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感情と理性の間で揺れる②

前回、「理性と感情のバランスをどうやって取るか?」というテーマで、自分の感情を認めることの大切さについて書いたのですが、改めて「そもそも感情って何なんだろう?」という問いを立てて考えてみます。

僕たちは普段、「怒り」「悲しみ」「喜び」「驚き」といった感情に振り回されることもあれば、逆に押し殺そうとしてストレスを抱えることもある。でも、感情そのものは人間にとってどんな意味を持っているのでしょうか?

感情の正体って何?

たとえば、「仕事でミスをして落ち込む」「人から褒められて嬉しくなる」などは、日常的な感情の変化ですよね。ここで面白いのは、同じ出来事でも、人によって感じ方や捉え方がまったく違うこと。ある人はミスを「成長のチャンス」として燃えるかもしれないし、別の人は「自分はダメだ」と自信を喪失してしまう。つまり、感情は出来事そのものではなく、「自分の中でどう受け止めたか」に大きく左右されるものです。

そう考えると、感情って「今の自分がどういう状態にあるか」を教えてくれる指標のような役割があるんじゃないかと思います。何に対して怒りを感じるのか?どんなことで悲しくなるのか?そこにこそ、自分の価値観や大切にしているものが色濃く表れている。感情は単なる“おまけ”ではなく、自分の本音に気づくためのセンサーのような存在なんだなと感じます。

感情を押し込めるほどこじれていく

それでも、ネガティブな感情はできれば避けたいと思う人が多いですよね。悲しみはツラいし、怒りは疲れる。それに振り回されるのは嫌だから、なるべく感じないようにしてしまおうとする。でも実は、感情を押さえ込むほど、僕たちは苦しくなりやすい。なぜなら、感情はどこかで必ず“顔を出す”からです。

前回の話にもあったように、理性的な人がある日突然ドカン!と爆発してしまうケースは珍しくありません。普段から「怒り」を感じないフリをしてやり過ごしていると、溜めこんだエネルギーが限界に達したときに、一気に噴き出してしまうから。「あんなに冷静だった人が…」と周りが驚くのも、本人が自分で気づかないうちに“大きくなりすぎた感情”をずっと抱えていたからなのかもしれません。

感情は「コミュニケーションの架け橋」

もう一つ注目したいのは、感情がコミュニケーションにおいてどんな役割を果たしているか、ということ。先日、仕事でチームメンバーにちょっとしたお礼を言われたとき、相手の表情や声色から「すごく感謝してくれてるんだな」とリアルに伝わってきました。こういうとき、人は言葉の意味だけでなく、「どんな気持ちで言っているのか」を察して、相手と心が通じたように感じるものなんですよね。

感情は言葉には表しきれない微妙なニュアンスを補い、人と人をつなげる役目を担っています。だからこそ、感情をまったく出さずに接すると、相手を不安にさせてしまうこともあるんです。「この人は何を考えているんだろう?」と、言葉だけでは読み取れない部分が多いほど、距離を感じやすくなります。一方で、感情を適度に表現すると、「同じことで笑ったり、同じ瞬間に落ち込んだりできるんだ」と安心感や親近感につながる。その意味では、感情はコミュニケーションを潤滑にする“橋”のような存在なのではないでしょうか。

感情を「受けとめて、活かす」練習

もちろん、感情をむき出しにするだけでは衝突が増えるかもしれません。理性をまったく働かせず、「自分はこう感じてる!」だけを押し通したら、お互い疲弊するだけの結果になりかねない。だからこそ、まずは「自分が今どんな感情を持っているのか」をはっきりと認めたうえで、「それをどう扱うか」を考えるステップが大事なんだと思います。

たとえば、上司から厳しく叱られて「悔しい」と感じたとき。すぐに言い返すのではなく、「悔しいと思うのは、自分がもっと評価されたい、仕事で成長したいからだな」と整理してみる。そのうえで、「じゃあ、どうすれば評価してもらえるか」を理性的に考え、実行してみる。感情を抑圧するのではなく、むしろ素直にキャッチしたうえで行動につなげると、結果的にポジティブな方向へ進みやすいんじゃないでしょうか。

おわりに:感情と上手に共存するために

こう考えると、感情とは「自分の本音や価値観を映し出す鏡」であり、「他者とのつながりを深めるツール」であり、さらに「行動を起こす原動力」にもなりうる、非常に豊かな側面を持つものだと感じます。だからこそ、感情を「邪魔者」や「手に負えないもの」として扱うのではなく、自分を知る材料として、また人とつながる架け橋として、うまく付き合っていけたらいいですよね。

前回もお話ししたように、まずは「怒っているんだな」「悲しいんだな」と自分の気持ちを認めるところから始めるのがおすすめです。その先で「どう動くか」を理性と相談する。この二つのプロセスを意識するだけでも、少しだけ気持ちが軽くなるはず。理性と感情を切り離すのではなく、どちらも大切な“自分”として認め合う。それが、より柔軟で、心穏やかな生き方に通じるのかもしれません。

もし、「それでもやっぱり感情をどう扱っていいかわからない…」と思ったら、信頼できる人に話を聞いてもらったり、ちょっと勉強してみたりするのもいいですよね。感情は厄介なようで、実は人生を豊かにするカギを握っている。そう考えると、「感情とは何なんだろう?」という問い自体が、僕たちを人間らしくしてくれる、素敵な入り口なのかもしれません。

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