咳する声なんかをまだ覚えている
んんっ!
て喉のたんを払うような声が散歩中後ろを歩く人から聞こえて驚いた。
ひとつ目は突然聞こえたその声があまりにも元カレと同じ声で驚いた。
もうひとつ目は咳の仕方なんかを覚えてることに驚いた。
別れてからもう半年も経っている。
声を覚えてるのはいいとして、そんなのはさすがに忘れなさいよと自分でツッコんでしまった。
はやくそんな事も忘れてしまいたいなあという気持ちと、去年の今頃の自分からしたら訳わからない所に来てしまったような気持ちがたまに交じる。
元カレと数年を向き合ってきた中で彼のお陰で出会えた感情はたくさんあったけど、別れた後ですら知る感情があることにも驚く。
こんなに時間が経ったあとで、こんな風に体の内側がざらりとした感覚になるなんて思ってなかった。
浮気されて、ネトストされて、人生0になったような気持ちにされて、そんな相手なのに幸せを願ってしまうのも歪だけど、感謝がやっぱり一番大きいのかなあ。
人を嫌いになるって簡単にできないよね。いいところも悪いところも見たうえで一生一緒にいたい気持ちでいたわけだしさ。
ふと、記憶の中の「わたし今が人生で一番幸せ」と思ったいくつもの瞬間のどれかに戻りたくなることもある。
今のあの人ともう一度やり直したいわけではなくて、時間を超えたあの時のその瞬間を味わいたいだけなんだけど。
これから先、あの居心地の良さを再現するために、恋みたいな情みたいな愛みたいななにかを育むのでしょうね私は。
今日は寒い。
ひとりが寂しい日だからカフェラテでも飲みに夜の散歩行こうかな。
ぽかぽかのラテ飲みたいな。