子どものベストな留学タイミングって? 〜小学校中学年編〜
もし自由なタイミングで海外に留学できる場合、いつがベストなのか?東南アジアに越してきて2年、それぞれの家庭がそれぞれのタイミングで留学してくるが、日本人家庭を見ながら感じた事がいくつかあるので、それぞれの時期で留学開始した場合の考察をシェアしたい。
幼児期編は以下からどうぞ。
さて今回は小学生中学年程度(小3〜小5くらい)で留学開始した場合の考察である。我が家も正にここに当てはまるため、かなり身近に例がいる。
小学校中学年から留学開始した場合のメリット
メリット① 日本語教育が比較的楽である
幼児期編でも日本語教育の難しさについて触れたが、海外に住む日本人の悩みの種はなんといっても日本語との両立である。運よく日本語補習校がある地域に住んでいればラッキーだが、そうでない場合は完全に手探りであり、日本語力を生かすも殺すも親次第となってしまう。
しかし、もし留学開始が小学生の中学年程度であった場合、ある程度日本語の土台が出来ている。ゼロから日本語力を築くより、維持することのほうが大分楽である。そのラインが日本の小3、できれば小4終了時以降かなぁ、というのが個人的な感覚である。
小学校の4年生終了時ともなれば、生活に困らないくらいの基本的な漢字は読み書きできるようになっている。部首の理解なども進み、漢字にもパターンがある事がわかってくるので、記憶方法も効率的になってくる。文庫も読める。読書の習慣が身についている場合は、あとは多少の反復さえ挟めば、それ以降の漢字習得も決して難しくはない。
さらに言えば、日本の小学校4年生頃からは社会科や理科が本格的にスタートする。特に社会科で覚える日本地図の暗記は後々全ての事に通ずるため、なかなか重要である。もちろん大人になってからも覚える事ができるのだが、日本の教材では事あるごとに都道府県名が出てくるので、大体の場所や位置関係が頭に浮かぶかそうでないかによって、情報の理解度合に結構な差が生じるものだ。
メリット② 算数はもう中学の範囲まで履修済み状態になる
日本の算数は、欧米の算数に比べて難易度が高い。四則演算はスピード・正確さ両方を求められるし、応用問題で問われる内容は、頭を捻らないと出てこないような柔軟な発想を求められる。
日本の小3、4の算数レベルをこなしてから留学開始すると、算数の授業は正直楽勝である。もちろん、文章題の英語を理解する事には少々苦戦するが、算数で使う英語は限られているので、算数の言い回しさえ理解できればすぐにキャッチアップできる。IB教育では、どうやってその考えに辿り着けたのか、という事を重視するため太刀打ちできないのではと身構えていたが、IBの小学生プログラムを受けた娘曰く、5年生時点ではさして難しくないようだ。(おそらくもう少し先の学年になるともう少し思考力が問われるようになるのだろう)
つまり、算数はガン無視してとりあえず英語に集中!と思い切る事ができる。いずれ日本に帰る事がわかっていれば、日本の算数も学年相当に維持しておく必要があるが、それでも英語力がつくまでは算数は放置しても、後から一気に勉強すれば全然追いつける。娘も、英語力の習得に全振りしていた1年間は日本の算数はほったらかしだったが、6年生の夏に一気に勉強したら、難なく追いつくことができた。
メリット③ エレメンタリー/プライマリー最高学年には、学びのエッセンスが詰まっているのでお得
エレメンタリーの最高学年はカリキュラムによって学年が異なるが、共通して言えるのはどれも小学生の集大成であるという点だ。それまでの知識・経験・技術を集結したカリキュラムが組まれているため、非常に濃ゆい内容で学ぶ事ができる。アメリカやIB式であればGrade5、イギリス式であればYear6がこの年にあたる。
インターの最高学年は、学校としてもなんらかしらの成果を披露する学年であり、土台の最終確認をする学年でもある。それまでの学年とは違った気合いの入れようを感じるので、一言で言えば、カリキュラム的には色々とおトクなのだ。
ただし注意点として、最終学年スタート時までに英語の習得を完了していないとこの恩恵をフルに受ける事はできない。一部の授業がESLなどの英語補助授業で潰れてしまったり、そもそも大事な授業内容を理解できない、という状況も起こりうる。もし留学開始時期を選べるのであれば、最終学年が始まる1年前までには留学開始し、最終学年開始時にはヘルプなしで授業についていける状態になれるのが理想だ。
メリット④ 日本との違いをリアルタイムで比較&分析できる
土台を日本教育で育ててきたからこそ、日本と今の滞在国では何が違うのか、どんな事が共通していてどんな事が通用しないのか、という点をその場で発見し分析する事ができる。もう少し幼い頃から留学開始した場合は、過去を振り返るという事自体が難しいため、どんどん記憶が上書きされていき、比較する事は難しい。(こういった子達が日本との違いを言語化できるようになるのは、帰国してからしばらく経ってからとなる)
小学校高学年で留学開始した場合、日本の常識が通用しない事にショックを受ける事もあるだろうが、日本独特のルールが世界では不要と知ってホッとする事もある。例えば、娘曰く、海外の先生は怒鳴らない(怒ると言うより説明する)、どのように座っても寝転んでも大丈夫、多少の遅刻は多めに見てくれる、スポーツのレベルがマイルドで何事にもチャレンジしやすい、すぐにメダルがもらえる、などの違いは海外の方が好き!と喜んでいた。逆に、先生が話しているのにうるさすぎる、みんな練習しないからいつまでもレベルが低いまま、給食が激マズ、借りたものを返さない、気遣いが足りない(わがままだと感じる子が多い)のはこちらの嫌な所で、日本の方がいいなぁと感じるそうだ。(ちなみに小1の息子は、「東南アジアサイコー!」だそうだ。)
国の違いに自覚的になると、インターでの課題も多角的に取り組めるようになる。インター生として求められている答えは自覚しつつも、日本人としての視点も持っているので、自分の中で一番効果的なスタンスで取り組む事がができる。
例えばだが、シンプルな色塗り課題があったとしよう。インターの同級生達は丁寧に塗って終わり、が想定されるが(丁寧でさえないかもしれないw)、小学校中学年の日本人としては、色鉛筆ひとつとっても陰影をつけたり模様を描きながら塗ったりと、より高クオリティな仕上がりを提供する選択肢がある。日本クオリティが頭にある状態で取り組むだけで、現地の子達的には「考えたこともなかった!」というような事ができて、評価はグッと高くなる事が往々にしてあるのだ。
また、もしいずれ帰国受験など考えている場合は、自分のどういった経験が受験のネタとして使えるのかも、計画的に考える事ができる。
メリット⑤ 視野が一気に広がり、かつ適度に染まる事ができる
前項目でも触れたが、小学校中学年まで日本で育つと「日本人としての当たり前」がある程度育った状態での留学開始となる。その年齢で急に異国の地に混じると、それまでの当たり前だった事が数々の場面でひっくり返されまくる、という経験をする。「ルールって世界では変わるんだ!」という事をリアルに体験できるのはこの年ならではのメリットである。自分の思っていた世界が全てではないし唯一無二の正解でもない、という事を良くも悪くも、何よりもリアルに実感する事ができる。
さらにこの年齢の良い所は、違いに気づいてから自然に染まる柔軟さもまだ持ち合わせている所だ。もう少し大きくなると、もはや根本の部分を変化させるのは難しいが、この年齢であればまだまだ根本部分の影響も受け入れる事ができる。「やってみる事のハードルの低さ」「プレゼンへの慣れ」「グループワークでのコミュニケーションの取り方」などは、親としてはぜひ海外に影響を受けてほしい要素である。
小学校中学年から留学開始した場合のデメリット
デメリット①現地の英語力に追いつくのが大変
なんといっても、英語力だろう。小学校の中・高学年から留学すると日本語はしっかり習得できるが、逆に英語の習得には苦戦してしまう。日本語が圧倒的に心地良い状態から、全く違う言語を習得するのは本当に気の毒になるくらい、大変なことである。エレメンタリーと言えど、高学年ともなれば複雑な事についても話し合う必要があるので、英語力のキャッチアップの難易度が高い。周りの環境と本人の性格にもよるが、周りに日本人がいなければ1年程度、日本人がいる場合は1年半+学校外でも英語塾を入れないと追いつくことは難しい。
デメリット② 発音が必ずしも矯正されない
発音の習得に関しては、人と環境による所が大きいのだが、総じて言えることは「高学年であればあるほど、個人の吸収力に委ねられる」と思う。例えばアメリカ式のカリキュラムだと、低学年ではPhonicsをしっかり勉強する機会があるため、誰でも一律に綺麗な発音を身につける事ができる。一方、Phonicsの単元を逃して入る中・高学年では、発音習得はクラスメートからのインプットが主なインプット源となるし、どれだけ周囲の発音に影響されるかについては本人の共感力等に委ねられる。
と言うのも、実例がある。私個人の経験だが、Grade6の時に日本から引っ越してきたA子ちゃんがいた。A子ちゃんは英語ゼロスタートだったにも関わらず、瞬く間に綺麗な英語を習得していった。しかし同時期に日本から引っ越してきたB太郎くんは、その先5年間ほど、ずっといわゆる「日本語英語」発音のままだったのを見届けている。要するに幼少期以降の留学に関しては、発音を吸収するのもしないのも、個人の特性による所が大きいのだと思う。
デメリット③ 人種の垣根なく馴染む、は高学年になればなるほど難しい
どんな学校でも、似た見た目でつるみたがる傾向はあり、特に日本人はそれが強いように思う。日本語の土台がしっかりできているのは良いことだが、それ故に母国語で意思疎通できる相手はこの上ないオアシスである。もちろん周りに日本人などいない、という場合は例外であるが、チラホラ日本人がいる場合は、同じ人種で固まりがちだ。
固まりたがるのは日本人同士だけでなく、高学年になってくるとそれまで人種バラバラに遊んでいた子達が、なんとなーくだが、欧米系/アジア系/そのどちらとも仲良くできる中東系、というような構図に分かれがちである。例外的に、自分からグイグイ行けるような明るくて英語ペラペラな人間はどこにでも入って割っていけるが、そうでない場合は空気の通り、それぞれのポジションに収まりがちだ。高学年ほどその傾向が強くなってくるので、国際色豊かな友人関係を!と思っている場合には幼少期から留学開始した方が「人種の壁なき交流」はしやすい。
さいごに
以上が、小学校中・高学年で留学開始した際のメリット・デメリットである。最大のデメリットである「大変」という所に親は身構えがちだが、英語ゼロでも入れるインターには必ずサポートプログラムが付いている。そのプログラムはいずれみんなレベルアップできるように設計されているので、3年以上の滞在時期が確保されているのであれば、この点についてはそんなに心配する必要はない。
私自身も幼少期から海外で住んでいたため、なんとなく「子供も幼いうちから!」と思っていたのだが、習得効率を考えたり、日本人であるという部分を育ててから海外へ、と思うのであれば、むしろこの中学年の時期がベストなのかもしれない。
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