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ヤマシタが来た あとがき
拙作『ヤマシタが来た』にお付き合い頂き、ありがとうございました。
おかげさまで、締切間際にふーふー言いながらも投稿することができました。最終第五話の投稿ボタンを押すとき、なんだか緊張しました。ぎりぎりすぎて笑
読んで下さった方、本当にありがとうございました!
さて。このヤマシタを書いて以来、小説がなかなか書けないでいます。そろそろ書きたいと思っているんですが、あ!これだ!っていうヒラメキがな
ヤマシタが来た 第五話
「由香里!」
ヤマシタの大きな声に、由香里はまぶたをこじ開けた。目の縁にあった涙が溢れ落ちたあと、見えたのは煙が充満し始めている自分の部屋。由香里は驚いてベッドから飛び降りる。
「 やっと起きたな。一回寝ると本当になかなか起きないから焦ったぞ」
「なにこれ?!」
夢から醒めたはずなのに、今度は悪夢のなかに放り込まれたようだ。ゴホゴホせきこみながら由香里がたずねると、ベッドから飛び降りた
ヤマシタが来た 第四話
「ユカリ。今からでもケージ宅に避難した方がいいのではないか?」
部屋に戻り、早速部屋着に着替えてしまった由香里に、ずっと黙っていたヤマシタが口を開いた。由香里はチラリと、ベッドボードの上に仁王立ちしたヤマシタを見ただけで、羽根布団をばさりと開き、その中に飛び込んで丸くなった。
「まさかもう寝るのか? まだ五時前だぞ」
実際由香里はかなり疲れていた。全力で気を遣うといつもこうなる。そうして
ヤマシタが来た 第三話
丸の内のビルにあるカジュアルレストラン。こんもりと盛り付けられたボリュームあるサラダや、魚介類の味が染み出たクリームパスタも絶品。視線を外に向ければ、大きく取られた窓からは都心のど真ん中とは思えないほど、木々の鮮やかな緑がよく見えて気持ちがいい。
ショルダーバッグから小声で呼びかけてくるダミ声が聞こえてこなければ、最高のランチなのだが。由香里は思わずため息をつきそうになる。
「ユカリ! ユ
ヤマシタが来た 第二話
由香里にとって睡眠は至高の時間だ。寝てしまえば、嫌なことや面倒なことから切り離される。やたら重たい身体からも自由になって、どこかをフワフワ飛んでいくような感覚に包まれる。
暇な時はいつまでも寝てしまうけれど、三十二歳のいい大人だから、社会生活を営むために、時間通りに起きなきゃいけないこともよくわかっている。
遮光度の高いカーテンの隙間から、朝日が漏れ出すのを感じて由香里は軽く眉を寄せる。