黄金道路 #2
アイヌは日本の先住民族として漁、狩猟や植物採集を生活の糧とし、北の大地の大自然の中で暮らしてきた。
カムイ(神)はそれぞれの役割を果たすため、自然やモノに姿を変えてアイヌの世界にいて、お互い支えあって生きているという考えである。そしてアイヌはカムイの一部として住まわせてもらっているといわれている。それが自然の中で生きてきたアイヌの精神だという。
現在に言い伝えられているアイヌの伝説がある。
むかしむかし、幌泉の村に一人の美しいアイヌ娘がいた。
この娘は顔がきれいなだけでなく、とても気だてのよい娘だった。
コタンの若い者たちは、みなこの娘に思いを寄せて、ひそかに想い悩んでいたそうだ。
しかし、娘は、だれにも目もくれなかったそうだ。
その頃、幌泉の山の奥には人間に化身したキムンカムイ(熊)の兄弟がすんでいた。
兄のトヤイピンナはその美しいアイヌ娘にほれていた。
そしてその美しい娘はトヤイピンナと結婚してしまった。
それを見た弟のサルイサンは「負けるものか」とばかり、えりもと様似の境を流れるニカンベツ川の美しい娘を嫁にした。
この嫁もまた、たいへんきれいな娘だったそうだ。
やがてサルイサンには、熊の血統を引いた子供が大勢生まれた。
それ以来、山へ行って熊に出くわしたら、「わしはサルイサンの血を引くものだ」と叫ぶと、熊はスタコラ逃げて行くようになったという。
えりも町役場商工観光係作成「えりも拝見」から引用