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RAGE 2022 Spring はリアル有料eスポーツイベントの成立を意味するのか(前編)

株式会社CyberZ、エイベックス・エンタテインメント株式会社、株式会社テレビ朝日が運営する国内最大級のeスポーツエンターテインメント「RAGE(レイジ)」は、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の有観客イベント「RAGE VALORANT 2022 Spring」を5月7日(土)、8日(日)の両日にわたって開催しました。事前のチケット販売が数時間で完売し、当日の総来場者数は13,000人を超え、日本における有料eスポーツイベントとしては史上最多の動員数を記録しました。

https://www.famitsu.com/news/prtimes/202205/09260901.html

久しぶりに開かれた有料観客オフラインイベント


 このニュースは多くのeSports関係者を驚かせたといってもいいだろう。コロナが始まって以来、国内外問わず有料のリアルイベントはほとんど開かれておらず、eスポーツもその渦中にあった。ほとんどのイベントは公式・非公式問わずオンラインに移行し、2020~2021年はその中でどうやって収益化していくのかということを模索したという年であった。基本的にはゲームはコロナ禍によって良い影響を受けた部類だったといっていいが、eスポーツでは必ずしもそうであったかというと、どちらかというと否定的だろう。
 その中で、「RAGE VALORANT 2022 Spring」は久しぶりの有観客・有料イベントであった。そして、過去の記録を更新した。何がこれらの要因であったのだろうか。今回は有観客eスポーツイベントの過去と現状を含めて、今回の出来事をどうとらえるべきか考えてみたい。

有料イベントの過去推移

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1qJAOEnKNpfaJLcdZlXWnGzWNJmsHBd_DpZ-lKkuXHUM/edit?usp=sharing

 まず、過去の事実の確認からというわけで、過去に有料で開催していたeスポーツのイベントに関してまとめてみた。ただ、オンラインイベントを「国内・海外」と分けるのは厳密にはおかしいし、そもそも「eスポーツイベント」と呼んでいいものか迷うものもあったり、その基準自体がかなり曖昧にならざるをえなかった。
 比較の基準となる数値ですら何がよいのか迷う状況であるが、実態と最も近いのは、「同時視聴者数」ではないかと思っている。これは、eスポーツが、熱量が大切なリアルタイム性が大事なコンテンツであるという推測から選んでいる。ただし、昨今はミラー配信も同時視聴者数に加えるケースが多く、この項目ですら過去との比較は難しい。つまり、測定の比較として明確に正しいとはとても言いづらいということなのであるが、一方で幾つか傾向として読み取れることもある。

タイトルの影響力は大きい


 まず、集計結果を見ながら感じたのが、集客に最も強い相関性がありそうなのがやはり「タイトル」であることだ。同じRAGE内のイベントであっても、同時視聴者数の比較をすると、タイトルによって大きな違いがあることは読み取れる。『RAGE 2022 Spring』と『2022 VALORANT Champions Tour』は大会の性質は全く異なるが、同時視聴者数ベースでどちらも国内最大規模のオンラインイベントとなっており、これは『Valorant』というコンテンツにおけるものが大きいといえるだろう。
 次に来場者数で見ると、有料のリアル系eスポーツイベントで過去最も人を集めたのは『JAEPO×闘会議×JeSU 2019』であることが分かる。ただし、同大会はeスポーツのスペース以外もあれば、他のイベントと合同のイベントであり、『RAGE 2022 Spring』のような1タイトルのみのイベントではないことは注意するポイントである。その中で、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』の存在は大きく、来場者を呼び込めた理由の一つには同タイトルの影響力はあるだろう。『EVO2020』においても、同タイトルは採用されているが、『EVO2019 』と比較すると、本タイトルの影響力の強さがうかがえる。
 なお、有名な話であるが、任天堂は「eスポーツ」という呼称はせず、JeSU(日本eスポーツ連合)にも加盟していない。また、過去幾つかの公式の大会を行っているものの、海外のeスポーツシーンのような多額の賞金がある大会も実施はしていない。結果として、『スマブラ』のコミュニティは特徴として国内外問わずに自主性が非常に強くなっており、『スマブラ』勢が参加型イベントであることを重視する傾向へとつながっている可能性はある。

発売7年が経過するもランキングは2位

 そういう意味では、『X Flag Park 2021』は、上記のような流れとは少し異なる。本イベントは、『モンスターストライク』のみのイベントではあるが、競技イベント以外も含んだ複合イベントである。ただし単独タイトル では有料のeスポーツイベントとしては最大のイベントとなる。これだけの集客を行えた理由は、『モンスターストライク』の人気の高さであろう。

 一方で、気になる点としては、『モンスターストライク』は実況という点では、あまり強い影響を持っていないように思われる点だ。下記の表は2021年5月~2022年4月にかけての日本の配信実況のトップ10を並べたものだが、
『モンスターストライク』の名前は登場していない

2021年5月~2022年4月

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1voxLZgREbdo6VrEuSA7YGwliPAxbCj4Ixmnb-KKsuVM/edit?usp=sharing

 要因として考えられることとしては、配信技研のデータはTwitch,Youtube Live, Mildom, OpenRecといったPC向けの配信プラットフォームを中心に取っており、ツイキャス・Mirrativeのようなアプリ向けの配信プラットフォームは反映されていないケースである。また、動画配信・動画実況は比較的新しい文化であり、世代層と合っていない可能性もある。

Instagramのライブ配信やニコニコ生放送も比率が高い
視聴者層・配信者も若いほど比率が高い

 最後に『Apex Legends』にも触れておきたい。2020年~2021年において、日本の実況・vTuber界隈において最も人気のあったゲームは何かとなれば、やはり『Apex Legends』と言えるだろう。21年5月に行われた『Crazy Racoon Cup Apex Legends 第5回』は同時視聴者数70万人であり、国内最大級であったことは間違いない。実際にデータも示しており、日本の実況配信ランキングでは、2021年5月~2022年4月にかけて平均順位は脅威の1.17位。ほぼすべての月で1位をとっている。
 一方で、Twitchのランキングのみのランキングと比較すると絶対的な王者でないことが読み取れる。人気としては『Valorant』と首位争いをしているという感じである。これらの要因は、『Apex Legends』の牽引役だった『Vtuber』がYoutubeを中心に活動をしているということがあげられるだろう。
 なお、完全な予測であるが、今後日本では『Apex Legends』の人気が(特にeスポーツ周りでは)落ちていくのではないかと予想している。それは、『RAGE 2022 Spring』が成功したこととも関係があるのだが、一旦ここで区切る。

(続く)

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