大人になったと感じたゴールデンウィーク
柏駅から特急ときわ45号に乗車し、水戸駅へ向かう道中。
「お客様にお知らせいたします。人身事故の影響により、当駅ひたち野うしく駅にて一時停止いたします。運転再開見込みは40分後となります。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」
電車が止まった。
私たちは柏駅から、特急列車に乗るか、JR常磐線に乗るか、議論を重ねて特急列車を選択した。
論点は、時間を取るか、お金を取るか。
特急列車を選択すれば、到着時間が1時間早まるが、特急券が1,020円かかる。
常磐線を選択すれば、特急券分の1,020円が浮くが、到着時間が1時間遅くなる。
また、特急列車を選択すれば、新幹線乗車さながらの快適な移動時間を過ごすことができる。
常磐線を選択すれば、座れない可能性がある。
良い大人なんだから、1,020円くらいさっさと払おうよ。と思われそうであるが、20代の頃、私の旅のモットーは
宿は安く、交通費も安く、観光地は回れるだけ回る。だった。
昔の私であれば、常磐線(安くなる選択肢)の旅を即断即決したはずだ。
即決できない私は、大人になってしまった。
お金で物事を解決する大人になりたくなかった20代の私。
移動時間が長ければ長いほど、「旅通(たびつう)」と名乗れると思い込んでいた私。
20代の私は、旅行自体を楽しむより
旅を”お得”にこなすことへ全身全霊を注いでいたと今になって思う。
今回の旅では、特急列車に乗車すること(時間を取る選択肢)を選んだ。
しかし、電車遅延が発生し、到着が予定時刻より遅くなることが確定した。
旅通を名乗りたい20代の私であれば、
観光地を回る時間が減ったことを嘆き、
お金をかけて特急を選んだことを悔やんでいただろう。
大人になった30代の私は、
特急列車で快適な待ち時間を過ごせたことに喜びを感じていた。
そして、旅を楽しんだ後の私たちは行きとは逆方向の
水戸駅から常磐線の上野行の電車に乗り、帰路に就いた。
水戸駅から最終目的地までの乗車時間は約2時間。
大人になった私は、即決でグリーン車を選択した。
正確には、再び議論を重ねた上での選択であったが、
私の気持ちは「お金を払って、グリーン車に乗りたい」の一択だった。
顔に出ていたと思う。
快適な移動時間を知ってしまった30代の私にとって、
「旅通(たびつう)」と名乗りたい拘りなんてどうでもいい。
お金で解決して、快適な旅をしたいのだ。
大人になったと感じたゴールデンウィークが、幕を閉じる。