とっておきの怖い話。

今回の話もオカルトではない。

それゆえに恐ろしい話だと思う。

ただ、関係者が特定されないよう
フェイクは多少いれてある。
そこは予めご了承いただきたい。

だいたい、本当の話。

事件、というか
事故、は
単なる交通事故による
死亡事故の話であった。

それは私にとっても
縁もゆかりも無い地方都市でおきた
「よくある事故」
でしかなかった、表面上は。

横断歩道のない所で
幼い娘が道路に飛び出して
それを止めようとした
父もろとも父娘が
自動車に轢き殺された

という
痛ましい事故であった。

道路の向こう側に手を振る
母親がいて
娘が
「ママー!」と
道路を渡ろうと
飛び出したらしい。

とっさに、止めようとした
父親もろとも
車に衝突した。

ほぼ即死であったという。

母親であり、妻である
彼女からしたら
目の前で夫と娘が
轢き殺される光景を
見てしまったわけである。

これだけならば

誰もが心痛める悲劇として
話を受けとめたであろう。

問題なのは
事故を起こした
運転手と
被害者の女性との
関係。

ここでは仮に
被害者女性をB子としよう。

この二人の関係が
特殊だった点にある。

もう、かれこれ
30年以上前の話になるが
とある地方都市で
イジメを苦に
中学生が自殺するという
痛ましい事件が起こった。

地方都市ならば
よくある隠蔽体質と
イジメ加害者たちが未成年
だったこともあって

イジメ加害者たちが
刑事責任を問われることは
なかった。

ひとを一人、自殺に
おいやっておきながら
犯人たちは
まんまと逃げきった、

ハズであった。

あのイジメ自殺事件からは
もう20年以上もたっているのに
なぜか、あのイジメ自殺事件の
関係者が
不可解な死を遂げるという
案件が相次いだ。

最初のうちは
単なる偶然だと思われていた。

が、亡くなった人たちは皆
30年前のイジメ自殺事件の
加害者関係者ばかりであった。

加害者本人が亡くなるならば
ともかく
加害者の配偶者や子息が
事故や病気で
次々と死んでいく。

果たしてこれは偶然か?

あげく
B子の
夫と娘は
目の前で轢き殺された。

これは偶然なのか?

そう思うには
それなりの理由がある。

30年前、
イジメを苦に
自殺した子のことを

仮にA子としよう。

B子の夫と娘を轢き殺したのは
A子の姉であった。

A子が自殺した日
A子が通う中学校では
臨時の学年集会が開かれた。

校長がいたましい顔で
「、、、A子さんがなくなりました」
と言った瞬間

「プッ」と笑ったのが
B子であった。

訃報をきいた当日

B子は
「あんなんで自殺すんだぁ」
と笑いながら言ったそうである。

A子が自殺した当日
「A子の遺体って目玉飛び出てたんだって」
「死んだら負け」
「死人に口無し」
「亡くなった子の分まで幸せになりまーす」

とか軽口を叩いていたそうである。

A子の姉は当時高校生だったが
精神的にまいってしまい
高校を中退し
引きこもりになってしまったという。

それから年月がたち
あの事件は風化して
忘れ去られていたものと
思われていた。

事件からもう30年がたって
地元の誰もが
「あのこと」を
忘れ去った、という
時期の出来事であった。

横断歩道のないところを
いきなり
飛び出して渡ろうとしたがために
起きた交通事故とはいえ

B子は道路の対岸にいた
夫と娘の前で手をふって
応えてる最中に
娘が道路へ飛び出し
それを止めようとした
夫も、もろとも

轢き殺された。

轢き殺した運転手は
かつてB子がイジメ自殺においこんだ
A子の姉であった。

これは
殺人なのか?
過失致死なのか?

法律でいうならば
被害者が
飛び出してきた事故なので

自動車運転
過失致死傷罪
という扱いになる。

A子の姉は
事故当時
末期がんで

余命宣告を受けていた。

両親はすでに他界しており
本人も未婚で
天涯孤独の身であった。

殺人罪や
危険運転致死罪ではなく

飛び出し事故として
起訴されたが
判決を待たずに
A子の姉は亡くなった。

目の前で
夫と娘が亡くなる瞬間を
目撃したB子は
鬱病になり

それからしばらくして
自殺した。

遺書には
「A子、ごめんなさい
もう赦してください」
とだけ

短く書いてあったという。

A子の姉が
したことが
意図的な殺人だったのか、
自動車運転中の不幸な事故
だったのか?

それは、わからないまま
彼女は他界した。

が、彼女は
亡くなる直前
こう言ったという。

「A子、アタシ、やったよ。」


いいなと思ったら応援しよう!