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過去の遺産と○keaの狭間で
セミが鳴いている。
梅雨がいよいよ終わって、大好きな夏がやってくる。
おちび(夫)はこの家に越してきてから本当に毎日楽しそうに過ごしている。
朝は決まって8時には起きているし、朝ごはんを作って、洗い物をして、ラグを干し、クイックルワイパーをかけ、掃除が終わるとブログを書き始める。これがおちびの日課になっている。
以前の家では出勤のギリギリまで寝ていた。12時から仕事なのでそれこそ遅い時は11時過ぎまでグースカ寝ていた。
私はそのことを気にしなかったけれど、きっとおちびに対してイライラしていた部分もあったと思う。
この家はおちびをまるごと変えてくれた。
わたしもふくめて。
おちびは買い物が大好きなので、気に入ったものがあれば一瞬迷いはするけれど、本当に一瞬だけで、次の瞬間には購入することを決めている。
今回の引っ越しも、家具をほとんど新調した。以前の家で使っていたものは若気の至りで買った様な気をてらったものが多かったし、デザイナーズマンションに合わせたマットでクリーンなスタイリッシュなデザインのものが多かった。
年齢や時代と共に好きなものも変化してくるので、以前使っていた家具などは全部売ってしまった。
年代物のヴィンテージが大好きなおちびは、いろんなアンティークシップやリサイクルショップを巡って、あらゆる家具を少しずつ集めてきた。
おちび曰く、バイヤーがセレクトしたアンティークショップで見つけるよりも、ハードオフとかにあるまさしく不用品なのだな という置かれ方をした中から心惹かれるモノを掘り出すのがたまらなく楽しいらしい。
だから誰から見ても魅力的で今の時代に求められたデザインのシグニチャーが揃うアクタスにはまったく興味を示さなかった。
これは私もよくわかる。
アクタスのお店に立ち込める新品の家具の匂いも、上品なフレグランスの香りも大好きなんだけれど、家具を買おうという気分にはなぜかなかなかならなかった。
もちろん値段が高額だというのもあるけれど、それ以上に、ヴィンテージ家具に染み付いた人間の歴史の様なものに強烈に惹かれているからかもしれない。
とか玄人みたいなことを憧れて言いながらも私の部屋は50%○keaで出来ている。(大きな作業机とか機能的な長机とか。だって超便利だもの。。)
ある程度家具が揃ってはきたが、肝心の本棚やチェストは気にいるものがなかなか見つからない。
(もちろんしっかり○keaにも見に行きました。)
そこでおちびの知り合いの方が運営している倉庫兼アトリエにお邪魔する事にした。おちびから話を聞く度ずっと言ってみたかったのだけれど、ようやく行くことができた。まるで宝探しにでもいくかの様にドキドキしていた。
雨の中佇む巨大な建物はグレーのコンクリートが塗り固められた5階建てからなる本当に巨大な倉庫だった。
今にも壊れそうな音がガタガタと鳴り響く荷物用の広いエレベーターに乗り我々は2階へ案内された。
いくつものドアがあって、それぞれドアの向こうにはアート作家の方や画家の方達のアトリエになっているらしい。
なるほど。こういう非現実的な場所でアートは生まれるのかと妙に納得した。
最初に案内された部屋にはあらゆる年代ものの家具や小物、誰が書いたかわからない絵や粘土細工が無造作に散在していた。
宝探しに来たみたいにワクワクしながら狭い通路を物を避けつつ進む。
途中何度もお尻をいろんなものにぶつけながらも、お目当ての物をいくつか見つけ出すことができた。
私はここで50年代の楔棚と籐の椅子と同じく籐の枕と檜の木箱を大小と、よくわからない木材の3段棚を購入した。
大満足の宝探しだった。
多分お尻は青痣だらけだろうけど、本当に楽しかった。
その後また別のビルに連れて行っていただいた。これがひっくり返るほどにかっこいいスケルトン部屋で、ここでは厳選された過去の遺産が眠っていた。
幕末時代の黒箱とか、ガラス箱とか、試しに少し座るのも躊躇するような威厳漂う西洋の椅子だとか。
最初の倉庫で見た宝箱の様なモノ達とは違って、このスケルトン部屋にいるモノ達は個々にはっきりとした意志があって、堂々と威厳を持って並んでいたので 「ああ、、この方達をお手元に置きたいだなんて恐れ多いわ、、」と恐縮してしまうほどだった。
生まれてからこれまでにどれだけ濃い経験をして、どんな時代を生き抜いてきたのか。個々の長い歴史を背負ってなおも現存しているものは風格や立ち振る舞いが違うななんてことを思った。
人もモノもきっと同じ。
いつかあのモノ達をを堂々とお呼びできるくらいの人間になっていたいと思いながらも、私はまだまだ○keaを卒業出来そうにない。