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主人公がクズ。だから目が離せない。敬愛する花沢健吾さんが描く「憑依型漫画」の魅力。

クズな人って、何か見ちゃいません?
動画でも、テレビでも。
芸人さんでも最近少し人気ですよね。
岡野陽一さんとか、相席スタートの山添さんとか。
借金しても別にいいじゃないっすかっていう開き直り方が、
見ていて清々しいほどだ。

彼らのような「クズ主人公」を描くのが抜群に上手い漫画家さんとして、
私は花沢健吾さんに一目置いている。
『ボーイズ・オン・ザ・ラン 』『アイアムアヒーロー』など
映画化やドラマ化もされた作品の作者さんだ。
(『ボーイズ・オン・ザ・ラン 』は大好きすぎて、10回以上読み直した)

一見キモイ、「非モテ」クズ。

クズといっても、クズ界隈には色々なクズ科生物が生息している。
(女たらしクズや暴力クズなど)
花沢さん作品に登場する主人公は、クズ分類図でいうと
例に挙げた芸人さん達のような「クズ科・借金族」には該当しない。

実家暮らしで甘ったれ。
ウジウジ悩む。
だらしない。
うーん。「ネガティブ非モテクズ族」とでも言おうか。

漫画を読み進めて最初の方は、見事に憧れない。主人公なのに。

キラキラしていないけど、必死で生きている。

それでも、いや、だからか、目が離せない。
主人公のダメっぷりに喝を入れたくなるし、
だめじゃん何やってんのと、一緒に飲んで笑いたくなる。

そう、ダメな奴の友達になったような感覚になるのだ。

主人公達は「俺はダメな男だ」という葛藤の中で、もがき苦しんでいる。
そして、努力して、花開くシーンが少しある。
その姿に、心が揺さぶられ、歓喜する。

花沢さんは主人公を自分そっくりに描くと言っていた。
作者が主人公に憑依するからこそ、
心の機微や表情の細部が、リアルに再現される。
身近にいる友達みたいな感覚が生まれるのである。

そりゃルフィだって炭治郎だって必死に生きていると思うよ。
でも、彼らは強い。きっと勝つだろう。
安心して見ていられる。
そこには、虚構の世界であるという、明確な線引きが存在する。

でも、花沢さん作品の主人公は、安心して見ていられない。
主人公が驚くほど弱い。
だから、何が起こるかわからない高揚感がある。
実際に、『ボーイズ・オン・ザ・ラン 』の田西は、
一度イケメンのライバルと喧嘩して負けた。
人間は弱いものだというリアルを突きつけられたのだ。

虚構と現実の狭間に置かれるスリルを体感できる。
それは、花沢さんが主人公に憑依し、
リアリティのある主人公を成立させたからこそ
実現できる世界だ。

憧れない青年誌の主人公が登場する漫画で
ヒット作になった作品は数少ないのではないだろうか。
かっこつけない。ありのままの、不器用な主人公。
そんな、花沢さんの作品が大好きだ。

​#好きな漫画家 #漫画 #マンガ #花沢健吾

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