神田川の秘密30 肥後・細川庭園でおうすを頂いた。畳の部屋から景色を眺めるのもグッド
三十一の2 肥後・細川庭園でおうすを頂いた。畳の部屋から景色を眺めるのも悪くない
庭園の風情はなかなかだった。
大池、中池、小池を中心にして、築島有り、十三重塔有り、滝が有って池には橋も掛かっている。広大な庭園とはいえないが、森に導かれる遊歩道と緩い傾斜の段差のある道は老人の散策にもってこいの感じがした。随所、随所にベンチがあって、一息つける。奥まった一角に細川家の所蔵品や歴史資料を展示する永青文庫がある。永青文庫はその後訪ねた芭蕉庵、野間記念館と同様、新型コロナ蔓延緊急事態宣言の下、閉鎖されていた。
庭園を一周して中門に戻り、その傍に松聲閣という黒板塀を張った木造二階建ての建物に入った。ここは閉鎖されておらず、部屋に上がって抹茶にお菓子をいただいた(500円)。抹茶もさることながら、座敷に座って庭園を眺めると、細川家の何某が、招いた客を相手にここで酒でも飲んだのかと想いが湧いてくる。
肥後細川庭園で気分を一新したが、ゆっくりし過ぎて筋肉が弛緩してしまった。
老人の体は一旦緩んでしまうと再起動がしにくい。駒塚橋まで歩いて、その先を断念した。駒塚橋の角に関口芭蕉庵があるのだが、コロナで閉鎖されているし、野間記念館へ行くには芭蕉庵前の胸突坂を上がらなくてはならない。階段道路で、名前の通りの坂道が続いている。回れ右して都電の早稲田駅へ向かった。何十年ぶりかに見た都電にもう一度乗ることの方を選択したのだった。
駅も都電時代の面影を残している。電車もスピードがさほどないから街の景色がゆっくりと窓を流れていく。今は何もかもが急ぎ過ぎている。人が駆け足するよりちょっとだけ早い速度。それを日常の生活に取り戻す必要がある。というと、すぐにスローフードとか、田舎生活へと激しく切り替えることを叫ぶ人もいるが、それもまた急ぎ過ぎだよね。
トップギアをいきなりローギアに入れたら何もかもが狂ってしまう。靴を脱いで座席に膝をつき、窓にかじりついてお外を眺めたい気分に浸りながら、川旅老人はJR 大塚駅前までの都電を楽しみ、帰宅したのだった。