黄金道路 #11
ここで、百人浜のことも記述しなければならない。
岩礁と断崖の多い襟裳岬周辺で、ここだけはなだらかな砂浜である。
展望台駐車場の脇にある「一石一字塔」、この浜と塔とにまつわる話は、様々伝えられている。
百人浜という名前はずいぶん古くからあったようだ。
遥か昔に書かれた書物の中にも、その名前がある。
どうして百人浜と謂うようになったか? それは、
今から二百年ほど前の1816年(文化13年)、南部藩の御用船が東エゾ地に向かう途中、大暴風雨に遭い、この沖合いで遭難したそうだ。
そのとき百人余りが御用船に乗りこんでいて、なんとか浜まではたどりついたが、当時、秋も終わりのころで、寒さと飢えとで、とうとう一人残らず息絶えて、砂に埋もれてしまった。
翌朝これを見つけた浜の人たちは、この惨事を悼み悲しんだ。
冥福を祈り、ここに供養の碑を建てた。
それから、だれともなく、ここを百人浜と呼ぶようになった。
いまも嵐の夜には聞こえてくるだろう。
あの海の底から呼ぶような、叫ぶような音・・・を。
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