自閉症(発達障害)の理解④

今回のテーマは「子どもに伝えること」に焦点を当てます。
この「子どもに伝える」という行為の目標を整理していきます。

まず最初の目標は、メッセージをそのままの意味で伝える方法を考えることです。特に自閉症の子どもたちは、相手の意図を文字通りに受け取ることが得意ですが、言葉に含まれるニュアンスを読み取るのは苦手なことがあります。

例えば、子どもがおもちゃをたくさん広げた時、「あら、いっぱい遊んで」と言うと、子どもは文字通りに受け取り、「うん、いっぱい遊んだよ」と返答します。これは正解なのですが、実際は「片付けてほしい」という親の意図があったとしても、そのニュアンスは子どもには伝わりにくいです。

自閉症の子どもたちの場合、言葉が理解できたとしても、その裏にある意図を理解するのは難しいです。そのため、言葉と意図がずれてしまうことがあります。もし片付けてほしいのであれば、「そろそろ片付けなさい」と直接伝える方が理解しやすいです。

ただし、子どもがすぐに素直に行動するわけではありません。わかりやすく伝えたとしても、子どもが親の指示に従わないこともあります。次に考えるべきは、子どもが行動に移すための方法です。例えば、具体的な見通しを示すことが有効です。歯医者に行った後にアイスクリームを食べられるなど、行動を促すための動機付けが重要です。

次に、視覚支援の活用について考えます。
ただし、視覚支援をしたからといって、必ずしも子どもが素直に従うわけではありません。
視覚支援は、言葉で伝えるメッセージを別の方法でわかりやすく伝えるためのものです。
子どもが受け入れがたいものや、したくない活動であれば、拒否することもあります。

続いて、子どもに伝える際の具体的な方法について話します。まずは、簡潔な文章を使うことです。
私たちの話す言葉は、長くなりがちですが、自閉症の子どもたちは情報を整理するのが苦手なため、長い文章になると理解が難しくなります。
したがって、必要な情報を短い文章で伝え、理由が必要な場合は後で説明することが有効です。

また、伝える内容を整理することが重要です。
たとえば、褒めるときは褒めるだけにし、注意を促すときはそれだけに絞ることで、子どもの理解を助けることができます。
自閉症の子どもたちは細部に注目する傾向があるため、情報が混在していると、大事なポイントが伝わりにくくなる可能性があります。

伝え方の工夫の二つ目のポイントは、「具体的に伝える」ということです。

「仲良く」「優しく」「ちゃんと」のような状態を表す表現は、自閉症の人にとっては、それを具体的な行動に置き換えて理解することが苦手です。
例えば、「兄弟で仲良く遊びなさい」という場合、それが「おもちゃを独占せずに半分ずつ使ってね」という具体的な行動に変換されることが必要です。
このように、何をすればよいのかを具体的に伝えることが大切です。

例えば、走り回っていて力加減が苦手なお兄ちゃんがいる家庭で、新しく赤ちゃんが生まれました。家族は、「ベビーベッドの中に手は入れずに、外から赤ちゃんの様子を見て」と具体的に伝えることで、お兄ちゃんが赤ちゃんに「優しく」する方法を理解しやすくなります。

また、「ちゃんと片付けてね」という指示をする場合には、「本は一冊ずつ立てて置いてね」といった具体的な行動に変換して伝えることが大切です。
さらに、「後でね」という曖昧な表現も、「5分後にしてもいいよ」といった具体的な指示に変えることで、子どもが理解しやすくなります。

肯定文の使用も重要です。「イライラしたからって物を投げないで」という指示よりも、「イライラしたときは一度お母さんのところにおいで」という具体的な代替行動を提案することで、子どもがどう行動すればよいのかを明確に伝えることができます。

また、イライラを感じた時に、子どもがスッキリするための具体的な方法を一緒に考えることも重要です。例えば、テラスで大きな声を出してみる、ボールを蹴ってみる、静かな場所で休憩するなど、さまざまな方法を試して、子どもが一番スッキリできる方法を見つけることが大切です。

このように、自閉症の人たちには、抽象的な表現を具体的な行動に置き換えて伝えること、また、代わりの行動を提案することが、理解しやすく、受け入れやすい伝え方となります。

ただ「ダメ」と言われるだけでは子どもは行動を変えることができず、代わりの行動や方法を教えることが重要だということです。

また、子どもが現在している行動からヒントを得て、その子に合った対応を考えることが大切です。そして、子どもたちに対しては、ポジティブな言葉を使って褒めることで、彼らが自己理解を深め、自信を持つことができるようにサポートすることが重要です。

多くのお子さんが療育を受けており、その中でスケジュールを活用していることが多いと思います。
スケジュールは、療育だけでなく、家庭でも苦手なことの後に好きなことができるというメッセージを視覚的に伝えることで、子どもたちの理解を助けます。
療育に通うことは、このような取り組みが成功に繋がりやすくなるという意味でもあります。
カードを無理に作らなくても、インターネットで様々な素材がダウンロードできますので、それらを活用して子どもたちに見せることも一つの方法です。

特に小学校高学年や中学生になると、様々なものに対して選択肢を提示することが重要です。
選択肢を示して、その子が自分でできそうなことを選べるようにすることが、自己選択や自己決定を支援する上でとても大切です。

子どもたちにメッセージを伝える際には、具体的に何をしてほしいかを考え、それに基づいて視覚的な方法で伝えることが有効です。

例えば、日々の活動の手順を示したり、排泄の手順をわかりやすく示したり、ペーパーを取りすぎないように壁にテープを貼ったりすることで、子どもたちに明確な基準を示すことができます。
こうした視覚的な支援は、言葉で説明するだけでは伝わりにくい場合に特に有効です。

今回ご紹介した内容を整理して、子どもたちにとってわかりやすい方法で伝えていくことが重要です。

これには、絵を描いたり、写真を撮ったり、動画を活用したりする方法があります。

親御さんや教師が具体的に何を子どもに伝えたいのかを考え、それに基づいて視覚的な方法で伝えることが、子どもたちにとって理解しやすい方法となります。

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