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【長編小説】二人、江戸を翔ける! 5話目:エレキテるおじさん⑥(最後)

■あらすじ
 ある朝出会ったのをきっかけに、茶髪の少女・りんを助けることになった隻眼の浪人・藤兵衛とうべえ。そして、どういう流れか凛は藤兵衛の助手かつ上役になってしまう。これは、東京がまだ江戸と呼ばれた時代の、奇想天外な物語です。

■この話の主要人物
藤兵衛とうべえ:主人公。隻眼の浪人で、傘張り仕事を生業としている。
りん:茶髪の豪快&怪力娘。『いろは』の従業員兼傘貼り仕事の上役、兼裏稼業の助手。
平賀ひらが源内げんない:自称・天才発明家。何故か、おじゃる言葉のおっさん。

■本文
 電気ショックで皆がノックアウトしてから暫くして、徐々に皆の意識が戻り始める。幸いにして皆の命に別状はなく、怪我もなかった。
藤兵衛源内も電撃で毒気が抜かれたのか、ついさっきまでの興奮状態から醒めていた。

 その後すぐに男達も素直に謝ってきたので、それからなんとなしに彼らの事情を聴くうちに、彼らも無職という弱い立場に付け込まれたということがわかってきた。

それを聞いたお梅婆さんに事情を話し、彼らに人足仕事を紹介して男達に感謝されることになるのだが、それはまた別の話。

こうして花子は壊れてしまったものの、源内からの依頼は一件落着という形に落ち着いたのだった。

それから暫く経った日のこと。凛が藤兵衛の部屋にいる時に源内が訪ねてきた。

「しばらくぶりでおじゃる!」

突然の訪問に二人は驚いてしまう。
そして、よく見ると源内は壊れたはずの花子を背負い、手には手提げ袋を持っていた。

「お久しぶりです、師匠。・・・あれ? 花子は修理できたんですか?」

「修理というより、新しく作り替えたのでおじゃる。名付けて、『花子弐号』でおじゃる!」

ぱっと見は前と変わらないのだが、よく見ると顔の部分が前とは違っていた。
新しくなった花子は茶髪で赤っぽいのが混じり、しかも跳ねっ毛まであって何となく凛に似ている。

「こ、これは・・・?」

「うむ。壱号は虚弱だった故、弐号は強くたくましく生きて欲しい。そう願って、凛殿に似せたのでおじゃる」

「・・・・・・(汗)」

え“・・・ ちょっと・・・」

凛は嬉しそうではなく、むしろ迷惑そうな顔をしている。

「大丈夫、拙者は大切に扱っているでおじゃる。添い寝もたまにしているでおじゃるし。のう? 花子弐号?」

源内は花子弐号に語りかけながら、頬ずりもする。
それを見て、凛の背中にうぞぞぞと悪寒が走った。

(大丈夫、じゃないわよ!! 何てもん作るのよ!!)

「ところで、今日はどうしてここに?」

まさか、花子弐号のお披露目に来ただけではないだろう、と藤兵衛は思っていた。

「うむ。実はエレキテルを商品化出来ないかと考えたのでおじゃる。で、色々と考えた結果、もしかすると按摩あんまに使えるのではないかと思っての。こうして試作品を作ったのでおじゃる。名付けて『エレキテル按摩』でおじゃる」

紹介しながら持っている手提げ袋をほどくと、以前にひどい目に遭わされた、あの『エレキテル棒』を小さくしたものが現れる。

「そこで、実用化出来そうかどうか試させて欲しいと思ったのでおじゃる。あ、凛殿もぜひ試して欲しいのでおじゃるよ」

あの日のことなど悪びれもせず、源内はにっこりといい笑顔で協力を呼びかける。
それを見て凛は何だかイラっときた。

先日あの一撃を食らった後、髪の毛が暫くパーマが掛かったようにチリチリになり、えり・せり・蘭に大いに笑われた苦い記憶が蘇る。
凛は源内からエレキテル棒を素早く奪い取ると、

「源内さん? ちっとも反省してないようね(怒)? こういうのはね・・・ まず、自分で試しなさ~~~い!」

調節ツマミを最大に回し、源内に思いっきり押し当てた。

ビリビリビリバリィ!!

「んぎょぎょぎょぎょえーーーーーー!!」

この一撃に源内は悶絶、絶叫する。
こうして源内は、凛から強烈な罰を食らうのであった。

尚、この『エレキテル按摩』は出力の安定性に問題があり、商品化されることは無かったそうな。

~エレキテるおじさん・完~ 次話へとつづく


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