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【短編連載】相場一喜一憂物語④(完結)
■あらすじ
これは投資初心者の二人組が『生き馬の目を抜く』投資の世界に身を投じて悪戦苦闘する、笑いあり涙あり(?)の短編物語です。
■本文
前回、株取引で大損した二人は、懲りもせずに暗号資産の取引に戻ってきた。
「いや~、やっぱ取引したい時に取引出来る暗号資産のほうがいいな~」
「全くでありマス! 年中無休のコンビニ上等! 命の次に大切なお金を使うのでありマスから、『ゆとり』などという甘っちょろい考えは捨てるのでありマス! 投資の世界では働き方改革などくそ食らえ、『24時間戦えますが、なにか?』が、座右の銘なのでありマス!」
「うむ。その意気や良しだ、佐助隊員!」
佐助と隊長は見つめ合い、大きくうなづく。
「して、隊長! 今後はどのような戦略で攻め立てるのでありマスか? ドルコスト平均法、とりあえず生中買い、風の向くまま気の向くまま、色々と考えられるのでありマス!」
※ドルコスト平均法以外は存在しません。佐助隊員の個人的見解です。
「うむ、そのことだが佐助。俺はとんでもない法則を発見してしまったのだ!」
「な、なんでありマスか? それは!?」
「暗号資産には、『4年サイクル』というものがあるのだ!」
「な、なんだってぇぇえええ!」
予定調和なのか、佐助は殊更に大袈裟に驚く。
「どうせ、この後は『で、それは何でありマスか?』と質問するのだろうから、先に答えておく! 4年サイクルとは暗号資産の価格は4年おきにATHする、ということだ!」
※ATH:オール・タイム・ハイの略。過去最高値を更新すること。
「え、ATMで、ありマスか?」
「Hだ、あほ! 高値を更新するってことだ!」
しっかりとツッコミを入れながら、隊長は話を続ける。
「佐助、お前も『半減期』というものは聞いたことがあるだろう? この半減期は4年ごとに訪れるのだが、それを境目に価格が上がっていくのだ」
「それは半減期イベントで通貨の供給量が半分になるため、需給の関係で価格が上昇するというやつでありマスね!」
「う、うむ・・・(知ってんじゃねえか!)」
佐助の簡潔な説明に、隊長は面喰う。
「しかし、何故4年なのでありマスか? プログラムで決まっているからだそうでありマスが、何故『4』なのか、というのがわからないのでありマス」
首を傾げる佐助に、隊長は遠い目をして語り始めた。
「それはだな。『4』という数字は宇宙の真理を現しているからだ」
「し、真理とは、これまた大きく出たでありマスね。で、それはどういう・・・?」
「うむ。そもそも『4』が付くものを思い出してみろ。オリンピックは4年に一度、アメリカ大統領選挙も4年ごとだ。更には、うるう年も4年に一回だし、サッカーワールドカップもそうだ」
「た、確かに言われてみるとその通りでありマス。季節も四季でありますし、ドラえもんの不思議道具も四次元ポケットからでありマスし、隊長も小学4年までおねしょをしていたのでありマス!」
「さらっと、人の黒歴史をバラすな! ・・・つまり、4だけに『し(四)んり』って訳だ。なんちゃって!」
「・・・・・・(苛)(いっぺんし(四)ね! でありマス!)」
佐助は心の奥底で沸き起こるどす黒い感情を、必死に抑えた。
「して、その4年サイクルはわかりましたが、具体的にはどうするのでありマスか?」
「それはだな。暗号資産は半減期を過ぎてから2年経った後が底値になるのだ。そして、今はちょう2年が経過している。ということは・・・」
「今がお買い得のタイムセールってやつでありマスね!」
「その通り」
そうして二人は持っているお金で買えるだけの暗号資産を購入した。
「・・・こうして、あとは3年後にATHしたところで売ればいい訳でありマスね」
「ああ、そうだ。後は待つだけの簡単なお仕事って訳だ」
「なるほど、それは楽でいいのでありマスね~」
隊長と佐助は笑い合う。そして、二人は待つだけとなったのだが・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」
「・・・暇、でありマスね」
「・・・そうだな。・・・ゲームでもやるか」
やることがなくなった二人は、投資を始める前と同じようにゲームをやり始める。
その後、二人がきちんと利益を上げられたかどうかは、神のみぞ知る、であった。
※投資は長期目線でじっくりと行うのが基本です。
~相場一喜一憂物語・完~