知財×英語のお得感は半端ない
さて、今年私は、業務で英語を使う機会の増えた年でしたので、「知財業界で語学を活用すること」をテーマに投稿します。
知財業界における語学の活用機会
企業に所属するか、事務所に所属するか等、組織によって度合いは様々ですが、いずれにしても「知財は語学活用の機会が多い業界である」といったときに反対意見は多くないと思います。
一番多いのは、やっぱり出願権利化関連の業務におけるメール等のやりとり、英文等書類の理解でしょう(英語スキルではリーディングとライティング)。一方、立場によっては、現地代理人と直接またはオンラインで話す機会のある方もおられます(リスニングとスピーキング)。
組織内の個人が、どこまで語学スキルを活かせる環境か、どれくらいネイティブチェックされるか等は、組織にとって幅があります。でも少なくとも、英文明細書を読まざるを得ない状況におかれること等は多くの人が経験するでしょうし、全く英語に触れずに知財業務を進められるという立場は、あまりないのが現状だと思います。
将来に向けても、語学活用のチャンスが増えること、幅が広がることはあっても、減っていくことはまずないと思います。
今後も知財全体の外国出願比率は一定以上あるでしょうし、外国に関するビジネスがあるならば、それに関連した対応もせざるを得ないので。
このように、知財は語学スキルを活用できるチャンスが多い業界で、この状況は将来的にも続いていく見込みだと思います。
知的財産法だからこそのお得さ
ところで、語学が堪能でもそれだけでは意味がなくて、「何を」伝えるかが大事、という話がよく言われており、オンライン英会話などで話の弾まない先生と会話したときなんか、ほんとそうだなーと思います。
私は最近特に、英語を使う機会が増えているのですが、そういう観点でいえば「知財×英語」って、めちゃくちゃお得だなー、とヒシヒシと感じています。今日は、そのお得感を絶賛売り出してみたいと思います!
なぜお得だと思うかというと、知的財産法(特に特許)は、各国で共通している部分がとても多いからです。(これが憲法や民法みたいなものだと、多分そうはいかないと思います。)
例えば、日本の特許法について、出願して、審査請求して、審査されて、拒絶理由がなければ登録される、といった基本的な流れを理解していれば、
米国のパテントアトーニーと話すときに、「そっか、米国は審査請求という制度が無いのですね」という、日本とは違う部分に着目すれば会話はとても進めやすいです。
そうしたら逆に、「日本はね、期限の徒過にとても厳格で、今年の4月に要件緩和される前までは、審査請求を徒過した場合、コロナ以外の理由では何をしても生き残るのが難しかったんですよ。(なので審査請求期限の指示は厳密にお願いしますよ。)」のように、日本特有のことで打ち返したら会話がつながっていきます。
このように、「日本の知財制度」という一つの知識基板をもっていれば、少しずつ違う外国の制度を比べて、いくらでも話したいネタを生産できます。これは、とても大きなメリットだと思うのです。
実際に各国の代理人と交流すると思うこと
各国の現地代理人と話してみると思うことは、「みんなとても優しい」ということです。
知財だけなのか、他の業界もそうなのか分からないのですが、例えば、英語ネイティブや欧州の代理人の方が来日される際は、ゆっくり分かりやすい話し方をしてくださることが多い印象があります。(日本に来日される時点で、元々日本に好意的な方が選ばれる、という要因もあるかもしれません。)
また、大抵はパテントアトーニーの肩書きの方が多いこともあり、みなさん紳士・淑女であり、会話の中で嫌な思いをするとか、回答に困る質問をされる、といった経験はほとんどないと思います。(ビジネスだからということもあるかもしれません。また、大事な交渉の場面等になると、少し色々あるかもしれません・・・。)
なので、英語がちょっぴり苦手でも、彼ら彼女らの胸を借りて話してみるのには、安心して飛び込みやすい素晴らしい環境だと思います。
覚えておきたい日本のこと
さて、じゃあ勇気を出して外国のパテントアトーニーと話してみよう! 初めてそういう機会に恵まれた! とします。
そんなときのために、覚えていると役に立つかもしれない、そんなプチ情報としては、「数字」です。
「日本の今の特許出願件数は何件ですか(増えてるか、減っているか)」
「特許査定率はどうですか」
「無効審判や異議申立は、年間何件ずつくらいありますか」
このあたりの基本的な数字と傾向は、知っておくと話のネタに使いやすいと思います。(私は最初の頃、こういう統計を即座に言えず、その点を上司からもご指摘いただいて、必死で調べて覚え直した記憶があります・・・。)
一度知っておけば、あとは推移をたまに確認するだけで大した手間もないので、とてもおすすめです。
一生懸命話してみることの大切さ
さて、最後に
「そうはいっても、私は英語が話せません」
という方に向けて、メッセージをお送りして終わりたいと思います。
日本人の方で、英語が話せないという方の多くが、英語の基本的なスキルを持っている方だと私は思います。つまり、話した経験が少ないだけ。
そういう方は、オンライン英会話などで話す機会を多くしてみると、けっこう短期間で「とにかく英語で話してみる」ということに慣れると思います。(つまり、基礎的スキルがあれば、話すスキルは一気に上げやすいです。)
また、「不完全な英語を話すことが恥ずかしい」というご本人も気づきにくい意識があると思います。
そういう時は、実際に英語を話している日本人をよくよく観察してみると良いと思います。
「仕事で英語を話している」からといって、すべての日本人が完ぺきな発音な訳でも、文法が素晴らしい訳でも、難解な単語を知っている訳でもないと思います。
私もそうですが、大半の英語を話している方は「勇気を出して英語で話している」だけだと思います。(英語が話せない、とおっしゃっている方々との差は、さして大きくないと思います。)
私は今年、初めて海外出張に行きましたが、その時にも改めて強く感じたことは
「とにかく英語で一生懸命話していれば、相手も一生懸命聞いてくださる」ということです。
(私のスピーキングのスキルも、まだまだなのですが、とりあえず一生懸命話すことや、事前になるべく準備していくこと等でフォローできる部分も多いと感じています。)
できないという気持ちで蓋をするのではなく、
「とにかく一生懸命話してみる」ところから始めてみませんか?
様々な国の方と、直接、自分で話ができるということは貴重で、
一人では気がつけなかった視点、考え方、制度を知るきっかけになります。とても良い体験ができます。
ぜひ、皆様の語学活用機会が広がりますことを、祈念しております。