桜の下
満開の桜の下に、高崎さんはいた。
「高崎さん」
「園田さん」
「こんにちは。お花見ですか?」
「待ってるの」
高崎さんはふんわりと笑いながらこっちを見た。笑った。あの高崎さんが。
「会社と、なんか、違いますね」
「ここ、会社じゃないから」
それはそうだけど。
高崎さんはうちの会社じゃ有名だ。美人だから。そして怖いから。
どこかの保育園から子供たちが運ばれてきた。
「毎年あの園はこの時期お花見にくるの」
「おおきくなったわね」
鎖骨まである髪を耳にかけながら、高崎さんは言う。毎年、ここに来てるんだろうか、ひとりで。