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緑茶農家の限界

静岡県は日本有数の緑茶生産地です。近隣でもお茶畑は多いですし、お茶農家の方も多いです。そのせいか、毎年のように緑茶の生葉の買取金額の話は耳にします。直接買取の場に居るわけではないですから実際の生々しい金額ではなく、近隣農家さんとの雑談レベルでその年の出来の良し悪しとか生活レベルからの大凡の金額です。
ただ、先日知り合いの方から過去20年ぐらいの一般的な加工場の市場買取価格の推移を見せていただいて絶句しました。

20年前と言えば1番茶は高品質な所は手摘みが主で、網籠を背負って収穫する一般の人が【茶摘み】で想像する感じです。流石に服装は『茶っきり娘』ではなく、普通の服装ですが。
当時の価格は静岡は特別価格(静岡産ブランドがプレミアム)で、人件費使って手摘みでも採算が取れるぐらいの価格で取引されていました。
お茶は大体年3~4回ぐらい収穫されて、2番茶以降は茶刈機(当時は2人で手持ちが主流)で収穫している感じでした。当時のお茶農家の方は羽振りが良く、高級車に乗ってる人もいるぐらい儲かっていたと思います。

リーマンショック前辺りから何かのきっかけで静岡ブランドのプレ値が無くなり、1番茶の価格が最速収穫の鹿児島と横並びになった辺りから急落していき、手摘みから機械に変わり、茶刈機が手持ちの2人収穫から乗用茶刈機で1人になりと急速に変化していきました。鹿児島等の大規模農地では乗用茶刈機が入る平地が多いのに比べ、静岡は日当たり重視で斜面の農地も多く、乗用が入らない所も多いので価格低下に対して効率化等の対応が遅れていったのだと思います。この頃から『年寄り農家が年金食いつぶしてなんとか続けられるレベル』という話を聞くようになりました。

近年は出来が良くても価格が上がらないのが当たり前になってきており、特に今年に関してはトラック満載でも小遣い程度の価格になっていると聞きました。
リーフのお茶(煎茶)は完成品の売値が収穫前にある程度決まっており(大体が茶商が決める)、そこから茶商の利益や加工費やらを差し引かれた最後の残りカスが生葉の買取価格になるそうです。昨今の燃料高騰等の影響も大きいのか、今年は残酷なまでの価格になっているようです。生活できるかどうかというレベルではなく、肥料代やトラックの燃料代にすらならないレベルです。こんな状況ですら農家側が価格交渉する余地がほぼゼロというのもすごい話です。

年々価格の下落に歯止めが掛からないとは言え、流石に今年の価格は酷過ぎる様で、周囲の農家も『もう辞める』という声が多く聞かれます。閑散期の副業でやってるサツマイモやレタス等の野菜の方が本業になってきている人も多いと聞きます。市町等の産地や品種、販路によっても状況は異なるとは思いますが、世界的な需要の高くなっている抹茶とは異なりリーフ系緑茶のこの流れは変わらないのかなとも思います。静岡に住んでいる自分ですら普段飲むお茶はペットボトルが主体で急須で入れる事はほぼ無くなってますし。

抹茶等への品種替えを検討している農家もあるようですが、植え替えから収穫まで4年かかるし、抹茶にする設備にも多額の費用が掛かるそうで、農家がそこまで存続できるのか、供給増での抹茶価格低下の可能性も考えて行動しないと生き残れない気がします。

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