ベストな留学タイミングっていつ? 〜小学校高学年以降編〜
もし自由なタイミングで海外に留学できる場合、いつがベストなのか?東南アジアに越してきて2年、それぞれの家庭がそれぞれのタイミングで留学してくるが、日本人家庭を見ながら感じた事がいくつかあるので、考察をシェアしたい。私自身も帰国子女なので、自分自身の経験とも照らし合わせての考察である。
幼児期、小学校中学年からの話は以下からどうぞ:
さて、今回は小学校の高学年以降(小6〜)から留学開始した場合の考察である。正直なところ、中学以降から留学開始する家庭は少数派であるため、以前の2つの記事に比べて事例は少ない。
中学生間近ともなると、子どもと言えど思考はかなり大人に近づいている。この年齢まで日本にいた場合、日本語教育のベースはほぼ完成されているし、個人差があるとはいえ「日本人」感がしっかり根付いている事が予想される。そんな時期に留学開始した場合の、それぞれのメリット・デメリットを紹介していきたいと思う。
高学年以降に留学開始した場合のメリット
メリット① 学校のカリキュラムが充実している
この年齢になると、現地校で学ぶ内容はかなり高度になっている。低学年だとよくも悪くも自由時間が多いため、英語の習得ペースを見てはヤキモキしてしまう親が多い。帰ってからの時間がたっぷりある(しかし習い事を詰めるだけの体力はない)ため、習い事を入れるかどうかが悩ましい。一方、高学年となるとそうも言っていられなくなる。課題がガンガン課されるため、家に帰ってからも英語漬けになり結果的には英語に触れている時間が長くなる。
もちろん、「学年相当」の英語レベルも高いため、高学年であればあるほど追いつくのは大変だが、「カリキュラム通りに過ごしていても猛スピードでレベルアップしていく」のは高学年ならではだ。
メリット② 英語の読み書きが元々できていた場合はアドバンテージ
昨今の日本の小中学生は、習い事として英語を熱心に勉強させている家庭が多い。特に、小学校高学年で留学開始するような家庭は、そもそも中学受験をしていない家庭が多い=その分英語教育に力を入れている所が多いように思う。英検然り公文然り、日本で英語を学んでいると、ある程度文法の知識が入っている事が期待される。この状態で英語学習を始められるのは、高学年ならではのメリットである。あとはエッセイを書くことにさえ慣れれば、中学レベルの英語でも案外どうにかなるものだ。個人的には、英語のエッセイは構成が決まっているため、日本の作文よりも書きやすいと思っている。
メリット③ 努力の必要性を感じ、努力できる体力がある
幼い子を勉強させるのは本当に難しい。あの手この手を駆使してモチベーションを上げつつ、親にも果てしない根気がいるので、継続的に勉強させるには親の覚悟が必要だ。しかし小学校高学年ともなれば視野が広くなっている分、自覚できる事も多い。異国の地に放り込まれ、全くコミュニケーションを取れない状況を経験すると、英語できなきゃマズイ!という課題を本人なりに痛感してくれる。
また高学年ともなると、しっかりと体力がついているのがありがたい。低学年だと、学校と放課後アクティビティを入れるとヘトヘトになるため、その後さらに外部の英語塾を入れるとかなり嫌がられる。しかし、高学年となるとそれでも耐えられる。学校で8時間英語漬けになった後でも、外部の英語塾に通う体力があるので、さらに勉強に充てられる時間が増えるのだ。
メリット④ 日本語が怪しくなる心配が無い
幼少期編・中学年編でも触れたが、日本語補習校なしで日本語を習得していくことはとっても難易度が高く、本人と親にかなりの努力と根気が必要とされる。何度、「ああ日本に住んでいたらこんなの自然と身につくのに!!」と思った事か。とにかく基本を習得させるのが大変なのだ。
その点、高学年まで日本に滞在していた子には、その危うさは無い。土台部分が日本で育っているので、今後何年英語圏で暮らそうとも、日本語が扱えなくなる心配はない。読み書きに関しても、生活する上で必要な漢字はほぼ履修済みである。日本語の基本的な読み書きに対して労力を割かなくて良い事は、かなり大きなメリットであると言える。
小学校高学年以降に留学開始した場合のデメリット
さて、例に倣って、デメリットについても触れていきたい。日本語教育を受けてきたからこその恩恵もたくさんあるが、やはり高学年ともなると環境の変化に適応するのは大変である。
デメリット①そもそも入学できる学校が限られる
最大のデメリットは、入学試験で求められるレベルが高いことだ。中学生ともなると英語力がある前提で授業が組まれるため、「英語ゼロの方もどうぞ」という学校はかなり限られる。実績のある人気校ほど厳しいだろう。日本で相当英語を鍛えてきただとか、両親にネイティブ並みの英語力がある、もしくは両親が国の要人だったりすれば多少は融通が効くかもしれないが、そうでない場合はかなり厳しい戦いなる事を覚悟しておいた方が良いだろう。
デメリット②英語サポートプログラムを卒業できない
運よく入れる学校が見つかったとして、今度はクラスメートの英語レベルに追いつくのが大変である。メリットでも触れた通り、ある程度英語を頑張っていた場合はそこを糸口に習得が進む場合もあるが、全くのゼロからのスタートとなると、なかなか大変である。
特に、ミドルスクールに進学すると一気に英語の難易度は上がり、課題量も増える。教材の内容はもちろん、日常会話でも微妙なニュアンスが大事になってくるため、より豊富な語彙力が必要とされる。高学年で留学開始した場合、サポートプログラムに入るのは仕方ないとして、そのプログラムからいつまで経っても卒業できなくなるリスクが伴う。例え自分がレベルアップしても、通常クラスもまたレベルアップしていくので、ずっと追いつけないままなのだ。それほどに、ミドルの英語レベルは高い。
・・・と書くと大変そうだが、それでも周りを見ればみなサポートプログラムを無事卒業していくので、やはり高学年になると習得ペースが幼児とは違うのだろう。ミドル以上は課題の量が増えて大変だが、課題を通して英語に触れている時間が伸びるとも言えるため、英語習得スピード自体はむしろ上がっているのかもしれない。
デメリット③思春期と重なると大変、見下される事も
個人的にはこれが一番精神的にはきついと思っている。エレメンタリーの低学年までは、英語力にバラつきがあっても短期間でいずれ仲良くなれる。しかし、個人の存在意義をかけたヒエラルキー戦争(つまり思春期)が始まると、そうもいかなくなる。
高学年で喋れない子が入ってくると、「通常の」グループに入っていく事はまずできず、彼/彼女らからは一線を引かれる。しかし必ずと言っていいほど、一人くらいは小さい頃から「困っている子がいたら助けてあげなさい」と教えられ育った心優しい子がおり、最初はそういった子達が優しく手助けしてくれる。ただ、残りの大半の子は嫌がるでも話しかけるでもなく、なんとなく近寄ってこない子がほとんどだ。高学年ほど、初めは友達作りに時間がかかる。
地域にもよるが、学校によっては英語を喋れないというだけでバカにされる事もある。明かに「お前英語も喋れねぇのかよ」スタンスで接してくる嫌な奴もいるので、モヤモヤする機会は多いだろう。そんな中、やはり頼りたくなるのは上記のような優しい子達と、日本人である。
デメリット④英語ができない日本人で固まる可能性が高い
思春期に、友達と呼べる人が学校にいない事ほど心細い事はない。そんな時に心のオアシスとなるのは、やはりなんと言っても日本人である。しかも海外にいる日本人の子は仲間意識が強い。海外で頑張っているマイノリティ同士の一体感があるのだ。しかしだからこそ、居心地が良いあまり、日本人だけで固まってしまう危険性がある。
実は低学年でも、最初は同じ現象が起きる。しかし英語習得と同時に、不思議と色々な子達と関わるようになっていく。一方高学年の場合、低学年に比べるとずっと日本人で固まっている子が多いように思う。それでも高学年はカリキュラム自体が盛りだくさんなので英語力は向上していくのだが、スピーキング能力に限っては上達スピードが緩やかである、という点については触れておきたい。
最後に、年齢関係なく秒で馴染める例外を紹介
最後の最後に、身も蓋もない例外パターンを2つ、紹介していこう。今まで低学年・中学年・高学年で留学開始した場合のそれぞれの傾向を紹介してきたが、例外が2パターンあると思っている。
1つ目のパターンは、目を見張るような美形であった場合だ。ちょっと可愛いレベルではない。世界レベルでみて「わ!!綺麗!!!」といった見た目の子が入ってくると、その子が何人だろうと、一言も喋れなくても、年齢関係なく、瞬く間に馴染んでいくのを私は何度か見届けている(笑)。我が子はとんでもない美人/ハンサムだわ、という方はどうぞご安心いただきたい。「ただしイケメンに限る」現象はどうやらグローバルなようだ。
2つ目のパターンは、圧倒的アスリートであった場合だ。スポーツができると、スポーツチームに参加できる。選抜メンバーとして選出される。チームで活躍する。チームメイトに愛される。たくさん会話できる。こういった正のスパイラルで、瞬く間に現地の子達に馴染んでいく事が可能だ。水泳のような個人スポーツだとそうでもないが、サッカー、バレーボール、バスケ等のチームスポーツに秀でていると、馴染めるきっかけがたくさんある。ただし、英語の内容が「パス!」「やったね!」等のスポーツ用語に限定されがちなので、アカデミックな英語を身につけたい場合は、別途英語の勉強が必要だ。
以上、3回に渡ってそれぞれの留学時期に合わせた特徴を紹介してきた。もちろん子供の性格や性別、地域によっても全然状況は違ってくるので、一概に語ることはできない。しかし傾向を知るだけでもこの先対策ができるし、これから海外留学を始める、という家庭にとってはそれぞれのメリット・デメリットを検討する材料として参考にしてもらえれば幸いである。