじゃすまねぇ…。」
何故この男は上着を着ないのだろうか…。
「ふっ…。ホントは退屈してたんだ…
焼ける様な夏の暑さに会いたいってな。
アンタの間合いに入れば、
夏の暑さに匹敵…
いや凌駕するかもしれねぇ…。
スリリングなクッキングじゃねぇか…。」
残りの肉は2枚…。
「よりスリリングにするなら…。」
まるでいたずらを思い付いた子供の様な顔をして、男は残りの肉も油の中に入れた…。
凄まじい音が鳴り響く中、
1人舞い上がった男は「
今日は何かのお祭りかぁ~」と、
嬉しそうに言った…
あの楽しいクッキングから何年経つだろうか…
いや何十年…
しっかり妻の尻に敷かれている男は、
トンカツの間合いはおろか、
他人との間合いに心を悩ませる中間管理職
通称、中間ちゃんになっていた。
他人との間合いか…
OK、この続きはまた明日。