5/14 『まんが訳 酒吞童子絵巻』を読んだ
面白かった。
パラっと開いて即座に「こりゃ面白い」と思って買った本。酒吞童子、源頼光、安珍と清姫など、キャラクターは某/Grand Orderで名前だけ知っていたものの原典については殆ど知らなかったのを、これで一気にお手軽に知ることができると目論んだのもある。
そして直感どおりこの絵巻物を「まんがに訳す」という試みは大変に面白いものだった。絵の一部を切り取ってコマに落とし込み、部分部分を強調して見せたり、人物の顔を順番にアップで並べてサスペンスドラマ的緊張感を生んだり。語られる物語に対して圧倒的に絵が少ないのに、そう感じさせない。描写の空白を埋めるのは他ならぬ「コマ」であり、元の絵数が少ない分、その大小、多寡、かたちなどが実に雄弁に物語る。コマこそマンガをマンガたらしめるものであったか。コマとは音であり、動きであり、言葉であった。
題材となった物語自体も面白かった。『土蜘蛛草子』とか、出てくる妖怪たちは妙にチャーミングなものもあれば、顔だけ異常にデカい女とか急に不気味だったり、飽きない。
あとちょっと不思議だったのは、人物、妖物などが柔らかいタッチで描かれてるのに対して、背景美術……特にお寺や屋敷などの建物はシャープな線でまっすぐ、正確に描かれていることだった。画風がまったく違う。アシさんが描いてたのかな。
題材となった絵巻の全体図はWeb上で見られるようなので、そちらも見てみたいところだ。