〝今、ここ〟でしか見られぬ景色を見てきた。~UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川2020レポート②~
下郷駅を出発し、次は抜里駅に到着。
毎年訪れても感動するのが、電車の中からすでに見えていた
一面の茶畑。
この日は天気も良く、青い空と、茶畑の緑が本当に清々しく気持ちよかった。
一面の、と書いてしまったけれど、
茶畑を1つ1つじっくり観察するのもおもしろい♪
茶畑の形は決して同じではなく、おそらく持ち主が異なるのだろう、区画ごとに様々。
角ばっていたり、丸っこかったり。
土地の形に合わせてくねっていたり。
道に落ちる影もなんだか愉快。
ヒデミニシダさんの作品『境界のあそび場/うかぶ縁側』は、そんなロケーションを最大限に活かした作品と言えると思う。
まさに、お茶畑の中に設置された少し高さのある縁側。
そこに座り、絶景の茶畑を眺める。
シンプルな行為だけれど、思えばこんな風に茶畑を眺めたことってないな。
縁側は円形だから、どこに座ってどっちを向くかで楽しめる景色が少しずつ変わるのも、何度も楽しめる贅沢さのある作品。
そして、この縁側を少し離れたところから引きで見るのも良い。
まさにお茶畑に浮かぶ縁側の様、そこで楽しむ人たちの姿は、この場所にある茶畑という日常風景に、非日常が出現した形で、
それ自体が、芸術祭期間中の醍醐味であり、その一連全てが作品なんだなと思った。
そして抜里は、どうやら不思議な生き物と出会える場所でもあったらしい。
まず駅舎には、白くぽってりとした愛らしい子。
お行儀良く座布団に座っているこの子は、さとうりささんによる『地蔵前3(サトゴシガン)』
UNMANNEDには3回目の登場のキャラクター(と言っていいのか?)だけど、今年は芸術祭前に、いろいろなところへ〝サトゴ〟に出ていたらしい。
それぞれの場所で撮影した写真も駅舎に飾られていたけれど、どれも本当に良い写真。
訪れた先々での人情や温もりなども感じられる作品だ。
そして、抜里の茶畑に突如として現れたのは、江頭誠さんの作品のトレードマークである花柄の毛布でできた衣装をまとった〝妖精〟たち。
その正体は、地元のオジサマたちなのだけれど、
もふもふした姿はとても可愛く、
でもそれを照れることなく、
かと言ってカッコつけすぎることもなく着こなし、
ためらいもなく茶畑を歩き、ポーズをとって写真撮影する姿がなんだかとても素敵だった。
今この時、浮ついている世の中と同じ時空にいると思えないような、とてつもない安心感を味わえた光景だった。
静かにじんわりと心が温まるのを感じた。
その後も、妖精たちは茶畑を闊歩し、
その姿を収めようとギャラリーが従う様を見ていると、
まさに妖精、〝異形のものたち〟に思えて、
本当に神様が人間の姿を借りて現れたんじゃないかと思えるくらいだった(笑)
これを、うかぶ縁側から眺めたら最高に面白かったんじゃないかなと、次なる目的地・福用へ向かう電車を待ちながら、ちょっと悔しかった。
(福用エリアへ続く・・・)
『UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川』は絶賛開催中。会期は明後日22日まで!http://unmanned.jp/