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[創作]すべては分かっていたんだ
未明前夜、経済史に名を残す事件が起きたが、
第一人者である主人公は諸々を経験し抜いて、多くを語らず、寡黙に控えていた。
奥さんが彼の体調を心配し気遣いの言葉をかける。
「大変ですが、もう少し辛抱していきましょう。大変ですね。とても苦労は計り知れませんが、私は側にいます。」
主人公は感謝を述べ、その連日の騒動に出向くのだった。
それから20年後、彼は老衰で亡くなろうしていた。
妻は時期が来たと思い、その本心を聞こうとした。
「あなた、もし差し支えなければ、あの時の〇〇事件の真相を語ってくれますか。いえ、ただ返答してくれるだけでいいのです。」
諸々事件の根幹の部分となる確かめがそこで行われ、妻は最後に言った。
「やはりあれはあなたのせいではなかったのですね。」
主人公である夫は瞬時、間を置いた。
そして一つ、ゆっくりと頷いた。
そうして夫は息を引き取った。
妻はその後10年、たくさんの親族に支えられ、生きた。
しかし一つもその〇〇事件については語らなかった。
そうして妻は夫の亡き10年後に永眠した。
その日のニュースには新たなパンデミック、殺人事件、政治問題、災害の情報が垂れ流れていた。
世間はより一層、犯人を探し続けるのだ。