触れた鼻(エッセイ)
グンちゃんが私への警戒心を緩めた時、1度は自分の手のひらをグンちゃんの鼻元へと近付けるようにしている。
これはいわゆる『こんにちは』で、猫流の挨拶だから。
手のひらをグンちゃんの鼻へと近付けるけどグンちゃんは鼻を手のひらに近付け、クンクンっと匂いをかぐ。
その後、何かリアクションをするとか、そういうものはないけれど、匂いを嗅いだ後、特に反応がないのなら『わかった』と了解して貰えたのだろうと、私は勝手に思う事にしている。
そんな…匂いを嗅ぐ、グンちゃんの鼻。
チョンっと鼻先が私の手のひらに付くのだが、何だが私は…それがたまらなく好きになってしまったらしい。
グンちゃんの鼻は、程よく湿っていて冷たい。その湿り気と冷たさは、どうやら私を魅了してしまった様だ(笑)
猫という生き物にとって、鼻の湿り気は健康のバロメーターでもあり、においの粒子を吸着しやすくし、また、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ役割も持っている。
そんな鼻をくっつけて、私という人間の匂いを嗅いだグンちゃんは、どう思ったのだろう。
反応は薄く、無いに等しい反応だが、それでもしつこく『良いでしょうか?』と聞いてしまいたくなる気持ちもある。
言葉を介して会話する事が出来ない、人間と猫のとのやり取り。
湿って冷たいその鼻をつけ、私の挨拶を受け入れてくれてありがとう。
私は、そんなグンちゃんの鼻がいつでも健康なままの湿り気を維持していって欲しいと願っている。
そんな私の勝手な願いを、グンちゃんは知る由もない。
知らなくていい。
私のエゴだから。
けれど、たまにしか会えない私は、勝手に思い続けるだろう。ありきたりで、当たり前の、使い古された言葉を言うだろう。
『少しでも長く、長生きしてね』