おもちゃのカンヅメ、2つ。
今も昔も、お菓子が大好き。
時々は、食事時間に「ごはんよりもお菓子を食べたい」と思う日もあるくらいにはお菓子が好きだ。
特に好きなお菓子は、悩むけれど、やっぱりチョコレート。
シンプルなチョコレートもいいし、ポッキーやアルフォートもいい。
ナッツが入っているのもすごく好きだ。
いまでこそ大好きなチョコレートだが、子どもの頃は取り立てて好きではなかったような気がする。
食べている最中は甘くておいしいのだけれど、後味がちょっぴり苦かったことと、口の中にいつまでもそれが広がっていることが苦手だったのだ。
だから、遠足のおやつを選ぶときも、チョコレートのものは選ばなかったし、家でおやつの時間に出るお菓子もクッキーが主体のものだとうれしかった。(後味も甘い、ホワイトチョコレートは大好きだった。)
そんな風に、チョコレートとは一線を画して過ごしてきた子ども時代だったが、なんと「おもちゃのカンヅメ」は手にしたことがあるのだ。
チョコボールをたくさん食べてもいないし、くちばしが当たった記憶もない。
それなのに、おもちゃのカンヅメをもらえたことがある。
おぼろげな記憶だが、ある日母が「ジャーン!」と押し入れから何かを取り出した。
誕生日でも、クリスマスでも、何でもない日だったと思う。
わたしも妹も、一体なんのことやらと母に注目した。
一つずつ渡された、箱だったか、缶だったか。
手にしたそれは、おもちゃのカンヅメだった。
おもちゃのカンヅメといえば、金なら1枚、銀なら5枚のくちばしが必要なそれである。
大人になって、数えるほどしか買っていないからかもしれないが、あのくちばしを見かけたことはない。
どれほどのレアリティかはわかりかねるが、くちばしを引き当てるのも、それを必要枚数集めるのも、なかなかの難易度ではないだろうか。
しかも、押し入れから出てきたおもちゃのカンヅメは2つである。
姉妹喧嘩にならないように、不公平さが出ないようにと、きっと2つ分コツコツと集めてくれたのだろう。
一体どれくらいの時間がかかったのか。
当時、チョコボールばかり食べていたというわけでもないし、もしかしたら、職場の人たちに当たりくちばしをもらったりもしたのだろうか。
それとも母がこっそりチョコボールを自分のおやつにしていたのだろうか。
はたまた誰かが代わりに集めてくれていたとか…?
いずれにせよ、大人になった今、その労力を考えると本当に感動するというか、頭が下がるというか、ありがたい限りだ。
きっと当時の母は、今の私くらいの年齢のはず。
どんな思いでくちばしを探し、集めていたのだろう。
わたしたちの反応を想像して、ワクワクしたりもしたかもしれない。
取り立ててキョロちゃんが好きだったわけでもないし、入っていたおもちゃがどんなものだったかも覚えていない。(キョロちゃんがカタカタと梯子を下ってくるようなおもちゃはあった気がする。)
でも、押し入れから「ジャーン!」と出てきたところは覚えていて、妹と二人で夢中になって開封した記憶はある。
お母さん、おもちゃのカンヅメありがとう。
中身は忘れちゃったけれど、なんだかすごく楽しかったことは覚えているよ。
わたしは子どもを持たない人生を選んだけれど、妹のおかげで小さき者たちと触れ合う機会は持たせてもらえた。
喜ぶかなぁと思いながらせっせと集めたり探したりするのも意外と楽しい。
当時の母も、そう思っていたらいいなと願うばかりである。
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