猫が与えてくれたもの
小さな何もない町に飽き、近くに住む義家族ともうまくいかなくなり、首都への引越しを決めた直後にコロナで外出禁止令。
引越し計画は消えた。
その後、コロナで2020年3月から私も夫も完全在宅勤務になった。
1LDKで2人在宅勤務は息がつまることが多々あり、8月に私は1週間家出をした。
毎日イライラしていた。
そんな時、9月に天使がやってきた。
私の意識は100%フリスコへ。
11月に夫が解雇。
アメリカのIT企業は容赦なく人員削減していく。
夫はひどく落ち込んでいたが、せっかくだから大好きなマラソンを楽しんでしばらくゆっくりしたらいいと思った。
私が仕事をしている時間は夫は実家で過ごすことに決定。
私はようやく自分のスペースと時間を確保できるようになり、解放された気分だった。
しかし、この町での生活は相変わらず退屈だった。
夫は約1年後に再就職し、私たちは首都へ引越し。
首都ブラチスラバはサイクリングロードが整備されていて、隣国のハンガリー、オーストリアまでつながっている。
週末は多くのサイクリストで賑わう。
せっかくなので、私もロードバイクを始めてみたら、虜になった。
2023年6月、今度は私が解雇。
IT企業は容赦ない。無職を楽しみ、ますますロードバイクにのめり込む。
2023年9月、フリスコは突然虹の橋を渡った。
我が家に来てぴったり3年だった。
振り返ると、フリスコは夫婦関係、夫の仕事、私の仕事、人間関係をキレイにしてくれたように思う。
そして私に趣味を与え、フリスコがいなくなっても絶望せずに前を向けるように道を作ってくれたように思う。
フリスコは立派に任務を完了したので、もう去らないといけなかったのだろう。
我が家の子に偶然なっただけなのに、フリスコから与えられたモノが多すぎて、私は一体フリスコに何をしてあげられたのか考えない日はない。
2024年、現在いまだ私は無職だ。
春の空気、春の陽を感じ、聞こえてくる鳥のさえずりを楽しみ、太陽の光が反射するドナウ川と古城を見渡しながらロードバイクに乗っていると、あんなに退屈だったスロバキアが今では魅力的に思う。
フリスコありがとう。と胸に想いながら今日もロードバイクで走る。