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散歩が好きな猫
5階建てのマンションの5階に住んでいたのだが、同じフロアには3世帯のみでみんなフリスコのことを知っていた。
私たちとの生活に慣れてきた頃、極度の怖がりなフリスコに少し外の世界を見せたくて、玄関のドアを開けてみた。
玄関から外を不思議そうに見るだけで、外に出る気配は一向になかったが毎日続けた。
ドアを開けるように催促するようになったので、興味はあるのだろうが出る気配はない。
1ヶ月ほど経った頃、玄関からゆっくり一歩出た。
尻尾は下がり、腰を低くし1メートル程歩き急いで家に戻る。
これを毎日何度も繰り返した。
数週間後には、エレベーターのある場所まで5メートルくらいだろうかスタスタ歩くようになった。
しかし、怖いので私の足にぴったりくっつき、私の顔をチラチラ見ながら歩いた。
まるで訓練を受けた犬のようだった。
しばらくして慣れてきた頃、そこから階段を下りることができたら、上下運動ができて良いのではと思い、階段を一緒に下りる練習を始めた。
なかなか一歩がでなかった。
階段の前で足踏みをするフリスコを見て、下に行きたい気持ちはあるけど、恐怖が勝るのだろう。
私が階段を下りようとフリスコに促していたが、他人に促されてやるよりも自分で納得して自分の意思で決めた一歩の方が自信につながるのではないかと気持ちを改め、私はフリスコの隣にただ座って待つだけにした。
それからまたしばらくして、初めて一歩が出た。
その後は一気に下の踊り場まで駆け下りた。
私はその姿に大感動した。
フリスコはとても嬉しそうにすごい速さで私が待つ5階まで駆け戻ってきた。
目が輝いていた。
ある日、少し目を離した隙にフリスコが1人で4階まで行き散策を楽しんでいた。
その日から、1人で行ってはいけないことを教えようと、「よし」と私が言ったら階段を降りる練習と呼び戻しの練習も始め、見事にフリスコは合格した。
猫の学習能力の高さに驚かされてばかりだった。
「よし」のかけ声で一緒に4階から5階まで階段を駆け上る競走がフリスコは大好きだった。
私は負けず嫌いなので、ランニング用のスニーカーを購入したが、フリスコには惨敗だった。
運動不足の中年女にはお尻の筋肉痛がきつかった。
お隣さんやチワワちゃんたちに会っても、怖がることはなくなった。
玄関先のお散歩は毎日朝昼晩3回の日課になり、私はフロアをモップでキレイに磨き上げる日課が追加された。