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2024年11月10日(日)もちもち妖怪、布団を干す

久しぶりの快晴の日曜日。朝から気持ちの良い風が吹いていたので、布団を干すことにしました。私たちもちもち妖怪は、湿気を吸いやすい体質なので、布団干しは重要な家事の一つです。

ベランダに布団を持ち出そうとした時、最初の困難に直面しました。私の体が布団に触れると、布団まで幸せそうにふわふわし始めてしまったのです。これでは干すどころか、布団が風で飛んでいってしまいそう。急いで軍手を探し出し、なるべく直接触れないようにして布団を運びます。

「おはようございます!いい天気ですね」

向かいのベランダから佐々木さんが声をかけてきました。佐々木さんは70代の女性で、いつも早起きして掃除や洗濯をしている几帳面な方です。私が布団と格闘している様子を見て、「布団バサミ、余分にありますよ」と声をかけてくれました。

実は困っていたところでした。私の持っている布団バサミは古すぎて、もろくなっていたのです。江戸時代から使っている木製の物は、さすがに限界かもしれません。ありがたく佐々木さんのプラスチック製の布団バサミをお借りすることに。

「あら、なんだか布団がとってもふんわりしてますね」

私の布団は、私の体質の影響で通常の布団よりもふんわりとしているようです。それを見た佐々木さんは、「私の布団も隣に干していいかしら」と言ってきました。

午前中、佐々木さんと世間話をしながら布団を干していると、なんとベランダの上を鳥が通り過ぎた際、私の布団に興味を示して止まろうとしました。慌てて追い払おうとしましたが、鳥は私の布団の上でくつろぎ始めてしまいます。どうやら、幸せオーラを放つ布団が気に入ったようです。

「まあ、可愛らしい!」と佐々木さんは喜んでいましたが、私としては冷や汗もの。鳥が長居すると、布団に羽が付いてしまいます。しかも、私の布団に付いた羽は通常以上に幸せオーラを帯びてしまうので、他の鳥も寄ってきかねません。

昼過ぎ、やっと鳥も去り、布団も十分に日光を浴びたところで取り込むことにしました。ところが、ここでまた問題が。日光と風で乾いた布団は、通常以上にふわふわになっていて、まるで雲のよう。取り込もうとすると、体に触れた部分から次々と膨らんでいってしまいます。

「お手伝いしましょうか?」と佐々木さんが声をかけてくれましたが、「大丈夫です!」と丁寧にお断りしました。私の布団に触れると、きっと佐々木さんまで幸せな気分になって、不思議に思われてしまいます。

結局、夕方近くまでかかって、なんとか布団を取り込むことができました。部屋に戻した布団は、いつも以上にふかふかで気持ちが良さそうです。今夜はきっとぐっすり眠れるはず...と思っていたのですが、寝ようとすると布団が私の体を包み込むように膨らんできて、今度は寝づらくなってしまいました。

この季節の布団干しは、私たちもちもち妖怪にとって一苦労です。でも、佐々木さんと会話を楽しめたり、小鳥たちが喜んでくれたりと、思わぬ出会いもありました。来週も天気が良さそうなので、今度は湿気を逃がすコツを工夫してみようと思います。それと、新しい布団バサミも買いに行かないと。江戸時代からの愛用品とはそろそろお別れの時期かもしれません。

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