行と業と心

行と業と心   20231209

インドでは紀元前5,6世紀頃から、瞑想などを通じて自分の心の内部への探求が盛んにおこなわれていました。

 ヨーガの心理学では、心を中身とその中身が集まっている場所と働きに分けて考えます。
まず心の中身とは行または薫習と呼ばれ、今世のものだけでなく前生や前々生なども含めた全ての経験の残存印象、潜在意識です。次にそれらが集まっている場所をチッタといいます(心すべてまとめてチッタと呼ぶ場合もあります)。これは実在するようなものではなく、目に見えない微細な物質でできています。そして私たちが普段感じる喜びや悲しみなどの心の働きは、チッタにある行によって生み出されています。

 この三つのものはチッタを畑、行は畑にまかれた種、働きはそこから出てきた芽に例えて佐保田先生は説明されています。この種から芽が出ること、つまり潜在意識から心の働きが出てくること、形のない無限の可能性があるものが、形ある現実に変化すること、こういった現象を転変と呼びます。

この転変により生まれるものは、意識の中の観念のような自分の内側に形作られる心理的なものと、身の回りの環境や現実、物質的なもの等自分の外側に作られるものとの2種類あります。業とは後者に関係し、自分の外界を作り上げる要因になります。

行のうちの一種である業は、自分がどんな状況で生まれ、その後生きていく過程で現れる物質的なものも含めた外的環境や、寿命、楽しみや苦しみの経験、こういったものを作る助けになります。環境を実際作るのは宇宙の大いなるエネルギーであり、業はそのエネルギーの流れを決める設計図のようなものになります。
転変で生まれるものはあくまでも心の働きです。心の働きがまずあってそれに合わせた外的環境を自ら生み出しているといえます。

外側の現実によって一喜一憂しがちですが、外側の現実を作り上げているのは自分であるという自覚をもつことが大切です。そうすることで煩悩や感情に振り回されない、主体的な生き方をすることができます。スートラには具体的に方法が書かれており、合理的で、科学的な面を改めて感じました。


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