昭和歌謡カムバックのために起業する

昭和歌謡では、酒飲みで女たらしのろくでもない男に心惹かれる女がたびたび登場する。
そんな男別れちゃいなよと思いながらも口ずさんでしまうのは、下衆な相手とそれを好きになってしまった自分を上から眺めて、
「それもまた仕方ないわよね」とため息交じりに全てまるめて許してしまっている女のスタンスが好きだからだ。
主人公の根底に寛容さを感じて、 大人だなあとうっとりする。

大人のかっこよさという点でいうと
「男はつらいよ」の中で寅さんが、
 「それを言っちゃあおしめえよ!」と、相手の直接的な物言いをなじるけれど、
言っても仕方のないことははじめから口にしないとか、
発言するとしても身も蓋もない言い方は避けて
ユーモアに落とし込んで伝える、などというのもしびれるほど好きだ。

そういう人間同士のやりとりを、歌や物語で楽しむ私だが、
最近、そんな奥行きのある表現を楽しんでいる人って
どれくらいいるのかな……と不安になることがある。
歌謡曲は、全体のバランスは洒落ているが歌詞が単純で幼いと思うものが多いし、インスタやYoutube、テレビから流れてくる表現は直接的で分かりやすすぎる。
表現に「おもむき」を感じてほくそ笑むという時間が一日の中でどれだけあるだろうか……。

ああ、そんなことを愚痴に思って私も歳取ったんだわ草、
などと書かなければならない時代かと思う一方で、なんとかその潮流に抗えないものかという思いがある。
表現の工夫によってコミュニケーションを高次のものに押し上げようとする、その挑戦心が私は好きだし、それを受け入れ楽しめる世の中であってほしい。

私になにができるだろう、と考えた。


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