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神保町の路地裏カレーに満たされる

日付を超えて寝た次の日の朝は体が重い。目が覚めると、外で雨が降っているのがすぐに分かった。

体を起こす。最近前日によるご飯を食べ過ぎるとそいつがまだおなかの中にいる感覚に襲われる。今朝はずっしりとしていた。おなかをさするわけでもなく正体はすぐにわかった。

カレーである。

昨日、学生時代の友達とカレーを食べに神保町を訪ねた。それぞれ職場も近かったから、仕事終わりに歩いて集まった。友達は大手町の方から来てくれた。

彼とよく好きなバンドや映画の時間を一緒にする。そしてその後カレーを食べる。

この日は羊文学の展覧会に行った。30分もかからず回りきって、40分歩いてあたりのカレーを探す。いつからか逆転しているように思えるんだよな。

カレー屋を選ぶ基準がある。

おしゃれではなく、盛り盛りのカレーを出してくれそうな店である。
それを「バカレー」と呼ぶ。個人的に愛をこめて。直感的にそういうのが出そうなお店を選ぶようにする。

路地裏を中心に見ていく。相場としては大体が狭い場所に店がある。

カレー、中華、喫茶、スポーツショップ、そして本屋が並ぶこの街の、大通りと大通りの間の道を抜ける。その左右に走る更に小さな道にも目を配る。

右、左、右左の左の路地裏でポツンと看板が光るカレー屋を見つけた。

ターバンを巻いた像の看板で、中にはインド人が一人で厨房をまわし、サラリーマンが2人いるだけだった。

店を見つけた瞬間にここだとなった。ただ神保町はカレー屋も多いので念のため周辺を一通り回ってみた。が、結局戻ってきた。本能みたいである。

別に店がおしゃれだったり、行列できそうな渋めの町中華のようなわけでもない。飾り付け要素もない質素な感じ。ここはこれまでの直感とスピリチュアル的な要素を信じる。

入店すると、最新式のタッチパネル式の食券機があった。スピリチュアルなポイントは減る。この手の機械が導入されているということはチェーン店ということもあり得る。どちらにせよ、初見であることに変わりなし。

選んだのは豚の角煮がごろっと入ったカレー。インド人が厨房にいるのに、意外と日本式のカレーである。やはり外枠だけで物事を決めるのはよくない。

注文についてはご飯はもちろんだが、ルーにも大盛りオプションがあったので、どちらも大盛りを選ぶ。ただご飯については、食べきれるか不安なので、最大量にはしなかった。

いろいろ押していき、最後に追加のトッピングを選ぶ。野菜系、肉系、そしてバカレーに欠かせぬチーズ系。しかし最近、ココイチでチーズをトッピングしたら、本当に食べきるのに苦労したので、ここではスルー。ただ友達にバカレーさを少しでも見せたい虚勢を張って、フライドオニオンを追加する。

この場ではカレーの魅せ方も評価の対象になる。2人しかいないけど。

食券を買って渡す。インド人がワンオペで回しているので、出来上がったらキッチンまでこちらが取りに行く食堂のようなシステム。席はカウンターのみで、厨房側とその反対の壁にそれぞれ5席ずつくらいが並んでいた。

2人に1つくらいのペースで水のピッチャーが置かれている。すぐに手とれる、痒い所に手が届く。カレーには水が不可欠。

水を飲みながら待つこと10分。まあまあ流ちょうな日本語で番号が呼ばれる。「83バンノカレーデス」

番号を呼ばれて立ち上がる。厨房とは反対に座っていたので振り向いてカレーへと向かう。と、すぐに心が舞い上がった。

本物のバカレーが現れたのである。この言葉は失礼にあたらない。

オボンいっぱいに広がった丸皿でのっぺりと広がった大きな皿に海みたいな広さで一面にカレーが広がっていた。大盛りにされたご飯は孤島のよう。

くつくつと笑いながら、席まで戻って友達に披露すると小さく大盛り上がりした。ジャンル違いのデカ盛りの登場である。

「まじかよ」、「なにこれ」、「インドカレーの大皿、小皿入れる用のやつじゃない?」、急に冷静な分析をして2人して納得。

早速いただく。見た目はドロッとしたカレーなのだけど、野菜っぽい旨味がかなり効いている。ルーは濃いのにどこか上品さを残して、かなりパクパクといける口。

なによりも思っている以上にルーの海は浅かったので、スプーンが止まらない。

おなかはあまり空いていないと思っていたのに、おいしかったから15分で食べ終わってしまった。

40分探し回り、15分で食べ終わる。ディズニーランドの人気アトラクションと同じ気持ちなのかもしれない。

互いに満足感を得て、お店を出て深呼吸。おなかいっぱいになった体でとりあえず東京駅まで歩きはじめる。夏の夜にしては涼しく、月曜の夜は人通りが少ない。

大きなビルが立ち並ぶ摩天楼。空が夜の光で明るく照らされる。夜は一定の時間以降は、明るさが変わらなくなる。

歩くのが楽しくなってきて、いいペースで東京駅通り越す。皇居の前には集団で走るランナーがちらほらといた。追い越されたり、すれ違ったりする。帝国劇場の前を通り過ぎたころには、摩天楼だったビル群には徐々に年季が出てきた。

東京駅を抜けて、新橋を抜けてついに浜松町まで歩いてしまった。大門駅近くの東京タワー。1日頑張ったとほめて、友達と交差点の前で別れた。

気になる映画を見つけたら、また声をかけると伝えて。







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