東大生の考える大学入試攻略の結論
誰の話か、は重要だと思うので
考えを述べる前に、軽く自己紹介をします。
1年でE判定から逆転合格した東大生で、「最短効率で偏差値60を突破する」というコンセプトの学習サービスを運営してます。
ということで、本題に入ります。
初めに、結論から言うと「受験は基礎を固めることに全力を注ぐべきだ」というのが、大学入試攻略の結論です。
「そんなのは当たりめえだろ」と言われそうですが、当たり前のことを再認識するのも百利あって一害なしだと思うので、お付き合いいただけると嬉しいです。
今回の文章では、「基礎」を辞書的な意味とは少し違う意味合いで使用しているので、基礎の定義について触れておきます。
ここでいう基礎は、「同じ入試問題を解くライバルの8割が習得している事項」の意味で使ってます。
簡単に言うと、ライバルが100人いたら80人が「これは基本よな」ってなるやつのことです。
定義を確認したところで、さっそく説明に入ります。
まず、大学入試の問題は、3つのパターンに分けられます。
①障壁がないもの
②障壁が後半にあるもの(Aが長いタイプ)
③障壁が前半にあるもの(Bが長いタイプ)
ここでの障壁は、答えに辿り着くまでに基礎では越えられない壁です。
逆に言うと、基礎を習得していれば、障壁手前まではスムーズに解き進められます。
つまり、基礎で①〜②のAまでは解けるわけです。(③はAが短いため省く)
よって、
①が多くの受験生が最後まで解ける問題
②が多くの受験生が途中まで解ける問題
③が多くの受験生が解けない問題
です。
次に、大学入試の問題構成を考えます。
大学の入試難易度によって、①〜③の割合が変わります。
低難度の入試では①の割合が高く、②が少し、③はほとんどありません。
そして、そこから入試難易度に比例して②が増え、③がちょびっと増えていきます。③が少ないのは、多くの受験生が解けない問題ばかりでは、トップ層以外の選抜が困難になってしまうからです。
(便宜的にまとめているので、当てはまらないパターンの入試もあります)
ここでポイントなのは、合格するためには障壁を超える(②のB〜③を解く)のが必須ではないということです。
なぜなら、大学入試では、満点に近い得点は要求されないからです。
大学入試の合格ラインは得点率が大体6~7割です。(①の割合が高ければ合格ラインも上がるように、①〜③の割合によって若干変動します)
そして、大学入試の問題はほとんど①、②であり、基礎で①〜②のAまでは解けるわけです。
つまり、よっぽどトップレベルの競争でない限り、障壁の手前まで確実に辿りつく基礎力があれば十分に合格ラインを超えることは可能です。
逆に、①~②のAを取りこぼしてしまうとどうでしょうか。
受験生の得点分布は合格ライン周辺に最も集中します。
つまり、競争相手はトップ層ではなく、合格ライン付近に集まる多数派の中間層です。
そのため、競合となる多数派と比較して不利にならないことが最も重要であるということです。
多数が解ける問題→失点した場合、一気に平均点を下回ってしまう
少数しか解けない問題→失点しても相対的な差は小さい
という入試の構図があるため、①~②のAを取りこぼすことは、非常に不利だと言えます。
つまり、入試とは、他の受験生が解けないような難しい問題(②のB〜③)を解いて8割以上を狙うゲームではなく、むしろ、他の受験生も解ける問題(①〜②のA)を確実に解き、取りこぼしを最小限に抑えるゲームだと言えます。
ここまで、基礎を固めることで合格可能なラインに到達できる理由を述べてきました。
ここからは、なぜそれ以上のいわゆる「応用」にそれほど多くの時間をかける必要がないのかの理由について説明します。
もちろん障壁を突破して、難問を解けるに越したことはありませんが、受験勉強は、応用に取り組むほどコスパが悪くなります。
その理由は大きく2つあります。
基礎と応用が1対1に対応していない
1つの基礎に対して、それを発展させた応用は2つ、3つと複数存在します。そのため、すべての応用を網羅しようとすると、労力が格段に増えます。応用は習得のハードルが高い
応用は難易度が高く、習得に多くの時間を要します。数が多い分、出題頻度が下がる
応用は種類が多いため、1つ1つの問題が実際の試験で出題される確率が低くなります。
つまり、レベルが上がるにつれて、高難度の応用事項を数多く習得していく必要がありますが、入試本番で出題されるのはたった数十問に過ぎません。そのため、応用問題に取り組むほど、本番の得点を上げるための学習コストがどんどん上がってしまいます。長い時間をかけて応用を習得したとしても、それが本番で出題されなければ意味がありません。
そのため、満点に近い点数を取るには、早い段階から大量の時間を投下し、基礎から応用まで満遍なく習得してきたエリート受験生でなければ非常に難しいのです。
逆に言えば、基礎は、習得のハードルが低いにも関わらず、出題率が圧倒的に高く、数も少ないです。
よって、基礎を徹底的に磨くことこそが、最も効率よく得点を上げる方法であり、学習コストが最も低い行為だと言えます。
以上が、大学入試では「受験は基礎を固めることに全力を注ぐべきだ」に対するの説明となります。
多くの受験生は、基礎が不十分な状態で応用に手を出してしまいがちです。
周囲の受験生が難易度の高い問題集を進めている姿を見たり、メディアやSNSで難しい参考書をお勧めされることで、「もっとレベルの高い勉強をしなければ」と先走ってしまうのはわかります。(自分自身もそうでした)
ただ、応用とは、基礎という幹から枝葉のように広がっています。
そのため、応用をすべて網羅しようとすると、膨大な時間が必要になります。
時間が限られた受験生にとって、応用に取り組んでも、出題率の高い基礎(幹)が疎かになり、出題率の低い応用(枝葉)の一部だけを習得してしまうという事態が起こりがちです。
そして、それを裏付ける例として挙げられるのが、共通テストです。
共通テストは、①の「基礎では越えられない障壁がない問題」の割合が非常に高い試験です。
つまり、基礎がしっかり固まっている受験生にとっては、試験形式に慣れさえすれば、そこまで対策に苦労することはないはずなのです。
しかし、多くの受験生が共通テスト直前期になっても点数が伸び悩んでいます。これはまさに、先ほどの図のように基礎を取りこぼす事態が発生しているからです。
まとめると、
大学入試の特性上、基礎を取りこぼさなければ合格ラインは超えられる
基礎を磨くことは、習得のハードル・出題率・数の観点から最も効率よく得点を上げる行為である
ということになります。
各大学入試の特性は様々であるため、特性に応じて戦略は変えていく必要がありますが、基礎を疎かにしたまま応用に時間をかけることは基本的に非効率です。
応用に時間をかけるのであれば、基礎との兼ね合いを見ながら戦略的に学習するべきです。
大学入試を突破するためには、もちろん地道な努力が欠かせませんが、その努力を効率的に活かし、成果を何倍にも引き上げてくれるノウハウもまた不可欠です。
少しでも皆さんの学習のお役に立てれば幸いです。
次回は、「基礎を固めるにはどうしたらいいのか」という話を書く予定です。