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[003]タナロット
その日、みさきは祖父の海斗と一緒に地元の市場で買い物をしていた。市場ではいつものルートでいつもの店に寄り、いつもの食料を買いこむ。
バリに移住して2年がたつ。5歳になったみさきは、文字が読めるようになっていた。そうすると、店員さんの名札にある共通点に気がつく。
「ワヤン」という名前が書かれた名札を次々と見つけるたび、みさきは驚いた。
「ねえ、おじいちゃん、ここにいるワヤンさん、みんな同じ名前なの?
[002]みさきとワヤン
「おじいちゃん、ここが新しいおうち?」
みさきは大きな声で祖父に尋ねた。新しい家は、伝統的なバリニーズスタイルで、天然素材の屋根や、木製の彫刻が誇らしげに飾ってあった。少し古くなっているが、手入れがしっかりとされている様子だ。庭からは青い海と白い砂浜まで数歩の距離だった。
「そうだよ、みさき。ここで新しい生活が始まるんだ」
と祖父が優しく答えた。
数日後、すっかり片付けも済んだ新しい家の庭で、
[001] みさきのはじまり
「みさき、海を見てごらん。すべての生命はここから始まるんだよ」と海斗はいつも言っていた。幼いみさきは祖父が言うすべての言葉に感動し、いつもワクワクしながら聞いていた。海岸での朝の散歩は最高の冒険で、海辺で拾った貝殻を集めるのが日課だった。みさきは、それぞれの貝殻に名前をつけ、祖父にその物語を聞かせるのが楽しみだった。
「ねぇおじいちゃん、この貝殻、どこから来たのかな?」
「それはね、遠い南の海か