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【この本を読んで考えた】残穢

Twitterでフォロワーさんが怖いと言っておられたので興味を持ち読んでみた。

確かに怖かった。
自分も怪談好きなので、怖い話はそれなりに見聞きしてきたが、この小説の怖さはその「起こった出来事」に留まるのみならず、今後の怪談との付き合い方に影響を及ぼしかねないというところだ。

今までは、たとえば廃墟に行って怖い目に遭った話を聞いたら「そんな所に面白半分に行くからだ」

人を殺して化けて出られたら「自分の欲のために人の生命を奪ったのだから当然の報い」

などと、怖いながらもそれはあくまでも対岸の火事であり、廃墟に行くこともなく、殺人を犯すこともなければ、自分の身に降り掛かるものではないと離れたところから見ていられた。

それがこの小説によってそういう自分の中の常識が覆されるとすれば、もう本の中のお話では済まなくなり、今まで見聞きしてきた怪談の数々が、もはや他人事ではなく、自分にぐっと迫ってくる。

真夜中に姿見と戸を開けたままの押し入れを背に読んでいたが、話の終わり近くになるとそっと向きを変えて箪笥に背中をくっつけて読み出した私。

背にしていた押し入れの天袋には、70年近く前のお椀のセットがしまってあり、おそらく発注したのは曽祖父だと思うが、これを作ったり塗ったり、木箱に文字を書いたりと関わった人は年齢から考えれば既に鬼籍に入っておられる確率が高いと思われるし、何かの席に招待され、お膳でこのお椀のお汁を飲んだ人達も、その時に大人だとしたら多分この世にはもう居られないのだろうなと。

一度はそれに触れた顔も知らない人達の一人一人に人生があって、それがどういうものだったのか想像もつかないけれど、思念の破片とかをお椀が留めておいて、70年近く経った今伝えてくるとか無い……よね?など。

真夜中に読んでたら、そんなことまで考えさせてくるような、そんなお話。

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