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ある日突然魚が食べられなくなった話

27歳エディター。朝ごはんを食べながら昼ごはんのことを考えるくらい食事が大好き。日本各地の食文化を紹介するメディアの編集もやっています。世界各国のグルメを食べ尽くしたい。炭水化物、肉と同じくらい魚が大好きなわたしが、突然今後一生魚介類を食べられなくなりました。
生魚はもちろん、焼き魚も、加工品も、魚介由来の出汁も。食べちゃダメ、と言われた途端、猛烈にかつおだしの味噌汁が飲みたくなっています。人間って不思議。

ですがこの話は全くネガティブなものではありません。魚好きなら誰でも起こりうることなはずなのに、あまりにネット上に情報がなく、一緒にご飯を食べる友人、仲間たちに知ってもらいたい! の気持ちだけで書いています。
少し長いですが、体験記として読んでいただけたら幸いです。

念願だった京都の鯖寿司

ことの始まりは4月上旬。出張で滋賀へ、そのまま京都旅行という流れでした。

滋賀の取材先で人生初の鮒寿司、湖魚の佃煮や天ぷらなど郷土料理をもりもり食べ、かなりヘロヘロの状態で京都in。
胃腸が丈夫で、ちょっとのことではやられないと自負しているわたしが、この日はなんだか胃の調子が悪く、疲れと慣れない食べ物のせいか〜と思って早めに就寝しました。

人生初の鮒寿司と湖魚の佃煮。初体験。

たっぷり寝て回復して、次の日は京都観光! パンを大量に買い込み(無類のパン好きなので)、わらび餅を食べ、大本命の鯖寿司を食べに地元の老舗へ。
肉厚の大きなサバと酢の味を感じるシャリ。食べきれなかったら持って帰れるらしいのですが、一瞬でぺろりの美味しさでした。今でも味を思い出しちゃう。忘れられない。鯖好きなら一度は食べてほしいお店です。

が、帰り道、胃がムカムカ、直立できないくらいの胃痛が。しかし次の日は仕事。遊んだ次の日に仕事を休むなんてさすがに心が痛む。気合いで帰宅します。
帰宅後はさっきまでの胃痛が嘘みたいにスカッと、家で踊ったり歌ったりするほど余裕、だったのですが寝られないほどの胃痛に襲われます。
もう大体お察しですが、やられました。アニサキスです。


アニサキスにやられ、人生初の救急車

いろんな事例を調べながらほぼアニサキスにあたったと確信します。どうにかして病院に行きたい、でも動けない、の葛藤を繰り返し寝付けないまま朝を迎えました。
一人暮らしは孤独。歩いて病院に行くのはほぼ不可能そう。救急車を呼ぶべきか、でも若者が救急車を呼んでいいのか。玄関まで数歩で辿り着けるほどの狭いワンルームであることに感謝しながら、人生で初めて、自分で自分のために救急車を呼びました。

直近で食べたものを説明するために滋賀の郷土料理と鯖寿司を見せると、ああ、と納得した救急隊の人。仕事でこういうところ行けるの楽しいですね〜と気を紛らわすために話してくれるけどそれどころじゃないわたし。幸いにもすぐに受け入れ先が見つかりました。感謝。

人生初の全身麻酔と内視鏡で発見されたアニサキスをとってもらい、目覚めるとなんという爽快感。あんな小さい虫がいるかいないかだけでこんなにも変わるんだ! 健康に感謝! 世界平和! の気持ちで帰宅しました。
調べてみると湖魚にはほとんどアニサキスはいないらしく、鯖寿司で出会った説が濃厚みたいです。鮒の刺身(ジョキ)の方が不慣れで食あたりしそうだけど!
わたしが行った京都の鯖寿司のお店は、寡黙なおじいさんとフレンドリーなおばあさんがやっている、地元に愛されているんだろうなあと感じる老舗。アニサキスにあたってしまったのは多分連日の疲れで免疫が落ちてたからだと思うので、京都に行く予定の元気な鯖好きはぜひ訪れてほしいところです……。

ちなみに全身麻酔ってすごくて、まだ効いてなさそうです〜って話した次の瞬間にはアニサキスがピックアップされていました。一瞬で寝落ちてたし、そのあと1日中寝てた。医療ってすごいな。

解決しない謎の蕁麻疹

それからすぐに胃腸も治ち、今まで通り好きなものを好きなように食べて過ごしていたある日。
居酒屋で飲んでいると突然腕に蕁麻疹があらわれました。猛烈にかゆくなって、見た目は蛾や毛虫に刺されてかぶれたような感じ。
毎年夏に蚊に刺されるとものすごく腫れるタイプなので、変な虫に刺されたのかなあ、くらいに思っていたのですが、蕁麻疹はどんどん広がり、かゆみもひどくなっていきます。
新卒のころ、ストレスでよく蕁麻疹が出ていたのですが、大体が2,3日で治っていました。食べ物? 居酒屋で食べたイレギュラーなものは牡蠣とホタルイカだけど、どちらも加熱済み。最近かなりストレスフリーだし、内臓系だったらどうしよう。肝臓? 飲みすぎ? 最悪の事態まで連想しながら調べるとどんどん不安になっていきます。
そんなことよりとにかくかゆくて我慢できない! と休日でもやっている初めての皮膚科にかかりました。

皮膚科では、マイコプラズマのウイルスの可能性があるかも、との診断。まあたしかに少し前に咳続いてたし。血液検査を受け、ひとまず抗生物質と処方されたアレルギーの薬や塗り薬で対応していくことになりましたが、薬を飲み切っても治るどころか蕁麻疹はどんどん広がります。血液検査の結果が出るまでは2週間以上。しかしとにかくかゆくて耐えきれないので、かかりつけの皮膚科も受診。結局ここでも原因はわからず、薬を変えて様子を見ることになりました。

最初に蕁麻疹が出てから2週間、治るどころか広がっていくばかりでとにかくかゆい。痛みは薬である程度緩和できるけど、塗り薬でおさえられるかゆみの限界があることを知ります。なんでもいいから早くかゆみをとめたい。早く楽になりたい……。

そして2週間後、血液検査の結果はどの数値も異常なし。しいて言えば中性脂肪の値が低かった。やったね。
じゃあこの謎の蕁麻疹はなんなんだ? 症状は改善せず、かゆみの範囲も広がる。毎日帰宅するとかゆいな〜と1時間ほどぼーっと動けない日が続きます。アレルギーがなかったので食事も気にせず、お酒も飲んでいましたが、体温が上がるとかゆくなるし落ち込みはしないけど、プチストレス。これまでの当たり前の健康に感謝しつつ、早く楽になりたい(かゆみを止めたい)の一心でした。なんでもしますから痒みから解放してくれえ〜。

原因がわからないので、ここでついに大きい病院の紹介状をもらいました。

この期間にはこういうおばんざいとか
こういうものを普通に食べていました。お酒を少し抑えるくらい


実はまだ続いていたアニサキス!

紹介状を書いてもらった大きい病院は、わたしが救急車で運ばれたところ。アニサキスにあたってから体質が変わったのかもしれない、というなんとなくの気持ちがあったのと、直近で診察歴のある病院がいいと思ったからです。

「これアニサキスかもしれないね〜」

ここでアニサキスアレルギーというものがあることを知ります。検査項目にアニサキスを入れて再度血液検査をしてもらいました。また薬を変えて結果を待つことに。

「ひとまず魚系は食べないようにしてね。もしアニサキスアレルギーだったら魚は生でも焼きでもNG。あ、でもマグロとかカツオならいいかも。出汁までは気にしなくていいんじゃない?」

ここからは調べたベースの話になりますが、よくいう”アニサキスに当たった”というのは「アニサキス症」のことで、あのニョロニョロした虫を体内に入れた時に反応するもの。つまり体内に入れないように気をつけて魚を食べていれば大丈夫な話です。
「アニサキスアレルギー」とは、アニサキスの持つタンパク質や物質に反応してしまうもので、生きているアニサキスはもちろん、死骸もダメ(加熱して死んでいても取り込んだらアウト。だから焼いても煮てもNG)、アニサキスの死骸が混ざっている可能性のある餌を食べる魚もダメ。
つまりどこにアニサキスの成分があるかわからないから、海にいる生き物は避けるしか抑える手段がないようです。

ひたすら検索しますが、とにかく情報が少ない。情報が少なすぎて協会を立ち上げた方がいらっしゃり、このかたの記事をたくさん読みました。世界仰天ニュースでも取り上げられていましたが、わたしが出た症状は蕁麻疹だけ。アナフィラキシーにもなっていない。
アニサキスアレルギーかも、の気持ちと、でもそこまで症状ないしねえ、の気持ちで揺れます。
ここまできても落ち込むとかはなかったです。

なんかよくわからないけど食生活が結構大変そう。
マグロもカツオもダメじゃん! 出汁もカツオやいりこなどの魚由来のものは食べない方がいいって書いてある! 焼きサバもサーモンもダメなのかあ。食べられないと思った途端恋しくなる魚たち。
そういえばアニサキスを研究しているお寿司屋さんを取材したことあったなあ。まあ肉もパンも食べられるし、ハンバーガー、ピザ、あれ意外とわたしの嗜好的に大丈夫じゃない?

しかし気づいてしまいました。アンチョビのピザとナンプラーが食べられなくなるのです。この2つが結構悲しい。

正直、そこまで和食好きというわけではなく、米や味噌汁を食べない日があってもいいけど、パンを1日食べないと恋しくなる。海外旅行に行っても日本食を求めることはほぼないタイプなので、出汁にそこまで執着していないから大丈夫そうと思っていましたが、エスニックやイタリアンにも魚はいました。そうだよね。ああアンチョビ。最後に食べておけばよかった。

ついに判明してしまった「アニサキスアレルギー」

そうして1週間後、血液検査の結果、正式に「アニサキスアレルギー」が判明しました。
というわけで、本日からわたしは魚介類全般はどの調理法でもNG、カツオやいりこ、あごなど、魚由来の出汁もNG(昆布はOK)、調味料や、厳密にいうと添加物のアミノ酸なんとかもNGということに。

皮膚科の先生にもあんまり知られていないようで、実際なにがよくてなにがだめかはっきりはしていません。
自分でもどこまで食べていいのか正直わからないのと、このかゆみ地獄があまりに大変なので、一旦魚に関するものは全部除去してみようと思います。
食べられるものをわかりやすくいうと、肉+ヴィーガンフードです。

ここからは自己判断なので、もし同じアレルギーの方がいても参考程度にしてください。

焼肉も焼き鳥もOK、イタリアンも魚介を避けたものならOKだし、エスニックはナンプラーを避けたらひとまず大丈夫。メキシカンはもちろんOKで、定食屋では味噌汁は避けておくけど肉のおかずなら平気。あとは精進料理とか? 意外と食べられるもの多くないですか?

あとは基本自炊が良さそうですね。またわたしの料理の腕が上がってしまいます! 自炊生活ならダイエットにも節約にもなるし、いいことしかない! ホームパーティーとかしたいね。

そんな感じです。お友達のみなさま、積極的に焼肉に行きましょう。タン塩たくさん食べます。夏はバーベキューもしたいです。焼いたお肉大歓迎。

ちょっと規模の大きい話になってしまいますが、わたしは人生で起こること全てに意味があって(宗教とかじゃないです)、最後にはなんとかなる、いいことしかないと考えている民なので、今回も案外辛くない話なのです。
泣ける〜とか言っても全然泣いてないし、もう外食できない、周りに申し訳ないし、とかも全然思ってない。
むしろ「アニサキスアレルギー」なんて知名度なさすぎて、みんな気になるでしょ? わたしもわからないことだらけだけど、いろいろ情報を仕入れて記録していけたらと思うので、どうかコンテンツとして見守ってください!

正式にアニサキスアレルギーが発表された本日から、スーパーやデパ地下で、これは食べられる、食べられないをチェックしていたのですが、食品成分表に大感謝していました。たまに成分表のミスの話を聞きますが、命取りになる可能性があると思うと、このラベルの重要性をひしひしと感じる。
仕事で飲食店の広報もしていますが、アレルギー問題って日々真剣に向き合わなければいけないところだなあと改めて考えました。
自分が当事者になって初めて感じることや、改めて考えることってあるねえ。経験と体験が大事。

人生最期の日を教えてもらえるなら、最後の晩餐に食べたいものは富山の氷見ぶりに決めました。そんなわけで、これからいろいろ学びながら食事を楽しんでいきます!

最後に、ここ最近の美味しかった海鮮グルメ置いておきますね。


焼きサバがのったポテトサラダ
焼きサバご飯。いくらもいるううう
なんか美味しかった炙りのお刺身

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