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初詣、こんにちは(エッセイ)
本当は、お正月が過ぎてから行こうと思っていた初詣。
けれど、お察しの通り、お正月明けに体調不良に見舞われ、私の初詣の計画はガラガラと崩れ去った。
そこから体調が良くなるまでズルズルと長引き、結局行けのは2月に入ってから。
1ヶ月遅れの初詣である。
車で走る事、約30分。
古墳の上に建っている稲荷神社へと向かう。
けれど、いつも停めていた駐車場だった場所は、久し振りにやって来ると工事の方の作業スペースに。
仕方なく神社の近くにある専用の駐車場に停め、鳥居をくぐり、階段を上がり、お賽銭を入れて鈴を鳴らし……
以下省略。
私が行った、行っている神社は決して大きい神社という訳ではない。
けれど、この日もパラパラと参拝者の人がやって来て、この神社の人気を知る。
お参りを済ませ、帰ろうと登ってきた階段を降りていた時、静かに佇む一匹の猫ちゃんが。
「わっ…、気付かなかった……」
毛並みを見ると、年齢はうえめの薄三毛ちゃんで、耳は可愛いさくら耳。
静かに階段へ佇んでいた薄三毛ちゃんの側に、私は静かに座る。
私が座ってもびくともしない薄三毛ちゃん。
さくら耳だから、人に慣れているのかもしれない。
「こんにちは」
「…………」
返事はない。
顔を見たくても、少し俯いているせいか、見る事は叶わない。
「逃げないね」
「……顔が……見えないな……(泣)」
少しの、私と薄三毛ちゃんの時間。
撫でてみようかと思ったけれど、逃げてしまっては嫌なのでグッと我慢。
「お写真、とっても良い?」
そう薄三毛ちゃんへ聞き、スマホを向けると、それを察したのか、ヒョイッと階段を登って行ってしまった。
私が撮れたのは、階段を登ろうとする姿と、階段を登っている後ろ姿。
「と、撮れなかった……素早い……」
私が何かを放出していただろうか(笑)
けれど、こうして神社で猫ちゃんと会えるなんて、私はなんてついているのだろう。
静かに佇んでいた薄三毛ちゃんは、まるで稲荷神社の狐の化身の様。
「猫ちゃんに会えるなんて、ついてるな〜」
ルンルン気分で、私は残りの階段を足取り軽く下り、車の元へ。
車のエンジンをかけると、少し浮き立った心と共に、私は稲荷神社を後にした。
薄三毛ちゃん、元気でね。