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【連載小説】リセット 4
美代は寡黙な女性であった。
結婚後、芳樹の仕事帰りが毎晩のように遅い日が続いていた。甘い新婚生活を夢見ていた美代は、毎日寂しい気持ちを抱いて過ごした。
五歳年下の弟の事件が大きな棘となって美代を悩ましてもいた。
夫婦の営みもほとんど無いに等しかった。ついには会話すらも減っていき、美代は孤独と不安感に襲われた。夫婦として芳樹と暮らしていけない。これ以上悩んだら自分を見失ってしまう。
そのような折、美代は友達の勧めもあり、夜は有楽町の料理店で働き出した。そこで常連客の中年社長の目に留まり、男女の関係に進展した。外泊することが多くなり、芳樹の心配をよそに、その社長にのめり込んでいった。
中年社長は、離婚歴のある独身男性であった。美代は芳樹との生活がもはや瓦解したことを感じた。
一度こじれた関係の修復は不可能だと二人とも早合点した。忍耐の欠如なのか。
二人の話し合いの結論は、破局の道であった。
離婚後の芳樹は、自暴自棄になった。それでも仕事だけは続けた。世の中すべてが嫌になった時期もあった。
この人生一度だけだ。好きなことをやって楽しく生きていこうと思ったりもした。その時、松江教授夫妻から、激励を受けた。
そして芳樹は、自分の心の泥沼から這い上がり始めた。時間は掛かったが、一歩一歩這い出し始めた。